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第十三部

悪霊の意思?

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その夜、向井達は冥王の部屋で、

複雑な表情で話をしていた。

「それでいくと、

安達君と近い悪霊が生まれてることになるね」

究鬼が驚いた顔で口を開いた。

「安達君の場合は魂なので人ですが、

悪霊の場合はあくまでも霊なので、

それが重なり合って、

意思と呼べるかは分かりませんが、

ある一定の感情で動くとなると厄介ですよ」

ニットンも眉間にシワを寄せた。

「AIと似てますね。

人工知能も専門家は意志ではないと言いますが、

それに近い感情を読み取って、

情報を処理しています。

その悪霊も同じタイプであれば、

早いうちに除去しないと、

まずい事になるかもしれません。

牧野君が疲れてるくらいですから、

体力もかなり消耗する相手と戦うことになります」

向井の話に、倉田と岸本も深いため息をついた。

「この所うちの方でも、

悪霊に手こずることが多くなっていて、

今の話を聞くと納得できました」

カランも唇を軽くかむと言った。

「俺が一番恐れているのは、

その霊が人に取り憑くことです。

もちろん除霊することは簡単ですけど、

数が増えれば難しくなります」

「そうですね………」

冥王も腕を組んで上を向くと目を閉じた。

「とりあえず、

その厄介な悪霊が発生している箇所を、

徹底的に叩きましょう。

病巣を取り除かないことには、

倉田君達、除去課の体力だけが消耗しちゃいます」

冥王が言った。

「だったら危険な箇所には、

坂下さんには可哀想ですけど、

俺と一緒に移動して片付けていきます。

エハさんとヴァン君は式神持ちなので、

西と北にそれぞれ移動してもらって………」

向井はそこで少し考え込むと、

冥王を見た。

「仙境から仙木を少しいただけませんか? 」

「それはかまいませんよ」

「だったらそれを、

除去札の代わりに倉田さん達には使用してもらいます。

私が使ったのをお二人は見ましたよね」

向井が彼らの顔を見た。

「あぁ、この前見たけど、少し大きさがあるのと、

紙と違うからうまく使いこなせるか………」

倉田が心配そうに言った。

「大丈夫ですよ。冥王には朱で梵字を入れてもらいます。

これが今の段階では一番効果があると思います。

俺も九尾を使う時に、この仙木があるのとないのでは、

力の放出も断然違うんです。

この前、全身に炎が現れたでしょ。

あれがその力の違いなんです」

「なるほど。だったらちまちま除去札使うより、

大物を捕縛できるかもしれないな」

岸本も頷いた。

「では、明日からすぐに動いてください」

冥王がいい、彼らはそれぞれ部屋を出て行った。

最後まで残っていたニットンが、

向井と冥王を見ると言った。

「考えたら安達君は、

そんな魂を体に抱えてるわけだから、

発作を起こしても仕方がないのかもしれませんね。

人の器には大きすぎますから」

「そうですね」

向井はそういいながら辛そうな冥王を見て、

「でもまぁ、物は考えようです。

どんな状態であろうと、

本人が今を楽しんでいるわけですからね。

ただ、安達君のような人が現れないように、

明日から頑張りましょう」

とニットンに言った。

「安達君は新しいお薬を頂いて、

ちょっとご機嫌なんですよ」

「そうなの? 」

「今度のは甘いそうです」

「あははは。確かに苦いお薬は嫌だからね」

ニットンも笑うと向井と一緒に部屋を出た。

背後では冥王が静かに頭を下げる姿があった。
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