『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十二部

新人の一ヶ月目

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冥界にきて半月も経つと、

生活リズムも大分慣れてきたが、

慣れないのが………

「坂下行くぞ~! 今日も中央に殴り込みだ! 」

牧野が休憩室に来ると、

楽しそうに言った。

「今日も元気だね」

坂下はソファーに寄りかかったまま、

牧野を見上げた。

「坂下凄ぇよ。中央担当で助かった~

西とか北に移動になったら、

俺が辛い」

「牧野君さ~

倉田さんと岸本さんの所に行くの嫌なんだって? 」

「別に嫌じゃないよ。でもあそこの悪霊の毒って、

ここより超、超、超~~~~~~猛毒でしょ。

俺のこの弱い体には耐えられないのよ」

牧野が偉そうに言った。

「向井さん達も大変だ。ここまでお子様だと」

坂下が笑った。

「なんだよ」

むくれる牧野に、

「いいのいいの。牧野君はそのままで。

かわりに僕が頑張っちゃうから」

坂下がそういって起き上がると、

ディッセとエナトがやってきた。

「今日は向井さんいないから、俺達が同行するよ」

「えっ? 」

牧野と坂下が同時にディッセを見た。

「ちょっと、牧野君だけならまだしも、

坂下さんまで酷いよ」

ディッセが坂下を見た。

「ごめんなさい。ただ、エナトさんはともかく、

ディッセさんは除去苦手でしょ? 」

「そうだよ。向井は?」

牧野が膨れてディッセを見ると、

「今日は天上界に大事なお話で出かけてるんだよ。

四天王に御用だから、

毘沙門天のお気に入りの向井さんがいれば、

話もまとめやすいでしょう」

エナトが笑いながら説明した。

「あの親父め。何かと向井をこき使いやがって」

「親父って、冥王でしょ? 」

坂下があきれ顔で牧野を見た。

「それにね、他の神様も向井さんに会いたいんだって。

牧野君もお行儀が良ければ、

天上界に連れて行ってもらえるのに。

なんせこれだからね~

みんながみんな、毘沙門天と同じじゃないから」

エナトが牧野をちらりと見ると笑った。

「なんだよ。皆して~俺だって、じいちゃん先生に、

礼儀作法は習ってんだよ」

「これで? 」

坂下が立ち上がって牧野を見る。

「草葉の陰で泣いてるね~」

ディッセも笑うと、

「俺は除去は苦手だけど、結界の腕は一流だよ~」

と腕組して誇らしげに言った。

「………」

牧野と坂下の不審げな顔に、

「いや、本当。これは俺が保証するから」

エナトも笑うと言った。

「あれ? まだ行ってないの? 

佐久間さんと早紀ちゃんとオクトさんは、

隣町に出かけて行ったよ」

新田が休憩室に入ってくると立ち話する四人を見た。

「おっと、こんな悠長にはしてられない」

ディッセが言うと彼らは部屋を出て行った。

「坂下さん、うまくやってるみたいでよかったよ」

死神課に歩いていく彼らの後姿を見ながら、

エルフが休憩室に来た。

「俺達も知っている人の方が楽だし、

第一安達君が坂下さんに、

パン作り教わって喜んでるからね」

「それは坂下さんの体の方が心配だな~」

新田の話にエルフも笑った。

「だけど、向井さんは少し息抜きできると思うよ。

半分だけ坂下さんが引き受けてくれれば」

「そっか」

二人は顔を見合わせると笑った。
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