『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十二部

休憩室からの悲鳴

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新人を迎えに来た向井は、

桟橋で船頭と話していた。

「今日も霊の数は多いですね」

「一時減ったんだけどね。ここにきて、

自殺者や殺人も多くて、

サロンの振り分けも大変だよ」

鬼は愚痴るように言った。

通常のサロン霊とは別に、

隔離サロン、

殺人・自殺はまた別のサロンへ移動させるので、

三途の川担当の鬼も忙しいのである。

「大変ですね。そうだ、これ。

安達君が作ったお菓子なんですけど、

食べません? 」

向井はそういうと、

お菓子の籠を手渡した。

「いつも悪いね~

安達君の作るものはどれも旨いよね~

食堂でも人気なんだけど、

食べそこなっちゃうんだよ」

鬼は笑うと籠のお菓子を一つ取り出すと、

美味しそうに口に入れた。

「今、舟は四艘あるんだけど、

賽の河原行きもあるから、

霊の数に舟が追い付かないんだよ。

船頭の数も足りないから、

休み返上の時もあるしさ」

「ここもブラックですね」

「向井さん達だってそうでしょ」

二人はそういって笑った。

「そうだ。チビ達の布団、

ここに干してるそうですけど、

ニオイは大丈夫ですか? 」

「あぁ、おねしょ布団ね。

ガキのお漏らしは仕方ないよ。

向こう側に干してるから気にしなくていいよ」

鬼はケラケラと笑った。

「おっと、そろそろその新人さんの番だよ」

「そうですか? では、向こうの扉から迎えますので、

宜しくお願いします」

「はいよ」

向井は鬼に頭を下げると、奥へと歩いていった。



男性は驚いている暇もないまま、

向井に会ったあと、

訳も分からず室長と面会。

そのまま訓練所に連れて行かれ、

連日特訓。特訓。特訓。


なにこれ。

なんでこんな事させられてるの~

死んだはずなのに、

毎日死にそうな目に合ってるよ。

たまに向井さんが来て、

これからの事を話してくれたが、

全く頭に入ってこない。


そんな繰り返しの日々が過ぎ、

今、訓練が終了し、

向井が目の前に立っていた。

「大変だったでしょう。

本来ならこんな短期間の訓練は、

行われないんですけど、

焦眉の急を要するので、

無理を承知で行いました。

当分は俺の下に付くことになりますので、

分からないことは聞いてください。

このあと、

他の特例のメンバーを紹介しますので」

向井はそういうと部屋を出るように促し、

二人は広い廊下を進んだ。

彼は歩きながら質問した。

「えっと、僕は死んだんですよね。

で、ここで働くんですね」

「はい」

「ということは向井さんも死んでるんですか? 」

「はい。ここではみんな、

ゴースト人間と呼んでますけど」

「ゴースト人間? 」

「ええ。半分死人で半分人間? として生活してるので」

「まだ、頭がごちゃごちゃしてるんですけど」

彼は頭を軽く振ると向井を見た。

「俺も最初はそうでしたよ。

習うより慣れろですね」

向井は笑うと休憩室に入った。

「あっ、向井。新人は? 」

えっ? この声…………

そう思って、ゆっくり部屋の中を覗くと………

部屋中の者達が一斉に自分を見て、

「えええええええ~~~~~~~~~っ!! 」

ええええええええええ~~~~~~~っ!!

冥界中に悲鳴が響き渡った。
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