144 / 631
第四部
チビの喧嘩
しおりを挟む
「ハッピーハロウィン! 」
冥界に戻ると、
チビ達がカボチャのマントを着て、
やってきた。
「ハロウィンはまだですよ」
向井が言うと、
「めいおーもやってるよ」
チビ達がそういったところで、
冥王がマントを翻しやってきた。
「トリックオアトリート~」
そういってから、向井達の手にある袋を見て、
「それはケーキと見た」
と言った。
「ケーキ!? 」
チビ達は顔を輝かせると、
「はやくたべよう~」
と向井達を休憩室に引っ張っていった。
テーブルに箱を置くと、
寝ていた牧野や新田も起き上がった。
「世の中はすでにハロウィンですから、
お化けのカップケーキを買ってきました」
向井が言うと、
箱を開けたチビ達が、
特別なものでも見るように眺めた。
「おばけだ」
「ガイコツ? 」
「コウモリ? もいる」
「お腹壊すから一個ずつね。
子供達が選んだら、
冥王と牧野君も食べていいから」
エハの言葉に、
「ほら、早く選べ」
と牧野が急かした。
「大人げないな~」
ヴァンも苦笑いしてみていた。
「賑やかだと思ったら、向井君達帰ってきてたんだ」
田所が首をもみながら、
部屋に入ってきた。
「ケーキあるよ」
三鬼は幽霊のケーキを手にして、
田所を振り返った。
「そうか。ハロウィンだもんな。
虎獅狼達も工房でカボチャの何かを作ってるよ」
「そういえば安達君がいませんね」
冥王もカップケーキを取ると、
部屋を見回した。
「安達君は黒谷君の所にいますよ。
アートンさんが一緒だから大丈夫だと思いますけど、
安達君のリクエストのお弁当なので、
なんだか真剣に指示してるみたいです」
向井は笑いながらキッチンに行き、
人数分のジュースを冷蔵庫から出した。
「なあ、めいおーがよんでくれた、
カボチャのえほん。
わるいこはジャックになるのか? 」
呉葉がカボチャのケーキを食べながら、
冥王を見た。
「そうですよ。だからいい子でいないと、
独りぼっちで真っ暗な道を歩くんです」
「だれもいないの? 」
「いないです。
怖いですよ~
だからお友達と仲良くして、
いい子でいないといけません」
チビ三人はお互いを見ると、
「けんかはもうしない」
と頷いた。
「なに? 喧嘩したの? 」
ヴァンが聞くと、
「してない」
と三人は首をブルンブルンと横に振った。
「実はさっき、工房で呉葉の人形が壊れて、
大騒ぎだったんだよ」
新田がヴァンと向井の近くに来ると、
小声で話した。
「三鬼が粘土で作った恐竜で遊んでて、
テーブルにぶつかって落としちゃったらしくて。
まあ、わざとじゃないんだから、
三鬼が謝れば済むことだったんだけど」
新田がため息をついた。
「なに? 呉葉がなにかした? 」
向井が聞くと、
「三鬼がなかなか謝らないから、
呉葉が恐竜を壊したんだよ。
それで大騒ぎ。
早紀ちゃんと森村さんで暴れる二人を引き離してね。
こんは怖くてピーピー泣いてるし」
「よく収まったね」
ヴァンが言った。
「それが牧野君がさ。
カボチャのお化けに食べられるぞって、
一喝したんだよ」
「牧野君が? 大人になったね~」
ヴァンが笑った。
「まあね」
新田も笑うと話を続けた。
「それで、
冥王が少し前に『ジャック・オ・ランタン』の本を、
読み聞かせてたのもあって、
怖かったんじゃないかな」
「なるほどね」
向井も笑った。
「でも、三鬼とこんにとって、
呉葉が来たことはよかったんですね」
「どうして? 」
二人が聞く。
「ここでは大人ばかりでしょ。
呉葉も虎獅狼達大人と一緒。
子供だけのコミュニティーを、
初めて経験しているわけだから」
「そういうことか」
ヴァンも納得したように頷いた。
「喧嘩して、謝って、考えて、
仲直りして。
そういった一連の行動を学んでいるわけ。
大人はその手助けをしてあげればいいんです。
さっき、
牧野君が大人になったって言ってましたけど、
彼も安達君がいて、安達君にも牧野君がいて、
その関係性が、
いい方向につながっている気がするんですよね」
向井のその話を聞いて、
二人がじっと彼の顔を見た。
「なに? 」
「向井さんが子供の扱いが上手いのって、
そういう事かなって思って」
新田が言った。
「それは学生時代のバイトだと思いますよ。
ベビーシッターや時間外保育でお手伝いもしてましたから。
こういう事って日常茶飯事なんです。
人数が多い分、もっとひどいかもしれませんね」
向井はハハハと笑った。
「いいお父さんになれたのにね~」
ヴァンの言葉に、
「自分の子はまた別でしょ。
俺は結婚向きじゃないから。
彼女にも笑顔だけのロボットは要らない、
と言われて振られました」
「えっ? そんなこと言われたの? 」
新田が噴き出した。
「そう考えると………
俺は死んで人間らしくなっている気がします」
向井は笑うとそういった。
冥界に戻ると、
チビ達がカボチャのマントを着て、
やってきた。
「ハロウィンはまだですよ」
向井が言うと、
「めいおーもやってるよ」
チビ達がそういったところで、
冥王がマントを翻しやってきた。
「トリックオアトリート~」
そういってから、向井達の手にある袋を見て、
「それはケーキと見た」
と言った。
「ケーキ!? 」
チビ達は顔を輝かせると、
「はやくたべよう~」
と向井達を休憩室に引っ張っていった。
テーブルに箱を置くと、
寝ていた牧野や新田も起き上がった。
「世の中はすでにハロウィンですから、
お化けのカップケーキを買ってきました」
向井が言うと、
箱を開けたチビ達が、
特別なものでも見るように眺めた。
「おばけだ」
「ガイコツ? 」
「コウモリ? もいる」
「お腹壊すから一個ずつね。
子供達が選んだら、
冥王と牧野君も食べていいから」
エハの言葉に、
「ほら、早く選べ」
と牧野が急かした。
「大人げないな~」
ヴァンも苦笑いしてみていた。
「賑やかだと思ったら、向井君達帰ってきてたんだ」
田所が首をもみながら、
部屋に入ってきた。
「ケーキあるよ」
三鬼は幽霊のケーキを手にして、
田所を振り返った。
「そうか。ハロウィンだもんな。
虎獅狼達も工房でカボチャの何かを作ってるよ」
「そういえば安達君がいませんね」
冥王もカップケーキを取ると、
部屋を見回した。
「安達君は黒谷君の所にいますよ。
アートンさんが一緒だから大丈夫だと思いますけど、
安達君のリクエストのお弁当なので、
なんだか真剣に指示してるみたいです」
向井は笑いながらキッチンに行き、
人数分のジュースを冷蔵庫から出した。
「なあ、めいおーがよんでくれた、
カボチャのえほん。
わるいこはジャックになるのか? 」
呉葉がカボチャのケーキを食べながら、
冥王を見た。
「そうですよ。だからいい子でいないと、
独りぼっちで真っ暗な道を歩くんです」
「だれもいないの? 」
「いないです。
怖いですよ~
だからお友達と仲良くして、
いい子でいないといけません」
チビ三人はお互いを見ると、
「けんかはもうしない」
と頷いた。
「なに? 喧嘩したの? 」
ヴァンが聞くと、
「してない」
と三人は首をブルンブルンと横に振った。
「実はさっき、工房で呉葉の人形が壊れて、
大騒ぎだったんだよ」
新田がヴァンと向井の近くに来ると、
小声で話した。
「三鬼が粘土で作った恐竜で遊んでて、
テーブルにぶつかって落としちゃったらしくて。
まあ、わざとじゃないんだから、
三鬼が謝れば済むことだったんだけど」
新田がため息をついた。
「なに? 呉葉がなにかした? 」
向井が聞くと、
「三鬼がなかなか謝らないから、
呉葉が恐竜を壊したんだよ。
それで大騒ぎ。
早紀ちゃんと森村さんで暴れる二人を引き離してね。
こんは怖くてピーピー泣いてるし」
「よく収まったね」
ヴァンが言った。
「それが牧野君がさ。
カボチャのお化けに食べられるぞって、
一喝したんだよ」
「牧野君が? 大人になったね~」
ヴァンが笑った。
「まあね」
新田も笑うと話を続けた。
「それで、
冥王が少し前に『ジャック・オ・ランタン』の本を、
読み聞かせてたのもあって、
怖かったんじゃないかな」
「なるほどね」
向井も笑った。
「でも、三鬼とこんにとって、
呉葉が来たことはよかったんですね」
「どうして? 」
二人が聞く。
「ここでは大人ばかりでしょ。
呉葉も虎獅狼達大人と一緒。
子供だけのコミュニティーを、
初めて経験しているわけだから」
「そういうことか」
ヴァンも納得したように頷いた。
「喧嘩して、謝って、考えて、
仲直りして。
そういった一連の行動を学んでいるわけ。
大人はその手助けをしてあげればいいんです。
さっき、
牧野君が大人になったって言ってましたけど、
彼も安達君がいて、安達君にも牧野君がいて、
その関係性が、
いい方向につながっている気がするんですよね」
向井のその話を聞いて、
二人がじっと彼の顔を見た。
「なに? 」
「向井さんが子供の扱いが上手いのって、
そういう事かなって思って」
新田が言った。
「それは学生時代のバイトだと思いますよ。
ベビーシッターや時間外保育でお手伝いもしてましたから。
こういう事って日常茶飯事なんです。
人数が多い分、もっとひどいかもしれませんね」
向井はハハハと笑った。
「いいお父さんになれたのにね~」
ヴァンの言葉に、
「自分の子はまた別でしょ。
俺は結婚向きじゃないから。
彼女にも笑顔だけのロボットは要らない、
と言われて振られました」
「えっ? そんなこと言われたの? 」
新田が噴き出した。
「そう考えると………
俺は死んで人間らしくなっている気がします」
向井は笑うとそういった。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる