『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第四部

チビの喧嘩

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「ハッピーハロウィン! 」

冥界に戻ると、

チビ達がカボチャのマントを着て、

やってきた。

「ハロウィンはまだですよ」

向井が言うと、

「めいおーもやってるよ」

チビ達がそういったところで、

冥王がマントを翻しやってきた。

「トリックオアトリート~」

そういってから、向井達の手にある袋を見て、

「それはケーキと見た」

と言った。

「ケーキ!? 」

チビ達は顔を輝かせると、

「はやくたべよう~」

と向井達を休憩室に引っ張っていった。

テーブルに箱を置くと、

寝ていた牧野や新田も起き上がった。

「世の中はすでにハロウィンですから、

お化けのカップケーキを買ってきました」

向井が言うと、

箱を開けたチビ達が、

特別なものでも見るように眺めた。

「おばけだ」

「ガイコツ? 」

「コウモリ? もいる」

「お腹壊すから一個ずつね。

子供達が選んだら、

冥王と牧野君も食べていいから」

エハの言葉に、

「ほら、早く選べ」

と牧野が急かした。

「大人げないな~」

ヴァンも苦笑いしてみていた。

「賑やかだと思ったら、向井君達帰ってきてたんだ」

田所が首をもみながら、

部屋に入ってきた。

「ケーキあるよ」

三鬼は幽霊のケーキを手にして、

田所を振り返った。

「そうか。ハロウィンだもんな。

虎獅狼達も工房でカボチャの何かを作ってるよ」

「そういえば安達君がいませんね」

冥王もカップケーキを取ると、

部屋を見回した。

「安達君は黒谷君の所にいますよ。

アートンさんが一緒だから大丈夫だと思いますけど、

安達君のリクエストのお弁当なので、

なんだか真剣に指示してるみたいです」

向井は笑いながらキッチンに行き、

人数分のジュースを冷蔵庫から出した。

「なあ、めいおーがよんでくれた、

カボチャのえほん。

わるいこはジャックになるのか? 」

呉葉がカボチャのケーキを食べながら、

冥王を見た。

「そうですよ。だからいい子でいないと、

独りぼっちで真っ暗な道を歩くんです」

「だれもいないの? 」

「いないです。

怖いですよ~

だからお友達と仲良くして、

いい子でいないといけません」

チビ三人はお互いを見ると、

「けんかはもうしない」

と頷いた。

「なに? 喧嘩したの? 」

ヴァンが聞くと、

「してない」

と三人は首をブルンブルンと横に振った。

「実はさっき、工房で呉葉の人形が壊れて、

大騒ぎだったんだよ」

新田がヴァンと向井の近くに来ると、

小声で話した。

「三鬼が粘土で作った恐竜で遊んでて、

テーブルにぶつかって落としちゃったらしくて。

まあ、わざとじゃないんだから、

三鬼が謝れば済むことだったんだけど」

新田がため息をついた。

「なに? 呉葉がなにかした? 」

向井が聞くと、

「三鬼がなかなか謝らないから、

呉葉が恐竜を壊したんだよ。

それで大騒ぎ。

早紀ちゃんと森村さんで暴れる二人を引き離してね。

こんは怖くてピーピー泣いてるし」

「よく収まったね」

ヴァンが言った。

「それが牧野君がさ。

カボチャのお化けに食べられるぞって、

一喝したんだよ」

「牧野君が? 大人になったね~」

ヴァンが笑った。

「まあね」

新田も笑うと話を続けた。

「それで、

冥王が少し前に『ジャック・オ・ランタン』の本を、

読み聞かせてたのもあって、

怖かったんじゃないかな」

「なるほどね」

向井も笑った。

「でも、三鬼とこんにとって、

呉葉が来たことはよかったんですね」

「どうして? 」

二人が聞く。

「ここでは大人ばかりでしょ。

呉葉も虎獅狼達大人と一緒。

子供だけのコミュニティーを、

初めて経験しているわけだから」

「そういうことか」

ヴァンも納得したように頷いた。

「喧嘩して、謝って、考えて、

仲直りして。

そういった一連の行動を学んでいるわけ。

大人はその手助けをしてあげればいいんです。

さっき、

牧野君が大人になったって言ってましたけど、

彼も安達君がいて、安達君にも牧野君がいて、

その関係性が、

いい方向につながっている気がするんですよね」

向井のその話を聞いて、

二人がじっと彼の顔を見た。

「なに? 」

「向井さんが子供の扱いが上手いのって、

そういう事かなって思って」

新田が言った。

「それは学生時代のバイトだと思いますよ。

ベビーシッターや時間外保育でお手伝いもしてましたから。

こういう事って日常茶飯事なんです。

人数が多い分、もっとひどいかもしれませんね」

向井はハハハと笑った。

「いいお父さんになれたのにね~」

ヴァンの言葉に、

「自分の子はまた別でしょ。

俺は結婚向きじゃないから。

彼女にも笑顔だけのロボットは要らない、

と言われて振られました」

「えっ? そんなこと言われたの? 」

新田が噴き出した。

「そう考えると………

俺は死んで人間らしくなっている気がします」

向井は笑うとそういった。
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