141 / 631
第四部
式神コンビ
しおりを挟む
その日から黒谷の調理場に、
アートンと入りびたり気味の安達に、
「余程、そのフェスが楽しみなんだね」
とヴァンが言った。
このところ牧野が休暇中で、
エハとヴァンと向井が三人で悪霊退治をしていた。
エナトと佐久間、早紀とオクトのコンビが、
それぞれ隣町で活動しているので、
向井達はアーケード周辺を見て回っていた。
中央から約百五十km圏内が、
主に向井達の現場になるので範囲は広い。
本部と支部は二ヵ所。
冥界は霊を引き寄せる、
磁石のような強い力が働く為、
彷徨う霊は自然とその光に導かれ、
中央、西、北へと移動していく。
なので本部には本部圏内の、
西、北にはそれらの圏内の霊を退治することで、
被害を最低限に抑えているのだ。
地震が増えてから、
霊の殆どが光の渦で冥界に運ばれ、
保護する霊も少なくなっていた。
向井も派遣霊を探しながら、
そこそこ大きく膨れている悪霊を捕縛していた。
「新しいリングが出来上がったみたいで、
それの装着テストもしてるので、
仕事の方はお休みで楽しいんでしょうね」
向井も笑った。
「安達君は見た目もそうだけど、
リングのせいで子供に戻ってるでしょ。
うちは牧野君を入れると、
五人の子供がいるみたいですもんね」
エハが楽しそうに笑った。
「でも、賑やかになって、
災害続きの時には丁度いいよ」
ヴァンはそういうと、背後を振り返った。
「ん? 」
二人もサッと体の向きを変える。
見ると人型の悪霊の姿があった。
「久しぶりに見たな」
ヴァンが言った。
「この辺りで地縛霊は珍しいですね」
向井も言うと、
手にしていた霊玉に言霊を乗せて放り投げた。
霊玉は悪霊を飲み込むと、
シュルシュルシュル~と巻かれるように姿を消した。
「その技。牧野君が知ったら怒りそう」
エハがクスクス笑った。
「御託宣室に出入りできるのは俺だけですからね。
ドームに自分の言葉が吸い込まれるのを見て、
武器として利用できないかな? と、
思ったんですよ。
究鬼さんに相談したら、
霊玉に乗せてみたら? と言われたんでやってみたら、
近距離なら霊銃使うより楽なんですよね」
向井も笑った。
「エハさんとヴァン君も、
式神使いって聞いて驚きました」
「俺達は腕っぷしははっきり言って、
得意ではないんです。
向井さんも、
セイやドセと変わらないと思ってるでしょう? 」
「いや、そんな事は………少しだけかな? 」
向井が申し訳なさそうに笑った。
「まあ、その通りではあるんですけどね。
でも、そこそこ力はあるんですよ」
二人は笑いながら話し始めた。
「いざという時に戦える死神という事で、
冥王から式神持ちにされたんです。
こう見えて、カトルセやディッセより、
戦闘能力ありますよ」
「そうなんですか? 」
驚く向井に、
「あの二人はホント、見掛け倒しなの」
エハがケラケラ笑った。
アートンと入りびたり気味の安達に、
「余程、そのフェスが楽しみなんだね」
とヴァンが言った。
このところ牧野が休暇中で、
エハとヴァンと向井が三人で悪霊退治をしていた。
エナトと佐久間、早紀とオクトのコンビが、
それぞれ隣町で活動しているので、
向井達はアーケード周辺を見て回っていた。
中央から約百五十km圏内が、
主に向井達の現場になるので範囲は広い。
本部と支部は二ヵ所。
冥界は霊を引き寄せる、
磁石のような強い力が働く為、
彷徨う霊は自然とその光に導かれ、
中央、西、北へと移動していく。
なので本部には本部圏内の、
西、北にはそれらの圏内の霊を退治することで、
被害を最低限に抑えているのだ。
地震が増えてから、
霊の殆どが光の渦で冥界に運ばれ、
保護する霊も少なくなっていた。
向井も派遣霊を探しながら、
そこそこ大きく膨れている悪霊を捕縛していた。
「新しいリングが出来上がったみたいで、
それの装着テストもしてるので、
仕事の方はお休みで楽しいんでしょうね」
向井も笑った。
「安達君は見た目もそうだけど、
リングのせいで子供に戻ってるでしょ。
うちは牧野君を入れると、
五人の子供がいるみたいですもんね」
エハが楽しそうに笑った。
「でも、賑やかになって、
災害続きの時には丁度いいよ」
ヴァンはそういうと、背後を振り返った。
「ん? 」
二人もサッと体の向きを変える。
見ると人型の悪霊の姿があった。
「久しぶりに見たな」
ヴァンが言った。
「この辺りで地縛霊は珍しいですね」
向井も言うと、
手にしていた霊玉に言霊を乗せて放り投げた。
霊玉は悪霊を飲み込むと、
シュルシュルシュル~と巻かれるように姿を消した。
「その技。牧野君が知ったら怒りそう」
エハがクスクス笑った。
「御託宣室に出入りできるのは俺だけですからね。
ドームに自分の言葉が吸い込まれるのを見て、
武器として利用できないかな? と、
思ったんですよ。
究鬼さんに相談したら、
霊玉に乗せてみたら? と言われたんでやってみたら、
近距離なら霊銃使うより楽なんですよね」
向井も笑った。
「エハさんとヴァン君も、
式神使いって聞いて驚きました」
「俺達は腕っぷしははっきり言って、
得意ではないんです。
向井さんも、
セイやドセと変わらないと思ってるでしょう? 」
「いや、そんな事は………少しだけかな? 」
向井が申し訳なさそうに笑った。
「まあ、その通りではあるんですけどね。
でも、そこそこ力はあるんですよ」
二人は笑いながら話し始めた。
「いざという時に戦える死神という事で、
冥王から式神持ちにされたんです。
こう見えて、カトルセやディッセより、
戦闘能力ありますよ」
「そうなんですか? 」
驚く向井に、
「あの二人はホント、見掛け倒しなの」
エハがケラケラ笑った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
遥かなる物語
うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。
この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。
彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。
だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか?
ーーーーーーーー
序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。
※作者独自の世界観です。
※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
すこやか食堂のゆかいな人々
山いい奈
ライト文芸
貧血体質で悩まされている、常盤みのり。
母親が栄養学の本を読みながらごはんを作ってくれているのを見て、みのりも興味を持った。
心を癒し、食べるもので健康になれる様な食堂を開きたい。それがみのりの目標になっていた。
短大で栄養学を学び、専門学校でお料理を学び、体調を見ながら日本料理店でのアルバイトに励み、お料理教室で技を鍛えて来た。
そしてみのりは、両親や幼なじみ、お料理教室の先生、テナントビルのオーナーの力を借りて、すこやか食堂をオープンする。
一癖も二癖もある周りの人々やお客さまに囲まれて、みのりは奮闘する。
やがて、それはみのりの家族の問題に繋がっていく。
じんわりと、だがほっこりと心暖まる物語。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる