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第四部

特別室事件

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そしてその夜――――

特別室で騒ぎが起こるべくして起こった。

佐々木の性癖は尋常じゃなく、

冥界に上がってきてから、

暴れまくっていた。

向井に敵わないことを知ってからは、

特別室に顔を出しても、

不機嫌な態度で部屋の奥から姿を見せることはなかった。

さすがの大沢と須原も向井を見ると、

「あれを何とかしろ」

というばかりだ。



「大沢さん、あんたからも何とか言ってもらえないですか」

「何をいうんです」

大沢の返事に、

佐々木の怒りは頂点に達していた。

「私はいたぶる対象がないと、

我慢ならんのですよ。

あんたが作った証明証はいい案だったよ。

私好みの子供を選び放題。

しかもチップがあるからどこにいても把握できる。

おかげでいい思いをさせてもらった」

陰湿に笑う佐々木の顔に、

須原は青ざめて見ていた。

「人の子をいたぶり、家庭ではいい夫、父親を演じ、

外でも優しい実業家としてだましてきた気分はどうだ」

大沢が言った。

「人には表と裏があるもんだ。

あんたの裏の顔を知れば、

馬鹿な国民だって、

あんたを神だと崇めやしないだろう」

「君のそこが浅はかなところだな。

大事なものを守る為なら、

他人を差し出すものは大勢いる。

あんたもここにいるという事は、

代償となった命があるはずだ。

政界を見てみろ。

私はそんな奴らを、

多く飲み込んできたんだよ。

大沢帝国こそ愚民政策への第一歩だ」

大沢は不気味に笑った。

須原は黙って彼らの話を聞きながら、

恐ろしさに唾をのんだ。

今や戦争を知る世代はいない。

権力者は戦前に憧れる。

まさか………大沢先生はそんなことを考えて、

今も動いているのか? 

この人はこの国を沈没させるつもりか?

「ふん。私の企業が、

どれだけの役立たずを引き受けてやったと思っている。

この先何年、何十年と、

天下りの為の役職を用意してやれるのも、

私の力があってこそですよ。

あんたらの為に国民を、

デジタル依存症にもし、

政界の不正をデマで誘導もしてやった。

殺人も自殺で片づけてやった。

思い上がりもほどほどにしてほしいものです。

大沢先生」

佐々木はそういうと立ち上がった。

そして怒りに体を震わせると、

「もう、我慢できん。

私はここを出る。

ここを出れば、子供も女もいるんだろう? 」

そういうと、ドアに向かった。

その背中に向けて大沢が話しかける。

「佐々木さん。忠告しますよ。

向井も言っていただろう。

ここは冥界で死人の住まう場所。

私らはここから出ることはできないんですよ」

「聞き飽きたよ」

そういって佐々木はドアを開けた。
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