『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第四部

住処を奪われる妖怪

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三人が冥界に戻ると、

食堂が何やら騒がしく、

「何かあったんだろうか」

アートンが足早に部屋に入っていった。

「これどうしましょうか」

向井は瓶を見ながら言った。

「とりあえず研究室で預かってもらって、

冥王に決めてもらおう。

これがあれば当分、

あの場所で何かを企てることはないでしょ。

災害も規模が小さかったから、

特殊災害対策も動かないと思う」

トリアはそれだけ言うと、

「これは私が届けるから」

と瓶を持って研究室に向かった。

向井はその後姿を見送ってから、

気になる食堂へと入っていった。

すると、

「むかい~」

呉葉が泣きながら抱きついてきた。

「えっ? どうしたんですか? 」

向井は呉葉を抱き上げると、

歩き出した。

「皆さんお揃いで何かあったんですか? 」

妖怪たちが椅子に座って、

冥王と何やら真剣な面持ちで話をしていた。

「向井君」

冥王が声をかけると、

話があるという仕草をした。

向井は抱きついて離れない呉葉を膝に乗せ、

椅子に座った。

妖鬼の姿もある。

「じつはの~」

虎獅狼が話し始めた。

「俺達の住まいが壊されてしまっての」

「えっ? 」

向井は驚いて、

泣きじゃくる呉葉の顔を覗いた。

「お前も知っておろう。

俺達が住まう場所はいつも人間に追いやられ、

やっと見つけた住処だったんじゃ。

なのに、つい先日よ。

いきなり壊され、居場所を無くした」

「でも、あそこは開発されるようなところでは、

ないはずですけど」

向井はそういいながら冥王を見た。

「特殊災害対策室の調査が入ったと思ったら、

突然ソーラーシェアリングが決まったそうです」

「はっ? あんな場所で? 申請が通るとは………」

向井はそこまで言って、

アートンを見た。

彼も頷くと、

「少し前に天下りコーディネーターが動いてて、

恐らく補助金もあるんだろうけど、

それより別の問題だと思います」

と言った。

「さっき、赤姫から吉沢が祠跡に近づけないよう、

妖術を使ったと言われて………」

アートンが頭を掻いた。

冥王が怪訝そうな顔をした。

「黒谷君もいるので祠に何かされないよう、

吉沢の影の半面に術をかけたんだそうです。

多分、それで近づけなくなったので、

そのかわりに他の場所を探してたんじゃないかと」

向井の説明に冥王が深いため息をついた。

そこへ優香がシュークリームを運んできた。

「気持ちが落ち込んでいる時には、

甘いものが一番だよ~」

そういうと、顔を隠している呉葉の近くに、

シュークリームを近づけた。

「………いいにおい」

呉葉が手で涙をぬぐいながら顔をあげた。

「色んな味があるんだよ~」

優香はそういうと自分でシュークリームを食べた。

「うん。我ながら天才~美味しい」

それを見て、その場にいたものも食べ始めた。

「呉葉も食べないと無くなっちゃいますよ」

向井が言うと、膝から下りてお皿を覗きにいった。
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