『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第四部

特別室の犯罪者

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「それにしても………監禁の上の、

児童買春ですよ。殺人ですよ」

「ふう~彼さ、特別室組の霊で上がってきたでしょ。

三途の川で騒ぎ起こしたんで、

一旦隔離サロンに運ばせたんだけど、

こっちが許可する前に、

奥さんと妹の残りの命を献上するって、

サインしちゃってるんですよ。

殺害された子供はリハビリプログラムを受けて、

既に再生されてるから」

「………」

険しい顔つきの向井に、

「隠し財産も大沢の比じゃないくらいの大金でさ。

少しの間だけ置くことにした。

二人分の命の献上だけど、

彼女たちの残り寿命が少ないのと、

彼の場合罪状があるし、半年しかいられないから」

「向井君には悪いけど、半年だけ我慢して。

半年間はできるだけアートンに担当させますから」

「アートンさんだと怪我しますよ」

「えっ? 」

二人の顔が驚きに変わった。

「彼、何かするの? 」

ディッセが聞いた。

「DVの罪状もありますよ。

書類に目を通していないんですか? 」

「向井君、何かされたんですか? 」

「大したことないです。ここの死神は腕力苦手でしょ」

「………ティンとオクトは格闘技ができますけど、

後はあまり強いとは言えませんね。

ディッセも見掛け倒しですから」

「面目ない」

申し訳なさそうに笑った。

「だったら、俺がいない時は、

ティン君かオクトさんに、

担当をお願いしたほうがいいですね」

「そんなにやばいの? 」

「キレやすいんです。

気にくわないと殴る蹴る。

避けることができないと、

死神と言えど怪我します」

「それは危険ですね。向井君は大丈夫なんですか? 」

「あれくらいなら。

様子も見れたし、

二度目はないですから」

向井はしれっとした顔で言うと笑った。


向井が特別室に行くと、

「呼んだらすぐに来なさい」

佐々木はそういうと向井を見た。

「何の御用でしょう」

「子供を一人ここに連れてきなさい。

私は子供好きでね~

死んでるんだから別に問題ないだろう? 

あと、ここには女はいないのか? 

私は綺麗な男はすかん」

向井は深く息を吐くと、

「あなたの罪状は全て目を通していますので、

その様なご要望にはお答えできません」

「罪状? 私は犯罪者ではない!! 」

「下界での隠蔽は冥界では通用しません。

罪状として記載されています」

「私を誰だか分かっていて、

その様な物言いをしているのか? 」

顔を真っ赤にして怒る佐々木に、

向井は顔色一つ変えずに口を開いた。

「ここは冥界であなたの権力は通用しません。

この部屋の中でしたら、

あなた方も半死人ですから、

好きな食事もご用意しますし、

ゴルフも読書もできますよ」

佐々木は椅子をけって立ち上がると、

向井に殴りかかってきた。

だが、向井はそれを軽く避けると、

佐々木の腕をひねり上げた。

その一瞬の出来事に須原は驚き、

大沢は片眉を上げて見ていた。

佐々木は青ざめると、屈辱に口を震わせた。

「この前は油断してしまって。

佐々木さんはお年の割に力もあるので。

大沢さん、

あなたはこんな男の後始末もされていたんですね」

「………」

大沢は佐々木に不快感は見せたものの、

何も言わなかった。

「御用がそれだけでしたら失礼いたします」

向井は軽く頭を下げると、

ドアノブに手を置いた。

部屋から出てきた向井は、

「ドセ君いたの? 」

と笑顔を見せた。

向井が心配でついてきたドセは、

その様子をドアの隙間から覗いていた。

「だって、この前殴られたから、

心配でしょ。

でも、向井さんすごく強い……

僕、びっくりして腰抜かすところでした」

「ははは。だから大丈夫って言ったでしょ」

そういうと、ドセの背中を軽く叩いて、

一緒に廊下を歩き出した。
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