『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第三部

キッチンカーに向けて

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その後、

団地で健次郎の姿を見ることはなくなったが、

政府特殊災害対策室の吉沢の姿が、

何度か目撃されていた。

黒谷が、

「何かわかんないけど、

この裏の敷地と祠のところをチェックしてたな」

と向井に話してくれた。

「赤姫さんは睨んでたけど、誰にも見えないからさ。

多分あいつらが祠を破壊したんだろ? 」

向井は黒谷が欲しがっていた家電を届けに来て、

その話題になった。

「助かったぁ~

電子レンジがないから困ってたんだよね」

黒谷が嬉しそうにレンジを抱きかかえた。

「あと、掃除機ももってきましたから」

向井はそういうと、

近くの家電量販店で購入して来たものを部屋に置いた。

「死神をこき使う人間なんて、

あんたくらいだね」

トリアは向井と一緒にキャリーカートを引いてきたので、

黒谷を見ながら文句を言った。

「はぁ~疲れたぁ~」

部屋に上がり込むと、

「へえ~

綺麗なところじゃない」

「お疲れさまでした」

向井はトリアに缶コーヒーを渡した。

「有難う」

トリアは座り込むとプルトップを開けた。

「はい、黒谷君も」

向井がコーヒーを渡す。

「そうそう、俺、この前キッチンカーを見てきたんだ」

「貯金が貯まったんですね」

向井が言うと、黒谷は楽しそうに話し出した。

「やっとね。

とはいっても中古の車を改造してもらうんだけど。

弁当の移動販売って競争率激しいからさ、

これからが大変。

空いた時間でキッチン探して、

駐車場でしょう。

それに準備ができ次第申請も出して………

やること山積み」

黒谷は指を折りながら言った。

「でもさ~運のなかった俺に、

ちょこっと神様がご褒美くれたって感じ? 

まとまった金が入ったんだよね~」

「なによ。あんた変な仕事したんじゃないでしょうね」

「違うよ~俺、向井さんにも行ったけど、

どす黒いオーラの人間は分かるから近寄らないし」

「じゃあ、何? 」

トリアがコーヒーを飲み干すと近づいた。

「霊光アンナのスタッフからDMもらって」

「霊光アンナ!? どういうこと? 」

トリアが声を上げ、向井も驚きの表情で黒谷を見た。

「実はさぁ~赤姫折詰作るって話したでしょ」

「うんうん」

トリアが頷きながら聞く。

「ここに越した後、

キッチンカーの市場調査に歩いて回ってたら、

空気のよどんでない場所には、

神様がいることが多いのに気が付いたんだよね。

俺、人間の悪意が強いと気分が悪くなるから、

そういう場所は予め避けたかったからさ」

「まあ、地域神は自分のテリトリーは、

綺麗にしてるからね」

トリアが言った。

「で、その神様たちに折詰持って、

話を聞きに行ったんだ」

「えっ!? 」

向井とトリアが驚きのあまり、

口をあんぐりと開けた。
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