『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
上 下
623 / 631
第十八部

竜之介の想い

しおりを挟む
大林がサロンに戻り、

他の霊達と話す姿に、

「そのギャラリーを見てみたいです」

竜之介が向井を見た。

二人はギャラリーに行くと、

中には数人の霊がギャラリーを楽しそうに見ていた。

竜之介は入り口の絵を見て、

「なんですか。これは。

これが龍之介の絵なんですか。

酷いですね~

せっかくの素晴らしいギャラリーが台無しです」

と首を横に振りため息をついた。

「私も絵に関しては褒められたものではないので、

冥王の事は言えないんですけどね」

向井も笑いながら絵を見た。

竜之介はのんびり見ながら、

チビ達の七五三の写真に笑顔になった。

「可愛いですね」

「チビ達のお祝い事なんで、

冥王がコーナーを設けて飾っているんです。

七五三は吉祥天様からも加護を受けたので、

喜んでました」

竜之介は魅入るように一つ一つ作品を眺めては、

笑顔で頷いていた。



そのあとも休憩室に行くと、

誰もいなかったこともあり、

楽しそうに電車に乗り、

優香が作った残りのクッキーを手に、

冥王室に戻った。

「龍之介がここでどのように過ごしているのか、

分かってよかったです。

この国の冥王が亡くなった後、

次は誰が担当するのか随分と揉めたんですよ」

「ということは、神様にも見放された国という事ですね」

向井も驚くとため息まじりに笑った。

「あはははは」

竜之介も声をあげて笑うと、

「ここが酷い状態だったのは、

私達にも分かっていましたからね。

地球は美しくても、中身が酷い。

幾ら綺麗に着飾っても、

内面が汚れているものに神は嫌悪します。

人間のように騙されることはありません」

その話に向井が黙って聞いていたので、

竜之介が続けた。

「誰もが面倒だと感じる中、

龍之介だけはこの国に魅せられたようでした。

だからね。私は賭けをしようと言ったんです」

「賭け? 」

向井が聞き返した。

「私にとってこんな国は、

足かせにしかならないですからね。

潰してしまおうと思ってたんです。

人間なんて私にはどうでもいい存在ですしね」

向井が俯いて笑う様子に、

「私は酷い神でしょ」

と自嘲気味に言った。

「いえ、神様らしいと思います」

その言葉に竜之介も笑うと、

「そんな私の考えが分かったのでしょう。

龍之介はわざと負けてここへ来たんですよ」

「そうですか」

向井も顔をあげて相手を見た。

「まあ、そんな私もね。冥王室を見ていて、

向井君に興味を持ったんです。

神も人も面白い。

だからね、今までの事は、

ちょっとした神のいたずらという事で、

許していただけますか」

茶目っ気のある笑顔を見せる竜之介に、

「そういう所は冥王によく似ていらっしゃる」

と向井も笑顔になった。

竜之介は壁の前に行き手をかざすと、

「では、そろそろ彼奴も戻る頃でしょう。

私の役目も終わりです。

今日は楽しかったですよ」

と言った。

「私も一緒に過ごせて楽しかったです」

向井が頭を下げると、

「天空界にも遊びに来てくださいよ。

ここの天上界より近代的で快適空間ですよ。

ではまた」

また? 

驚く向井に竜之介はそういって笑うと、

壁の中にスッと姿を消した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

遥かなる物語

うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。 この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。 彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。 だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか? ーーーーーーーー 序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。 ※作者独自の世界観です。 ※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...