『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十八部

向井消える

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「悪霊に意思があるという事? 」

トリアが驚き、ディッセも安達の姿を見ながら、

顔を顰めた。

「気持ちが優しいだけでなく、

胸の奥に穏やかなオーラを持っている人間は、

悪霊に取り込まれやすいんですよ。

例えば自分の子供が、

ビルの中にいるのが見えたとするでしょう。

ここが危険だと知っていたら、

なおさら子供を助けに親は入って行く」

「そうやって、エサを得ていたってことか………」

ディッセも向井を見て、顔色が変わった。

「俺はこの悪霊に意思があるとは思っていません。

ただ、エサを求めて自然と狩りの方法を、

習得していったんだと思います。

意思に近いと言えばそうなのかもしれませんけど、

会話が成り立たないですから」

「でも、この安達君は、

いつものように話しかけてきたけど………」

ディッセが恐る恐る安達を見る。

「安達君、俺はそこにはいかないからね。

自分でなんとかしなさい」

向井が声をかけると、

「酷い。酷いよ。酷…い………ヒド…イ………」

そういいながら体が崩れていった。

ディッセ達の顔がこわばり、

向井は霊玉を取り出すと、

安達の姿をした悪霊を除去した。

「この安達君はね。

恐らくこのビルを利用して、

俺を誘き出したかった誰かの仕業です」

「誰かって………?」

トリアが聞いたところで、

「恐らく冥王は分かっていると思います。

この前気づくべきでした」

向井は一度息をつくと覚悟を決めたのか、

「これからこの繭を作った悪霊を除去します。

もし、俺に何かあったら、

冥王に俺が怒っていたと伝えてください。

それと………三鬼との約束が、

守れなくなるかもしれないので、

そのフォローもお願いします」

そういって微笑むと、

霊玉を取り出した。

「向井君! ちょっと待って! 」

トリアが慌てて名前を呼ぶ。

「大丈夫です。ちゃんと戻ってきますから。

多分………」

向井は手のひらから弓矢を出すと、

穴に向かって放った。

すると中央の穴が広がり、

向井が吸い込まれていった。

「!! 」

ディッセ達は驚き、

「向井さん!! 」

「向井君!! 」

叫ぶ声がビル内に反響した。



ビルの外ではアートン達が、

周りを確認しながら様子を窺っていた。

「本当に中で悪霊が膨れてるのかな~

外にいてもそこまで危険は感じないけどね」

ヴァンが戻ってきた式神を消すと、

空を見上げた。

青空には程遠いが光りが多少見えてきた。

街ゆく人々も久しぶりの光に、

まぶしそうな表情をした。

「これだけ除去しても、

明日にはまた元に戻っちゃうんだよね」

エハもため息をついた。

「あっ、出てきた」

アートンの声にヴァンとエハも入り口を振り返った。

「中はどうだった? 」

アートンが聞きながら、

トリア達の様子が普通ではないのを感じ取り、

顔を顰めた。

「何かあった? あれ? 向井さんは? 」

エハが三人を見ながら姿を探した。

「すぐに冥界に戻るよ」

ディッセがいい、

「向井君が消えた」

「えっ? 」

トリアの言葉にアートン達も驚きの表情に変わった。
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