611 / 631
第十八部
向井消える
しおりを挟む
「悪霊に意思があるという事? 」
トリアが驚き、ディッセも安達の姿を見ながら、
顔を顰めた。
「気持ちが優しいだけでなく、
胸の奥に穏やかなオーラを持っている人間は、
悪霊に取り込まれやすいんですよ。
例えば自分の子供が、
ビルの中にいるのが見えたとするでしょう。
ここが危険だと知っていたら、
なおさら子供を助けに親は入って行く」
「そうやって、エサを得ていたってことか………」
ディッセも向井を見て、顔色が変わった。
「俺はこの悪霊に意思があるとは思っていません。
ただ、エサを求めて自然と狩りの方法を、
習得していったんだと思います。
意思に近いと言えばそうなのかもしれませんけど、
会話が成り立たないですから」
「でも、この安達君は、
いつものように話しかけてきたけど………」
ディッセが恐る恐る安達を見る。
「安達君、俺はそこにはいかないからね。
自分でなんとかしなさい」
向井が声をかけると、
「酷い。酷いよ。酷…い………ヒド…イ………」
そういいながら体が崩れていった。
ディッセ達の顔がこわばり、
向井は霊玉を取り出すと、
安達の姿をした悪霊を除去した。
「この安達君はね。
恐らくこのビルを利用して、
俺を誘き出したかった誰かの仕業です」
「誰かって………?」
トリアが聞いたところで、
「恐らく冥王は分かっていると思います。
この前気づくべきでした」
向井は一度息をつくと覚悟を決めたのか、
「これからこの繭を作った悪霊を除去します。
もし、俺に何かあったら、
冥王に俺が怒っていたと伝えてください。
それと………三鬼との約束が、
守れなくなるかもしれないので、
そのフォローもお願いします」
そういって微笑むと、
霊玉を取り出した。
「向井君! ちょっと待って! 」
トリアが慌てて名前を呼ぶ。
「大丈夫です。ちゃんと戻ってきますから。
多分………」
向井は手のひらから弓矢を出すと、
穴に向かって放った。
すると中央の穴が広がり、
向井が吸い込まれていった。
「!! 」
ディッセ達は驚き、
「向井さん!! 」
「向井君!! 」
叫ぶ声がビル内に反響した。
ビルの外ではアートン達が、
周りを確認しながら様子を窺っていた。
「本当に中で悪霊が膨れてるのかな~
外にいてもそこまで危険は感じないけどね」
ヴァンが戻ってきた式神を消すと、
空を見上げた。
青空には程遠いが光りが多少見えてきた。
街ゆく人々も久しぶりの光に、
まぶしそうな表情をした。
「これだけ除去しても、
明日にはまた元に戻っちゃうんだよね」
エハもため息をついた。
「あっ、出てきた」
アートンの声にヴァンとエハも入り口を振り返った。
「中はどうだった? 」
アートンが聞きながら、
トリア達の様子が普通ではないのを感じ取り、
顔を顰めた。
「何かあった? あれ? 向井さんは? 」
エハが三人を見ながら姿を探した。
「すぐに冥界に戻るよ」
ディッセがいい、
「向井君が消えた」
「えっ? 」
トリアの言葉にアートン達も驚きの表情に変わった。
トリアが驚き、ディッセも安達の姿を見ながら、
顔を顰めた。
「気持ちが優しいだけでなく、
胸の奥に穏やかなオーラを持っている人間は、
悪霊に取り込まれやすいんですよ。
例えば自分の子供が、
ビルの中にいるのが見えたとするでしょう。
ここが危険だと知っていたら、
なおさら子供を助けに親は入って行く」
「そうやって、エサを得ていたってことか………」
ディッセも向井を見て、顔色が変わった。
「俺はこの悪霊に意思があるとは思っていません。
ただ、エサを求めて自然と狩りの方法を、
習得していったんだと思います。
意思に近いと言えばそうなのかもしれませんけど、
会話が成り立たないですから」
「でも、この安達君は、
いつものように話しかけてきたけど………」
ディッセが恐る恐る安達を見る。
「安達君、俺はそこにはいかないからね。
自分でなんとかしなさい」
向井が声をかけると、
「酷い。酷いよ。酷…い………ヒド…イ………」
そういいながら体が崩れていった。
ディッセ達の顔がこわばり、
向井は霊玉を取り出すと、
安達の姿をした悪霊を除去した。
「この安達君はね。
恐らくこのビルを利用して、
俺を誘き出したかった誰かの仕業です」
「誰かって………?」
トリアが聞いたところで、
「恐らく冥王は分かっていると思います。
この前気づくべきでした」
向井は一度息をつくと覚悟を決めたのか、
「これからこの繭を作った悪霊を除去します。
もし、俺に何かあったら、
冥王に俺が怒っていたと伝えてください。
それと………三鬼との約束が、
守れなくなるかもしれないので、
そのフォローもお願いします」
そういって微笑むと、
霊玉を取り出した。
「向井君! ちょっと待って! 」
トリアが慌てて名前を呼ぶ。
「大丈夫です。ちゃんと戻ってきますから。
多分………」
向井は手のひらから弓矢を出すと、
穴に向かって放った。
すると中央の穴が広がり、
向井が吸い込まれていった。
「!! 」
ディッセ達は驚き、
「向井さん!! 」
「向井君!! 」
叫ぶ声がビル内に反響した。
ビルの外ではアートン達が、
周りを確認しながら様子を窺っていた。
「本当に中で悪霊が膨れてるのかな~
外にいてもそこまで危険は感じないけどね」
ヴァンが戻ってきた式神を消すと、
空を見上げた。
青空には程遠いが光りが多少見えてきた。
街ゆく人々も久しぶりの光に、
まぶしそうな表情をした。
「これだけ除去しても、
明日にはまた元に戻っちゃうんだよね」
エハもため息をついた。
「あっ、出てきた」
アートンの声にヴァンとエハも入り口を振り返った。
「中はどうだった? 」
アートンが聞きながら、
トリア達の様子が普通ではないのを感じ取り、
顔を顰めた。
「何かあった? あれ? 向井さんは? 」
エハが三人を見ながら姿を探した。
「すぐに冥界に戻るよ」
ディッセがいい、
「向井君が消えた」
「えっ? 」
トリアの言葉にアートン達も驚きの表情に変わった。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
遥かなる物語
うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。
この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。
彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。
だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか?
ーーーーーーーー
序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。
※作者独自の世界観です。
※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる