『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十八部

ハクの能力

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「なに? 悪霊? 」

アートンが聞くと、

「ん、ちょっとね。確認しないと何とも言えないから、

お弁当食べたら見に行ってくるよ」

ディッセが言いながら座ると、

食事を始めた。

「おうたまでにもどってくる? 」

三鬼の心配そうな顔に大人達は笑うと、

「大丈夫。すぐ戻ってきます」

向井も笑顔で言うと残りのお弁当を食べ始めた。

隣を見ると、

「ハク? 」

下を向いて動かない姿に向井が声をかけた。

その様子に毘沙門天は立ち上がり、

「お茶が欲しいですね。

三鬼、一緒に飲み物を取りに行きましょう。

皆さんも飲まれるでしょう? 

安達君も手伝ってください」

と唐突に口を開いた。

「えっ? うん、分かった」

安達も少し驚いた表情で見上げると、

立ち上がった。

三人は歩きながら、

「安達君は何を飲まれますか? 」

「俺は………今日は鉄観音」

「ボクはバナナ~」

楽しそうに話す彼らの姿を見て、


毘沙門天様は三鬼と安達君を遠ざけた………?


誰もがそう感じた時、

ハクが顔をあげた。

見るとハクの体から龍神の姿が重なっていた。

向井が驚いて周りを見るが、

気づいたのは冥王だけのようだった。

「ハク? 」

シェデムが声をかけると、

ハクは向井の方に向き直り、

口を開いた。


【おぬしを狙って再びやってくるぞ。

気をつけなされ】


ハクの声ではない。

龍神池で生まれたハクを守るように、

黄金輝く龍神が現れた。


向井達が驚いていると、

ハクがぱたんと後ろに傾いた。

「おっと」

慌てて向井が抱き止めると、

ハクが目を開けた。

「あっ、パパだ~」

元に戻ったハクに、

誰もがホッとしていると、

毘沙門天達が戻ってきた。

「ジュース~これはハクの」

三鬼が紙パックのジュースを渡した。

「リンゴ~あけて」

ハクがニコニコ笑いながら、

パックを向井に渡した。


今の出来事はハクには記憶がないようだ。


向井は紙パックにストローをさした。

「今のは何? 」

トリアが小声で向井に聞いた。

「冥王以外は見えていなかったようですけど、

ハクの体から黄金の龍神が現れました」

「えっ? 」

トリア達が驚きの声をあげた。

「じいじがね。ここにいるの」

ハクが胸を触ると、

お弁当から顔をあげて笑顔になった。

「ハクは感じるの? 」

シェデムが顔をのぞくと、

「ん? じいじとじいじとじいじ」

ハクは冥王と毘沙門天を指さした後、

胸の前で腕をぎゅっと抱えて言った。

その姿の愛らしさに大人達が笑う。

向井だけが笑いながら、

ハクがこれから直面することを考えていた。


龍神を抱えるのは体力も精神も奪われる。

俺ですら消耗するのだから、

今のような状態が続けば、

ハクの小さな体では、

安達君のように倒れることがあるかもしれない。


難しい顔をする向井を見て、

「考えすぎるのはよくありませんよ」

「えっ? 」

顔をあげると冥王と毘沙門天の笑顔が見えた。

ハッとして、

「あ………そうですね」

向井のそんな様子に、

「何? どうしたの? 」

安達が心配そうに言った。

「何でもないです。

つい、余計なことを考えてしまうんです。

でも、安達君が心配してくれるなら、

たまには考え事をするのもいいかな」

と安達を見て笑顔になった。

「なんだよ。それ~」

安達も安心したのか笑顔になった。
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