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第十八部
神様のイタズラ
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長い廊下を一人の老齢の男が歩いていた。
ピンと伸びた背筋に、
静かな足運び、
その動きから男の丁寧な生活が窺える。
彼は真っすぐに進み、
ある部屋の前に立つとノックをし、
相手の返事も待たずに入室した。
「なに? 何か用ですか? 」
男が空間の中の映像を見ながら、
振り向きもせずに言った。
「壁に穴が開いて、苦情が来ておりますが。
天空神様から呼び出しがあったのを、
無視されましたね」
「………あぁ、そうですね」
彼はハハハと笑うと振り向いた。
「だって、どうせ説教でしょう。
父上も暇ですよね。
まさか向井君があんな技を使えるなんて、
私は知りませんでしたから。
彼、いいですよね。
皆さんがそばに置きたがるのが分かりますね」
「で、あの壁はどうなさるおつもりで」
「えっ? まだあのまんま? 」
驚く男にバトは表情も変えずに頷いた。
「別に問題ないけど、空間の穴が開いたままなのは、
見た目にもよろしくないですよね」
「そうお思いでしたら、
早く塞がれた方がよろしいかと。
お父上からあなた様の次のお仕事を、
言い渡されましたよ」
「ええ~
まだ、彼との賭けは終わっていないでしょう? 」
「今日がお約束の日ですが」
「えっ? もう三日たった? 」
「経ちましたが? 」
「地球とここでは時間軸が違うからね~」
「お父上から冥界は、
龍之介様にお任せするようにと、
お達しがありました」
「は~私の負けか~
絶対に音を上げると思ったんですがね」
彼は面白くなさそうに言うと、
頭の後ろで手を組んだ。
「ご自分の弟君に、
イタズラが過ぎたのではないですか」
冥王と同じ顔をした男は笑うと、
座りながら椅子を動かした。
「爆撃の事も悪霊の事も、
地球はあなた様のおもちゃではございませんよ」
冥王の双子の兄はニヤニヤ笑うと、
「分かりました。次に私が担当するのは、
どの惑星でしょうか」
とバトを見た。
「そのお顔では反省はされていませんね」
「そんなことはありませんよ。
もうあの国は龍之介に任せます」
降参と言うように両手をあげる姿に、
バトは疑るような表情を見せただけで、
ため息をつき、
空間に新たな惑星の画像を浮かび上がらせた。
「へえ~これが新しくできた星かぁ~
地球に比べると美しくないね」
彼は笑うと、
のぞいていた地球の画像を消した。
「はい。これで私は地球から手を引きましたよ」
バトは信じていませんという顔で見ると、
「これ以上は私からは何も言いません」
とだけ言って退室した。
あの時どちらがあの島国を管理するのかでコインを投げ、
それを龍之介様が受け取り、
ワザと負けて冥界に下りて行った。
それをご存じなのか否か。
そういうところは、
あの二人はよく似てらっしゃる。
バトは含み笑いをしながら、
廊下を歩いて行った。
「ふん。龍之介が意図的に、
あの国を私から守りたかったことくらい、
分かっていますよ」
彼はバトが出て行った扉を見ながら、
新しい惑星を見ながら窃笑した。
「ふむ。ちょっとあの国と繫げてみましょうかね。
前の時はよくわからない空間を繫げましたが、
今回は新しく誕生した星ですから、
鬼が出るか蛇が出るか…
ちょっと楽しみですね~
向井君はどうするかな?
私からのプレゼントです」
彼は楽しそうににんまりすると、
ボタンを押した。
ピンと伸びた背筋に、
静かな足運び、
その動きから男の丁寧な生活が窺える。
彼は真っすぐに進み、
ある部屋の前に立つとノックをし、
相手の返事も待たずに入室した。
「なに? 何か用ですか? 」
男が空間の中の映像を見ながら、
振り向きもせずに言った。
「壁に穴が開いて、苦情が来ておりますが。
天空神様から呼び出しがあったのを、
無視されましたね」
「………あぁ、そうですね」
彼はハハハと笑うと振り向いた。
「だって、どうせ説教でしょう。
父上も暇ですよね。
まさか向井君があんな技を使えるなんて、
私は知りませんでしたから。
彼、いいですよね。
皆さんがそばに置きたがるのが分かりますね」
「で、あの壁はどうなさるおつもりで」
「えっ? まだあのまんま? 」
驚く男にバトは表情も変えずに頷いた。
「別に問題ないけど、空間の穴が開いたままなのは、
見た目にもよろしくないですよね」
「そうお思いでしたら、
早く塞がれた方がよろしいかと。
お父上からあなた様の次のお仕事を、
言い渡されましたよ」
「ええ~
まだ、彼との賭けは終わっていないでしょう? 」
「今日がお約束の日ですが」
「えっ? もう三日たった? 」
「経ちましたが? 」
「地球とここでは時間軸が違うからね~」
「お父上から冥界は、
龍之介様にお任せするようにと、
お達しがありました」
「は~私の負けか~
絶対に音を上げると思ったんですがね」
彼は面白くなさそうに言うと、
頭の後ろで手を組んだ。
「ご自分の弟君に、
イタズラが過ぎたのではないですか」
冥王と同じ顔をした男は笑うと、
座りながら椅子を動かした。
「爆撃の事も悪霊の事も、
地球はあなた様のおもちゃではございませんよ」
冥王の双子の兄はニヤニヤ笑うと、
「分かりました。次に私が担当するのは、
どの惑星でしょうか」
とバトを見た。
「そのお顔では反省はされていませんね」
「そんなことはありませんよ。
もうあの国は龍之介に任せます」
降参と言うように両手をあげる姿に、
バトは疑るような表情を見せただけで、
ため息をつき、
空間に新たな惑星の画像を浮かび上がらせた。
「へえ~これが新しくできた星かぁ~
地球に比べると美しくないね」
彼は笑うと、
のぞいていた地球の画像を消した。
「はい。これで私は地球から手を引きましたよ」
バトは信じていませんという顔で見ると、
「これ以上は私からは何も言いません」
とだけ言って退室した。
あの時どちらがあの島国を管理するのかでコインを投げ、
それを龍之介様が受け取り、
ワザと負けて冥界に下りて行った。
それをご存じなのか否か。
そういうところは、
あの二人はよく似てらっしゃる。
バトは含み笑いをしながら、
廊下を歩いて行った。
「ふん。龍之介が意図的に、
あの国を私から守りたかったことくらい、
分かっていますよ」
彼はバトが出て行った扉を見ながら、
新しい惑星を見ながら窃笑した。
「ふむ。ちょっとあの国と繫げてみましょうかね。
前の時はよくわからない空間を繫げましたが、
今回は新しく誕生した星ですから、
鬼が出るか蛇が出るか…
ちょっと楽しみですね~
向井君はどうするかな?
私からのプレゼントです」
彼は楽しそうににんまりすると、
ボタンを押した。
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