『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十七部

北の動物園

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北支部に行くと入り口に、

キャトルとフェムティの姿があった。

チビ達が嬉しそうに走って行く。

「源じいも一緒なんだ」

キャトルがチビ達を抱き止めながら、

笑顔で挨拶した。

「ちびちゃんたちに言われて、

私も気になりましてね」

源じいが笑ってハクを見た。

手を繋いで楽しそうなハクに、

「可愛いパーカーね」

フェムティがにっこり笑った。

「あのね、おそろいなの」

三鬼が色違いの恐竜のウェアを見せた。

「ホントだ。仲良しさんね」

「わらわとこんもおそろいじゃ」

呉葉が色違いのデニムワンピにスパッツ姿を、

フェムティとキャトルに見せた。

「うんうん。可愛い」

二人は笑うと、

「大変だね」

キャトルが小声で向井に言った。

「うちには大きな子供もいるから、

ちびちゃんの方は可愛いもんです」

「早く行こうぜ~」

騒ぐ牧野に向井達が笑った。



下界に下りると、

黒地の方も落ち着いていて、

暗い世界なのは変わらないが、

皆、通常に動いていた。

捨て地にいるので中の状態は分からないが、

中央のようなパニックは起きていないようだ。

「中央から黒地に人が流れてきたのをのぞけば、

通常通りだね」

キャトルが言った。

北も捨て地に移住するものが増えており、

中心地の人口も日々変化していた。

「どっちにしても人口調整で、

この国は長寿大国からも姿を消したし、

ウィルスとワクチンの過剰接種で、

人口が増えない。

国が無くなったら私達はどうなるのかしら」

フェムティも眉をひそめて黒地を見つめた。

「俺達は変わりませんよ。

冥界で下界の様子を見るだけです。

国が沈没しても、

冥界は存在するそうですから」

「そうなの? 」

向井の話にキャトルが驚きの表情を見せた。

「らしいですよ。

ただ、魂の再生はどうなるのか、

気になるのはそのあたりですね。

特に特例は人間ですから」

向井はそういって笑うと、

「まぁ、なるようにしかなりませんよ」

と言って二人を見た。

「そうか………そうだよな」

「そうですよ。だからのんびりできるうちに、

楽しんでください」

向井が笑った。

「はやく~」

三鬼が走ってくると向井の手を引っ張った。

「はいはい」

向井が歩き出す姿を見ながら、

「なんか向井さんに言われると、

落ち着く………」

フェムティが笑顔になった。


3DZOOは白の捨て地にあり、

電力の問題もあり、

開園日が決められていた。

「ちょうど今日は開いてて良かったよ。

捨て地は今中央から隔離されてるから、

不便が出るのは仕方がないけど」

「でもその分、自由だからゆったりできるけどね」

キャトルとフェムティが周りを見ながら言った。


配達で怒る者もいない。

人とぶつかって怒鳴る者もいない。

スマートゴーグルを見ながら歩く者もいない。

あおり運転もない。

確かに何かあれば消えてしまうのだから、

不満の多い人間は入ってこられないことも、

理由の一つなのだろう。
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