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第十六部
気になる星座
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その声に顔をあげると、
「ん~よだかの星はあるのか気になったの」
「宮沢賢治が好きなんですか? 」
「ん~俺みたいだから………」
安達は俯いて星座を見たまま言った。
向井はそんな安達の様子に隣に座ると、
「よだかの星はチコの星じゃないか、
とも言われているんですよ」
と本を捲りながら言った。
「これにも載っているんじゃないかな………
あった。これです」
向井がページを見つけ指をさした。
「なんか………怖い感じだね」
顔を顰める安達に向井が笑った。
「もっときれいだと思った? 」
「ん~よだかの星なら………
綺麗じゃなくても変じゃないけど………」
安達は自分とよだかを重ねていたのだろう。
向井は微笑むと、
「チコの星はね。
超新星爆発だって言われているんです。
自分で光り輝く恒星は、
寿命が来ると最後の命を爆発させるんです。
俺はね、人間の魂も同じだと思うんです。
今ある安達君の魂も、
ちゃんと自分で輝かせているんですよ。
そしてそれは寿命が来るまで、
大事に育てなくてはいけません。
まあ俺達は、ゴースト人間ですけどね」
と話した。
「………だったらなんでよだかは自殺したの? 」
安達が向井を見た。
「安達君は自殺だと思う? 」
「だって………星になりたくて爆発したんだもん。
皆からいじめられて………
醜いって………」
「そうですね。でも、
よだかじゃないからよだかの気持ちは分かりません。
鷹に殺すと言われた時に、
そのまま殺されてもよかったのに、
彼は殺されなかったでしょ。
よだかの中にある死は何を意味しているのか、
それはよだかにしかわかりません。
自殺かもしれないし、
純粋に星になりたかったのかもしれませんよ」
安達はしばらく考え込んでいたが、
「俺も死にたいって思ったことある。
でも………死のうとは思わなかった」
とぽつりと言った。
「それはよかった。
死んでもこうやって安達君と出会えて、
俺は幸せですよ」
向井が笑顔で安達を見た。
「俺も嬉しい」
安達も笑顔になるのを見て、
「童話が好きなら、
もっと楽しい童話を読んでみたらどうですか?
そうだ。安達君の好きなカヌレを買ってきましたよ。
牧野君はもう食べてます」
「ええ~」
安達はそういうと部屋を駆けだして行った。
向井も立ち上がると本を棚に戻し、
「源じいも食べませんか? 」
と声をかけた。
「向井君は教師に向いていたんじゃないですかね」
源じいもカウチから起き上がると、
本を閉じた。
「まあ、向いているからと、
教師になるわけではないですけどね」
源じいが笑った。
「賢治の童話は、
根底には不条理があります」
「よだかのような尊い考えは持てませんけど、
世界は醜さで溢れていて、
自分もそんな人間の一人だと、
再認識はできますね」
源じいの言葉に向井が言い、
「向井君は面白いね」
二人は笑いながら休憩室に向かった。
「ん~よだかの星はあるのか気になったの」
「宮沢賢治が好きなんですか? 」
「ん~俺みたいだから………」
安達は俯いて星座を見たまま言った。
向井はそんな安達の様子に隣に座ると、
「よだかの星はチコの星じゃないか、
とも言われているんですよ」
と本を捲りながら言った。
「これにも載っているんじゃないかな………
あった。これです」
向井がページを見つけ指をさした。
「なんか………怖い感じだね」
顔を顰める安達に向井が笑った。
「もっときれいだと思った? 」
「ん~よだかの星なら………
綺麗じゃなくても変じゃないけど………」
安達は自分とよだかを重ねていたのだろう。
向井は微笑むと、
「チコの星はね。
超新星爆発だって言われているんです。
自分で光り輝く恒星は、
寿命が来ると最後の命を爆発させるんです。
俺はね、人間の魂も同じだと思うんです。
今ある安達君の魂も、
ちゃんと自分で輝かせているんですよ。
そしてそれは寿命が来るまで、
大事に育てなくてはいけません。
まあ俺達は、ゴースト人間ですけどね」
と話した。
「………だったらなんでよだかは自殺したの? 」
安達が向井を見た。
「安達君は自殺だと思う? 」
「だって………星になりたくて爆発したんだもん。
皆からいじめられて………
醜いって………」
「そうですね。でも、
よだかじゃないからよだかの気持ちは分かりません。
鷹に殺すと言われた時に、
そのまま殺されてもよかったのに、
彼は殺されなかったでしょ。
よだかの中にある死は何を意味しているのか、
それはよだかにしかわかりません。
自殺かもしれないし、
純粋に星になりたかったのかもしれませんよ」
安達はしばらく考え込んでいたが、
「俺も死にたいって思ったことある。
でも………死のうとは思わなかった」
とぽつりと言った。
「それはよかった。
死んでもこうやって安達君と出会えて、
俺は幸せですよ」
向井が笑顔で安達を見た。
「俺も嬉しい」
安達も笑顔になるのを見て、
「童話が好きなら、
もっと楽しい童話を読んでみたらどうですか?
そうだ。安達君の好きなカヌレを買ってきましたよ。
牧野君はもう食べてます」
「ええ~」
安達はそういうと部屋を駆けだして行った。
向井も立ち上がると本を棚に戻し、
「源じいも食べませんか? 」
と声をかけた。
「向井君は教師に向いていたんじゃないですかね」
源じいもカウチから起き上がると、
本を閉じた。
「まあ、向いているからと、
教師になるわけではないですけどね」
源じいが笑った。
「賢治の童話は、
根底には不条理があります」
「よだかのような尊い考えは持てませんけど、
世界は醜さで溢れていて、
自分もそんな人間の一人だと、
再認識はできますね」
源じいの言葉に向井が言い、
「向井君は面白いね」
二人は笑いながら休憩室に向かった。
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