『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十六部

元凶は人食いビル

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仕事を終えて冥界に戻ると、

死神課からセイが飛んできた。

「下界どうだった? さっき北と西から連絡があって、

黒地の揺れは一応鎮まったって」

「元凶は例の人食いビルだったんで、

できる限り除去して結界ははりましたけど、

神祠が荒らされたままで、

更に新たな神祠を破壊したらしく、

この国を守っているラインが、

次々と崩されていく状態なので、

今の段階では何とも言えないですね」

向井が大きく息をついた。

「もう俺ヤダよ。あんなの。

絶対殺される。俺が戻ってこれなかったら、

悪霊に食べられたと思って………」

牧野は疲れきった様子で休憩室に向かった。

その様子をセイが見ながら、

「牧野君、大丈夫? 」

と心配そうに言った。

「気にしなくても大丈夫だよ。

今日のはちょっと手こずったから、

さすがに体力が消耗したんだと思う。

でもおやつ買って帰ってきたんで、

すぐに元気になるよ」

エナトも笑うと、

箱に入ったカヌレの袋を持ち上げた。

「えっ? おやつ? 」

アンも奥から顔を出すと、

セイと顔を見合わせ笑った。

「みんなが大好きなフレーバーを選んで、

買ってきました。

セイくんが好きな黒糖きな粉もありますよ」

「さすが向井さん~」

セイは嬉しそうな表情で袋を見ると、

皆で休憩室に向かった。



廊下から賑やかな声が聞こえてきた。

牧野の楽しそうなお喋りに、

「ねっ? もう機嫌が戻ってるでしょう? 」

向井が笑いながら言った。

部屋に入ると、

「あれ? お二人もいたんですか? 」

毘沙門天と赤姫の姿に向井が驚いた。

「この前のおもちゃで遊んでたんですよ」

毘沙門天が振り返った。

キッズルームにはチビと毘沙門天、赤姫、

妖鬼、弥生、早紀がおもちゃを広げて楽しそうだ。

「でな~ゼリーはむらさきのキモノにしたんじゃ」

「うんうん、可愛いの~」

呉葉の人形を見ながら赤姫が笑う。

「おようふくもふえたの。

ようきにおおききなタンスをつくってもらった」

こんも楽しそうに説明している。

三鬼とハクは妖鬼に何かを説明していた。

「あのね~せんろがほしい」

どうやらこの前の連結する電車に付属品が欲しいようだ。

この部屋の電車に乗って遊んでいるので、

電車には線路がなければダメなのだろう。

向井はそんな部屋の和やかな様子に微笑んだ。

「下界から戻ってきたからか、冥界は平和だよね」

エナトも笑うと、

「おやつ買ってきたから食べよう」

とみんなに声をかけた。

「お茶を用意するので、手を洗って来てください」

向井の声にチビ達はおもちゃを片付け始めた。

その様子を向井達が笑いながら見てると、

片付け終わったチビ達に引きずられるように、

毘沙門天と赤姫も洗面所に連れて行かれた。

「最近は毘沙達も手を洗いに行くもんね」

妖鬼も笑うとキッチンにやってきた。

「あの電車? よく出来てるよね。

お人形も乗せられるから、

この前新しく派遣登録した、

ぬいぐるみ作家の久保田さんだっけ? 」

妖鬼が手を洗いながら向井を見た。

「その彼女に絵本持っていって、

作ってくださいってお願いしてたよ」

妖鬼が笑いながら話した。

「それじゃ順番待ちね」

アンがカヌレを皿に並べながら言う。

「そうなの? 」

坂下がカップを用意しながら聞いた。

「呉葉とこんが、

ペンギンとクマを作ってくださいって、

弥生ちゃんと一緒にお願いにいってたから」

「あの木製作家さんが冥界に来たら、

うちの工房で働いてほしいなぁ~」

妖鬼が笑いながら話すのを、

「シャレにならないですよ」

向井が苦笑した。
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