『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十六部

パニック

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「あんたらが来た後は、中央の気が変わるんで、

変わった死神もいるもんだと思っていたんだが」

「俺達は死神じゃなくて天使なの。

人間の為に悪霊を退治しに来てる天使様」

「ハハハ。天使とは可愛いもんだと思っていたが。

まぁ、人間が勝手に想像したものだからな」

老人はそういうと、

「やはり元凶はこのビルだったんだね。

国のやる事にはいつも裏がある。

ここも開発予定地になった後に、

神の祠を壊していたんで注意したら、

国の決定に逆らうなら迷惑防止法で逮捕だと言われて、

捨て地に移住した」

そういってハハハと笑った。

「私も既に寿命を越えて生きてるから、

そろそろお迎えが来てもいい頃なんだがね」

「そんなの関係ねえよ。

捨て地にだって、

七十、八十過ぎてもぴんぴんしてるもんは、

沢山いるぞ。

じいさんは幾つだよ」

「ん? 七十七だな」

「では、喜寿のお祝いですね」

向井が笑顔で話すと、

「まぁそうだな。でもな………」

老人は寂しそうに笑った。

「あの大災害で、

女房も娘も孫も亡くして、

こんなじいさん一人残されて、

死んで天国に行けるなら、

早く行きたいね~

あんたらは天国から来たのか? 」

「天国なんかねえぞ」

牧野が老人を見た。

「えっ? ないのか? あんたらは天使なんだろう? 」

「死んだ先はあの世。ただそれだけさ。

しかも毎日これだけ死人が出てるから、

上も順番待ちで並ぶよ」

「はあ~そりゃ、簡単に死ぬこともできんな」

老人が可笑しそうに笑った。

と同時に、地震が起こった。

向井達も踏ん張りながら体を支える。

「おっと、こりゃ中の霊が暴れてるようだな」

老人がビルの中を見つめた。

その姿を見て、

「ちょっとお聞きしますけど、

このビルか………

あるいは近辺で気になったことはありますか? 」

向井が老人を振り返った。

「そうだな。こんなご時世だからな。

自殺者が何人もこのビルに入って行くのを見たな。

あとは………」

老人が思い出しながら話しだした。

「この裏の神を祀っていた場所を壊してたな。

なんとしてもこのビルを解体して、

リゾート地にしたいそうだ。

一応、神主が来てたが、あんな形だけの儀式じゃ、

余計神の怒りをかうというもんだろうよ」

老人が笑う。

「じいさんも危ないから、

捨て地に帰んな」

再び揺れ始めた地面に牧野が言った。

「どこの捨て地なんですか? 」

坂下が聞くと、

「近いよ。赤の捨て地だからね。

さて、天使の言う事を聞いて帰るとしますかね」

老人は笑顔で手を振るとゆっくり歩き出した。

その後姿に向井は仙木を取り出し、

息を吹くと老人の背中に投げた。

仙木は天狐の姿になると、

老人を守るように付いていった。

「あれで家まで無事に戻れるでしょう」

向井が微笑んだ。

「さて、牧野君には頑張ってもらわないとね」

エナトが牧野の背中を軽く叩いた。

「今の話を聞くとさ。自殺者も飲み込まれてるんだよね。

俺………帰りたい………」

ため息をつく牧野を引っ張って、

彼らはビルの中に姿を消した。
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