541 / 631
第十五部
駄菓子屋のご夫婦
しおりを挟む
「これ、人気なんですよ」
「俺、食べたことない」
安達が真剣に駄菓子を見ながら、
「これはカステラ? 」
と首を傾げた。
「棒に付いたカステラで、
美味しいですよ」
「へえ~なら俺も食べる」
安達と牧野も楽しそうに選びながら、
カゴに入れていった。
「あれ~」
ハクが指さして向井に言った。
「ん? これがいいの? 」
向井はハクを見るとおもちゃを手に取った。
「それ何? 」
安達も不思議そうに見た。
「吹き戻しですよ。
吹くとこのロールの部分が伸びて、
そのあとまた元に戻るおもちゃです」
向井が説明するのを見て、
「最近はこういう、
昔ながらのおもちゃで遊ぶ子も、
少ないですからね」
店主が話した。
「この子達には、
ちょうどいいおもちゃです」
向井は笑うと、
「ハクが気になっているようなので、
これと輪投げを買っていこうか」
とハクを見た。
「駄菓子屋さんは長いんですか? 」
向井が聞くと、
「中央の下区で祖父の代からやっていたんですけど、
駄菓子を作っている工場も少なくなって、
もう私の代で終わりですね」
「ねえ、このカードは何? 」
安達が向井に聞いた。
「ん? あぁ、面子ですね」
「めんこ? 」
「お前は面子も知らないのか? 」
牧野があきれたように言った。
「このカードを地面に並べて、
攻撃と守備に分かれて、上から角をぶつけて、
地面のカードをひっくり返すんだよ」
「へえ~」
そんな二人の姿に店主夫婦は笑うと、
「私らはね。ここに来ると決めた時、
最初は死ぬんじゃないかって思ってたんですよ」
「どうして? 」
安達が顔をあげて聞いた。
「捨て地の真実の壁は、世界中で話題ですからね」
「でも、悪人じゃなきゃ大丈夫だぞ」
牧野も店主を見た。
「ははは。確かに何も悪いことはしてないんですけど、
それでも後ろ暗さを感じることもあるんですよ」
「分かります」
店主の言葉に向井も笑顔になった。
「ここにきて本当によかったです」
奥さんも笑うと、
「先祖からの土地を、
二束三文で買いたたかれて、
区の住宅課に相談に行ったら、
外国人居住区を紹介されて参りました」
とため息をついた。
「安い値段で年寄りに貸してくれる家なんてないですし、
外国人居住区だって私らが借りるとなると、
家賃が高くて無理なんですよ。
だったら自分達で探してくれって言われて」
主人もハハハと笑った。
「それは御苦労されましたね」
向井が言う。
「でもね。捨て地に来て区役所に相談にいったら、
すぐに空き家を紹介してくれて、
それでまた駄菓子屋を始めたんです」
「ボクね~だがしすき~」
三鬼がやってくると笑顔で見上げた。
「こういう子供が多くて私らも嬉しいです。
下区では子供にも若いもんにも、
駄菓子屋は邪魔だって言われて。
ここにきて喜んでもらえて、
続けて良かったです」
店主が笑顔で三鬼の頭を撫で、
「それにね、ここだけの話、
下区より売り上げもいいんですよ」
と声をたてて笑った。
「俺、食べたことない」
安達が真剣に駄菓子を見ながら、
「これはカステラ? 」
と首を傾げた。
「棒に付いたカステラで、
美味しいですよ」
「へえ~なら俺も食べる」
安達と牧野も楽しそうに選びながら、
カゴに入れていった。
「あれ~」
ハクが指さして向井に言った。
「ん? これがいいの? 」
向井はハクを見るとおもちゃを手に取った。
「それ何? 」
安達も不思議そうに見た。
「吹き戻しですよ。
吹くとこのロールの部分が伸びて、
そのあとまた元に戻るおもちゃです」
向井が説明するのを見て、
「最近はこういう、
昔ながらのおもちゃで遊ぶ子も、
少ないですからね」
店主が話した。
「この子達には、
ちょうどいいおもちゃです」
向井は笑うと、
「ハクが気になっているようなので、
これと輪投げを買っていこうか」
とハクを見た。
「駄菓子屋さんは長いんですか? 」
向井が聞くと、
「中央の下区で祖父の代からやっていたんですけど、
駄菓子を作っている工場も少なくなって、
もう私の代で終わりですね」
「ねえ、このカードは何? 」
安達が向井に聞いた。
「ん? あぁ、面子ですね」
「めんこ? 」
「お前は面子も知らないのか? 」
牧野があきれたように言った。
「このカードを地面に並べて、
攻撃と守備に分かれて、上から角をぶつけて、
地面のカードをひっくり返すんだよ」
「へえ~」
そんな二人の姿に店主夫婦は笑うと、
「私らはね。ここに来ると決めた時、
最初は死ぬんじゃないかって思ってたんですよ」
「どうして? 」
安達が顔をあげて聞いた。
「捨て地の真実の壁は、世界中で話題ですからね」
「でも、悪人じゃなきゃ大丈夫だぞ」
牧野も店主を見た。
「ははは。確かに何も悪いことはしてないんですけど、
それでも後ろ暗さを感じることもあるんですよ」
「分かります」
店主の言葉に向井も笑顔になった。
「ここにきて本当によかったです」
奥さんも笑うと、
「先祖からの土地を、
二束三文で買いたたかれて、
区の住宅課に相談に行ったら、
外国人居住区を紹介されて参りました」
とため息をついた。
「安い値段で年寄りに貸してくれる家なんてないですし、
外国人居住区だって私らが借りるとなると、
家賃が高くて無理なんですよ。
だったら自分達で探してくれって言われて」
主人もハハハと笑った。
「それは御苦労されましたね」
向井が言う。
「でもね。捨て地に来て区役所に相談にいったら、
すぐに空き家を紹介してくれて、
それでまた駄菓子屋を始めたんです」
「ボクね~だがしすき~」
三鬼がやってくると笑顔で見上げた。
「こういう子供が多くて私らも嬉しいです。
下区では子供にも若いもんにも、
駄菓子屋は邪魔だって言われて。
ここにきて喜んでもらえて、
続けて良かったです」
店主が笑顔で三鬼の頭を撫で、
「それにね、ここだけの話、
下区より売り上げもいいんですよ」
と声をたてて笑った。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる