『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十五部

安達の気になる絵本

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「分からなくても仕方がないわね。

今この国には動物園がないから」

トリアがやってくると言った。


災害国なので、この百年余りで、

徐々に動物園が閉鎖されていた。

中央に大きな国立動物園があるのを除けば、

アニマルウェルフェアの活動が叫ばれ、

多くの意味で動物と人の在り方が変化していた。


「どうぶつはなくの? 」

三鬼が不思議そうに聞く。

「動物も鳴いてお喋りするんですよ」

向井が笑顔で三鬼を見た。

「子供が本と触れ合える場所が、

少なくなってるから、

ここはいいわね。

本は触れることで五感が養われる。

今は電子書籍が多いから、

こういう絵本は紙と電子のいい所が合わさって、

子供にはいい刺激ね」

トリアもこんと呉葉が夢中になって、

動物の声を聴く姿を見て笑顔になった。

向井も笑うと、

ふと安達を見た。

何やら真剣に絵本を見ている姿があった。

近づくと星座の本を見ていた。

「天文に興味があるんですか? 」

向井が尋ねると、

「ん………俺が見たい星がないの」

「見たい星? 」

「そう、あのね………」

安達がそう言いかけたところで、

牧野が呼びに来た。

「食事来たよ~」

「俺、お腹ペコペコ~」

安達は笑うと絵本を本棚にしまい、

テーブルに戻って行った。

向井は安達が言いかけた言葉が気になったが、

結局聞きそびれてしまった。


――――――――


食事の後にチビ達が気に入った絵本を何冊か購入し、

今度は坂下の喫茶店がある捨て地に向かった。

坂を上りながら、

弥生が驚きながら変わりゆく景色を見ていた。

坂の途中の空き家にも人が住み始め、

心地よい空が広がっている。

途中にコインランドリーと、

和明が経営する和雑貨屋があり、

そこを越えると駄菓子屋だ。

チビ達は店が見えると走り出した。

ハクはまだ三鬼達と一緒に行動するには、

身体が成長していないので、

向井に抱っこされたまま、

ウトウトしていた。

「こんにちは~」

こんがお店の中に入って行った。

「あら、いらっしゃい。

また来てくれたの? 嬉しいわ」

女性が店の奥から出てきた。

ここは五十代の夫婦がお店をやっている。

中央に住んでいたが、

住宅が開発指定区域になり、

引っ越しを余儀なくされここに来たという。

「こんにちは」

トリア達も店に入ると、

既にチビ達がカゴを手にお菓子を選んでいた。

「いい? 一人五個までよ」

弥生が注意すると、

「わかってる」

こんが真剣に駄菓子を見ながら言った。

「今日は大勢で来てくれて」

奥から主人も出てくると笑顔になった。

「オヤジがえっと、これだっけ? 」

牧野が新田を振り返って聞いた。

「そうそれ」

「これが食べたいから買ってこいって言うんで、

皆で来たんだ」

牧野が笑顔で店主に言うと、

カゴにいれた。
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