540 / 631
第十五部
安達の気になる絵本
しおりを挟む
「分からなくても仕方がないわね。
今この国には動物園がないから」
トリアがやってくると言った。
災害国なので、この百年余りで、
徐々に動物園が閉鎖されていた。
中央に大きな国立動物園があるのを除けば、
アニマルウェルフェアの活動が叫ばれ、
多くの意味で動物と人の在り方が変化していた。
「どうぶつはなくの? 」
三鬼が不思議そうに聞く。
「動物も鳴いてお喋りするんですよ」
向井が笑顔で三鬼を見た。
「子供が本と触れ合える場所が、
少なくなってるから、
ここはいいわね。
本は触れることで五感が養われる。
今は電子書籍が多いから、
こういう絵本は紙と電子のいい所が合わさって、
子供にはいい刺激ね」
トリアもこんと呉葉が夢中になって、
動物の声を聴く姿を見て笑顔になった。
向井も笑うと、
ふと安達を見た。
何やら真剣に絵本を見ている姿があった。
近づくと星座の本を見ていた。
「天文に興味があるんですか? 」
向井が尋ねると、
「ん………俺が見たい星がないの」
「見たい星? 」
「そう、あのね………」
安達がそう言いかけたところで、
牧野が呼びに来た。
「食事来たよ~」
「俺、お腹ペコペコ~」
安達は笑うと絵本を本棚にしまい、
テーブルに戻って行った。
向井は安達が言いかけた言葉が気になったが、
結局聞きそびれてしまった。
――――――――
食事の後にチビ達が気に入った絵本を何冊か購入し、
今度は坂下の喫茶店がある捨て地に向かった。
坂を上りながら、
弥生が驚きながら変わりゆく景色を見ていた。
坂の途中の空き家にも人が住み始め、
心地よい空が広がっている。
途中にコインランドリーと、
和明が経営する和雑貨屋があり、
そこを越えると駄菓子屋だ。
チビ達は店が見えると走り出した。
ハクはまだ三鬼達と一緒に行動するには、
身体が成長していないので、
向井に抱っこされたまま、
ウトウトしていた。
「こんにちは~」
こんがお店の中に入って行った。
「あら、いらっしゃい。
また来てくれたの? 嬉しいわ」
女性が店の奥から出てきた。
ここは五十代の夫婦がお店をやっている。
中央に住んでいたが、
住宅が開発指定区域になり、
引っ越しを余儀なくされここに来たという。
「こんにちは」
トリア達も店に入ると、
既にチビ達がカゴを手にお菓子を選んでいた。
「いい? 一人五個までよ」
弥生が注意すると、
「わかってる」
こんが真剣に駄菓子を見ながら言った。
「今日は大勢で来てくれて」
奥から主人も出てくると笑顔になった。
「オヤジがえっと、これだっけ? 」
牧野が新田を振り返って聞いた。
「そうそれ」
「これが食べたいから買ってこいって言うんで、
皆で来たんだ」
牧野が笑顔で店主に言うと、
カゴにいれた。
今この国には動物園がないから」
トリアがやってくると言った。
災害国なので、この百年余りで、
徐々に動物園が閉鎖されていた。
中央に大きな国立動物園があるのを除けば、
アニマルウェルフェアの活動が叫ばれ、
多くの意味で動物と人の在り方が変化していた。
「どうぶつはなくの? 」
三鬼が不思議そうに聞く。
「動物も鳴いてお喋りするんですよ」
向井が笑顔で三鬼を見た。
「子供が本と触れ合える場所が、
少なくなってるから、
ここはいいわね。
本は触れることで五感が養われる。
今は電子書籍が多いから、
こういう絵本は紙と電子のいい所が合わさって、
子供にはいい刺激ね」
トリアもこんと呉葉が夢中になって、
動物の声を聴く姿を見て笑顔になった。
向井も笑うと、
ふと安達を見た。
何やら真剣に絵本を見ている姿があった。
近づくと星座の本を見ていた。
「天文に興味があるんですか? 」
向井が尋ねると、
「ん………俺が見たい星がないの」
「見たい星? 」
「そう、あのね………」
安達がそう言いかけたところで、
牧野が呼びに来た。
「食事来たよ~」
「俺、お腹ペコペコ~」
安達は笑うと絵本を本棚にしまい、
テーブルに戻って行った。
向井は安達が言いかけた言葉が気になったが、
結局聞きそびれてしまった。
――――――――
食事の後にチビ達が気に入った絵本を何冊か購入し、
今度は坂下の喫茶店がある捨て地に向かった。
坂を上りながら、
弥生が驚きながら変わりゆく景色を見ていた。
坂の途中の空き家にも人が住み始め、
心地よい空が広がっている。
途中にコインランドリーと、
和明が経営する和雑貨屋があり、
そこを越えると駄菓子屋だ。
チビ達は店が見えると走り出した。
ハクはまだ三鬼達と一緒に行動するには、
身体が成長していないので、
向井に抱っこされたまま、
ウトウトしていた。
「こんにちは~」
こんがお店の中に入って行った。
「あら、いらっしゃい。
また来てくれたの? 嬉しいわ」
女性が店の奥から出てきた。
ここは五十代の夫婦がお店をやっている。
中央に住んでいたが、
住宅が開発指定区域になり、
引っ越しを余儀なくされここに来たという。
「こんにちは」
トリア達も店に入ると、
既にチビ達がカゴを手にお菓子を選んでいた。
「いい? 一人五個までよ」
弥生が注意すると、
「わかってる」
こんが真剣に駄菓子を見ながら言った。
「今日は大勢で来てくれて」
奥から主人も出てくると笑顔になった。
「オヤジがえっと、これだっけ? 」
牧野が新田を振り返って聞いた。
「そうそれ」
「これが食べたいから買ってこいって言うんで、
皆で来たんだ」
牧野が笑顔で店主に言うと、
カゴにいれた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる