『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十五部

魂の蛍

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「多くの霊が毎日上がってくるでしょう? 

冥王はちゃんと見てるんですよ。

魂の灯は美しいのに、それを見られる立場にあって、

見ないのはもったいないと思うんですけどね」

「でも、花の咲かない木しかないよ」

安達も不思議そうに聞いた。

「冥界は天上界とは違いますからね。

でもね、湧き水の所まで行くと、

冥界の蛍がいるんですよ」

「ホタル? 」

二人が興味を持ったのか、浴槽から身を乗り出した。

「下界でもホタルの寿命は短いでしょ。

光を放って飛べるのは七日です。

初七日は魂が三途の川に来る時間です。

その時に冥界の蛍も輝き、消えていくんです」

「いつでも見られるの? 」

「見られますよ。人は毎日亡くなってます。

その供養の光ですから、

弔う気持ちを持って湧き水の場所まで、

お散歩してみてください」

向井は二人を見て微笑んだ。

その時、どこからか泣き声が聞こえ、

浴室の扉が開いた。

「ほら、みんないるだろ? 」

カランが泣いているハクを抱いて、

立っていた。

「どうしたんですか? 」

向井が聞くと、ハクがしゃくりあげながら、

皆の顔を見た。

「目が覚めたらみんないなくてさ、

泣き出したんだよ」

カランが笑った。

「ハク、タオルケット? 裸じゃん」

牧野がくるまれた姿のハクを見て驚いた。

「ちょっと、おねしょね」

カランが笑った。

「ソファー大丈夫でした? 」

向井が聞くと、

「防水シートの上に毛布を置いて寝かせてたから」

カランが説明した。

「ハク、こっち来な。体洗ってやるから」

牧野が浴槽から出て、シャワーを出した。

カランが床に下すと、ハクが牧野の所に歩いて行った。

「じゃあ、俺も風呂入ろう」

カランも脱衣所に行って準備を始めた。

牧野がハクと笑いながら体を洗っている姿に、

「ああいうところは、

牧野君には敵いませんね」

向井が湯につかりながら、二人を眺めた。

「裏表がないから、

案外人間の時は生きづらかったかもしれないですね」

向井の話に、

「向井さんだっていつも変わらないでしょ? 」

キャトルが不思議そうに言う。

「そう見えますか。ふふふ」

意味深に笑う姿に、

「そうやって牧野で遊んでるわけだ」

倉田が苦笑いしながら向井を見た。

「人聞きが悪いですね。

あっ、でももう、

人間ではないですからね」

向井も楽しそうに笑った。

笑い声が聞こえたのか、

「ボクもはいる」

ハクが歩いてきて言った。

「はい、どうぞ」

向井は抱き上げると湯に入れた。

「はぁ~」

ため息をつくハクに大人達が笑った。

「気持ちいいですか? 」

向井も笑いながら言った。
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