398 / 631
第十一部
陣取り合戦
しおりを挟む
「分かった」
四人は車が行きかう交差点をすり抜けていくと、
中央で足を止め、
同時に動き出した。
結界の中では今までになく、
大きな霊の悲鳴が響いた。
「うっ」
牧野が苦痛に顔をゆがませると、
身守り袋が輝き、
体を包んだ。
「牧野君! 今のうちに札を投げて! 」
エナトが叫び、
悪霊の中心に指から渦を放ち、
動きを止めた。
牧野は空中に駆け上がると、
ドーム全体に札を投げつけていった。
多くの霊の声が頭の中に響き渡る。
断末魔のような叫びに、
四人は耐えられずにうずくまると、
ドームにひびが入った。
佐久間が踏ん張り結界を持たせるため、
霊銃を放つ。
その横でエナトも指を回転させながら、
渦を広げていった。
牧野が再び札に息を吹きかけ飛び上がると、
その中心にはり付けた。
バリバリバリ~~~~~~~ッ!!
大きな音とともに悪霊が吸い込まれていった。
札は燃え上がると、冥界の空間へと消えていく。
黒い空間に少しの青空が見え始めた。
「こんなに力を振り絞ったのに、
まだ、悪霊が消滅しない………?
嘘だろ………」
牧野が歩道にしゃがみこんだ。
「いやいや、十分だよ。
ここまで空が見えるのは久しぶりなんじゃないかな?
見てみな」
オクトが時間を動かし、人の流れを牧野に見せた。
街を歩いていた者達が立ち止まり、
空を見上げた。
「青空ってあんな色だったっけ? 」
「そうそう、こんな色。
私この前捨て地に行ったけど、
あそこは青空が広がってて、
こことは景色が全然違った」
「なんでここだけ、どんよりしてるんだろう………」
久しぶりの青の色に、
誰もが立ち止まって空を見つめていた。
「さっきより呼吸も楽………」
牧野が軽く深呼吸する。
「これっていつまで持つ? 」
横にいるオクトに聞いた。
「どうだろう。中央は真っ黒だからね」
「だけど、悪だくみしたいものにとっては、
この状況は都合がいいのかもしれないね」
エナトが笑いながらやってきた。
「何千年とこれを繰り返して今があるんだから、
悪霊が簡単に片付くなんて無理だと思うよ。
中央は階級区だから特にね」
「ええ~! ということはこれがずっと続くの? 」
牧野が呆然となって、声を上げた。
「今、向井さん達が動いてるから、
少し変化はあるかもしれないですよ」
佐久間が近づいてきた。
「向井が? 何やってんの? 」
「エハさんとヴァン君でこの前、話してたでしょ。
あれはこの国の陣取り合戦についてだそうです」
「陣取り合戦? 」
牧野が怪訝そうな顔をした。
「トリアが言ってたんだけど、
この国は百年前から急激に、
戦前思想に変貌してきたんだって。
独裁者による恐怖政治の中に、
辛うじて自由があって、
国民は何とか耐え忍んで生きてきたんだ。
だから悪霊が発生しやすい地区と、
比較的綺麗な地区で分かれているんだと思うよ。
向井さん達はその綺麗な地区を、
維持させるために動いてるんだ」
オクトが説明した。
四人は車が行きかう交差点をすり抜けていくと、
中央で足を止め、
同時に動き出した。
結界の中では今までになく、
大きな霊の悲鳴が響いた。
「うっ」
牧野が苦痛に顔をゆがませると、
身守り袋が輝き、
体を包んだ。
「牧野君! 今のうちに札を投げて! 」
エナトが叫び、
悪霊の中心に指から渦を放ち、
動きを止めた。
牧野は空中に駆け上がると、
ドーム全体に札を投げつけていった。
多くの霊の声が頭の中に響き渡る。
断末魔のような叫びに、
四人は耐えられずにうずくまると、
ドームにひびが入った。
佐久間が踏ん張り結界を持たせるため、
霊銃を放つ。
その横でエナトも指を回転させながら、
渦を広げていった。
牧野が再び札に息を吹きかけ飛び上がると、
その中心にはり付けた。
バリバリバリ~~~~~~~ッ!!
大きな音とともに悪霊が吸い込まれていった。
札は燃え上がると、冥界の空間へと消えていく。
黒い空間に少しの青空が見え始めた。
「こんなに力を振り絞ったのに、
まだ、悪霊が消滅しない………?
嘘だろ………」
牧野が歩道にしゃがみこんだ。
「いやいや、十分だよ。
ここまで空が見えるのは久しぶりなんじゃないかな?
見てみな」
オクトが時間を動かし、人の流れを牧野に見せた。
街を歩いていた者達が立ち止まり、
空を見上げた。
「青空ってあんな色だったっけ? 」
「そうそう、こんな色。
私この前捨て地に行ったけど、
あそこは青空が広がってて、
こことは景色が全然違った」
「なんでここだけ、どんよりしてるんだろう………」
久しぶりの青の色に、
誰もが立ち止まって空を見つめていた。
「さっきより呼吸も楽………」
牧野が軽く深呼吸する。
「これっていつまで持つ? 」
横にいるオクトに聞いた。
「どうだろう。中央は真っ黒だからね」
「だけど、悪だくみしたいものにとっては、
この状況は都合がいいのかもしれないね」
エナトが笑いながらやってきた。
「何千年とこれを繰り返して今があるんだから、
悪霊が簡単に片付くなんて無理だと思うよ。
中央は階級区だから特にね」
「ええ~! ということはこれがずっと続くの? 」
牧野が呆然となって、声を上げた。
「今、向井さん達が動いてるから、
少し変化はあるかもしれないですよ」
佐久間が近づいてきた。
「向井が? 何やってんの? 」
「エハさんとヴァン君でこの前、話してたでしょ。
あれはこの国の陣取り合戦についてだそうです」
「陣取り合戦? 」
牧野が怪訝そうな顔をした。
「トリアが言ってたんだけど、
この国は百年前から急激に、
戦前思想に変貌してきたんだって。
独裁者による恐怖政治の中に、
辛うじて自由があって、
国民は何とか耐え忍んで生きてきたんだ。
だから悪霊が発生しやすい地区と、
比較的綺麗な地区で分かれているんだと思うよ。
向井さん達はその綺麗な地区を、
維持させるために動いてるんだ」
オクトが説明した。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる