『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十一部

陣取り合戦

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「分かった」

四人は車が行きかう交差点をすり抜けていくと、

中央で足を止め、

同時に動き出した。

結界の中では今までになく、

大きな霊の悲鳴が響いた。

「うっ」

牧野が苦痛に顔をゆがませると、

身守り袋が輝き、

体を包んだ。

「牧野君! 今のうちに札を投げて! 」

エナトが叫び、

悪霊の中心に指から渦を放ち、

動きを止めた。

牧野は空中に駆け上がると、

ドーム全体に札を投げつけていった。

多くの霊の声が頭の中に響き渡る。

断末魔のような叫びに、

四人は耐えられずにうずくまると、

ドームにひびが入った。

佐久間が踏ん張り結界を持たせるため、

霊銃を放つ。

その横でエナトも指を回転させながら、

渦を広げていった。

牧野が再び札に息を吹きかけ飛び上がると、

その中心にはり付けた。

バリバリバリ~~~~~~~ッ!!

大きな音とともに悪霊が吸い込まれていった。

札は燃え上がると、冥界の空間へと消えていく。

黒い空間に少しの青空が見え始めた。

「こんなに力を振り絞ったのに、

まだ、悪霊が消滅しない………? 

嘘だろ………」

牧野が歩道にしゃがみこんだ。

「いやいや、十分だよ。

ここまで空が見えるのは久しぶりなんじゃないかな? 

見てみな」

オクトが時間を動かし、人の流れを牧野に見せた。

街を歩いていた者達が立ち止まり、

空を見上げた。

「青空ってあんな色だったっけ? 」

「そうそう、こんな色。

私この前捨て地に行ったけど、

あそこは青空が広がってて、

こことは景色が全然違った」

「なんでここだけ、どんよりしてるんだろう………」

久しぶりの青の色に、

誰もが立ち止まって空を見つめていた。

「さっきより呼吸も楽………」

牧野が軽く深呼吸する。

「これっていつまで持つ? 」

横にいるオクトに聞いた。

「どうだろう。中央は真っ黒だからね」

「だけど、悪だくみしたいものにとっては、

この状況は都合がいいのかもしれないね」

エナトが笑いながらやってきた。

「何千年とこれを繰り返して今があるんだから、

悪霊が簡単に片付くなんて無理だと思うよ。

中央は階級区だから特にね」

「ええ~! ということはこれがずっと続くの? 」

牧野が呆然となって、声を上げた。

「今、向井さん達が動いてるから、

少し変化はあるかもしれないですよ」

佐久間が近づいてきた。

「向井が? 何やってんの? 」

「エハさんとヴァン君でこの前、話してたでしょ。

あれはこの国の陣取り合戦についてだそうです」

「陣取り合戦? 」

牧野が怪訝そうな顔をした。

「トリアが言ってたんだけど、

この国は百年前から急激に、

戦前思想に変貌してきたんだって。

独裁者による恐怖政治の中に、

辛うじて自由があって、

国民は何とか耐え忍んで生きてきたんだ。

だから悪霊が発生しやすい地区と、

比較的綺麗な地区で分かれているんだと思うよ。

向井さん達はその綺麗な地区を、

維持させるために動いてるんだ」

オクトが説明した。
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