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第三部
特例向井誕生
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二年前――――
田所は下界から戻ると、
死神課の電子掲示板を眺めていた。
「ほお~今回は特例四人も入るんだな。
去年は二人、一昨年は三人。
これで少しは楽できるかな」
「どうしたの? なんか楽しそうだね~」
早紀が田所に声をかけた。
「電子掲示板? へえ~今年は四人も入るんだ。
去年は私と弥生ちゃんの二人だったからね」
「高田さんが再生されるから、
また一人減って増えてくれないかなと、
思ってたんだよな」
田所が両腕を組んだまま、早紀を見た。
「俺がここに来た八年前は、
特例も人数が多かったんだよね」
「えっ? そうなの? 」
「ああ。昔は大所帯だったらしいけどね。
俺が来た時は、それでも二十人はいたかな。
なのに一年後には俺と高田さんだけになって。
十八人も続けて再生される?
ビックリだよ」
「あははは。それは驚くよね。
じゃあ、倉田君達がきて、
ホッとしたでしょ」
「したした。で、早紀ちゃんと弥生ちゃんがきて、
仕事が楽になるぞって思ったな」
田所が笑うと、セイがやってきた。
「二人で何話してるんですか? 」
「ん? これ」
早紀はそういうと、
二人は同時に電子掲示板を指さした。
掲示板には番号だけで名前はない。
セイが赤ランプを見て、
納得したように笑顔になった。
「そうなんですよね~
今日二人冥界に来るので、
四人揃ったところで、
一ヶ月間の講義と訓練が始まります。
特例としてのお仕事は、
約一ヶ月半後になると思いますよ」
「どんな人が来るんだろう」
三人は赤ランプをじっと見つめた。
――――――――
三途の川から一旦サロンに運ばれたと思ったら、
そこから死神と呼ばれるものに連れられ、
向井は広い一室に連れていかれた。
自分が死んだときの記憶があいまいで、
痛みが消えた後、
気が付いたら死神に連れまわされて移動していた。
服も上下でカジュアルなスウェットに着替えさせられ、
ここに来た。
部屋に通されると、
中には二人の若者がいた。
会議テーブルに椅子が並べられ、
二人は微妙な距離で席についていた。
向井は部屋に入ると、
空いている椅子に腰かけ、二人をじっと見た。
一人は……どこかで見た顔なんだけど、
思い出せない。
もう一人は金髪の若者だ。
「お前は何で死んだの?
俺は抗争に巻き込まれちゃってさ」
これが牧野との初対面だった。
「ここにいるという事は……やはり死んでるんですよね」
「なに? あんた死んだこと分からないの? 」
牧野はあきれるように向井を見た。
「君は組関係の人ですか? 」
「違うよ。たまたま通りかかった公園で、
半グレの抗争に巻き込まれて殺されたんだよ」
「その風貌だから、仲間と間違えられたんだね」
それまで黙っていた青年が口を開いた。
「好き勝手に言ってんじゃねえよ。
芸能人のあんたはどうしてここにいるんだよ」
牧野のその言葉に向井は声を上げた。
「あっ!! 」
そうだ。新田涼だ。
向井は人気俳優の顔を思い出した。
「俺はファンに押し倒されて、
気が付いたらここにいた」
「ファンに殺されたってことか。人気者だな~」
「別に殺されたわけじゃないよ。
君も半グレに囲まれて死ぬなんて、
人気者だよね」
新田はそういうと、
小さな笑みを浮かべた。
牧野が言葉を失う姿に、
この俳優は面白いな~と向井も笑った。
三人がそんな話をしている所へ、
五十代くらいの筋肉質の男性が入ってきた。
「おっ、揃ってるね。
じゃあ、これからの君たちの仕事について説明するから」
「仕事!? 」
三人が同時に驚きの声を上げた。
「そうですよ。
君たちは寿命を全うしないで亡くなっているので、
ここで残りの人生分働いていただくことになります」
「えええええ~!! 」
三人の声は廊下まで響き渡った。
田所は下界から戻ると、
死神課の電子掲示板を眺めていた。
「ほお~今回は特例四人も入るんだな。
去年は二人、一昨年は三人。
これで少しは楽できるかな」
「どうしたの? なんか楽しそうだね~」
早紀が田所に声をかけた。
「電子掲示板? へえ~今年は四人も入るんだ。
去年は私と弥生ちゃんの二人だったからね」
「高田さんが再生されるから、
また一人減って増えてくれないかなと、
思ってたんだよな」
田所が両腕を組んだまま、早紀を見た。
「俺がここに来た八年前は、
特例も人数が多かったんだよね」
「えっ? そうなの? 」
「ああ。昔は大所帯だったらしいけどね。
俺が来た時は、それでも二十人はいたかな。
なのに一年後には俺と高田さんだけになって。
十八人も続けて再生される?
ビックリだよ」
「あははは。それは驚くよね。
じゃあ、倉田君達がきて、
ホッとしたでしょ」
「したした。で、早紀ちゃんと弥生ちゃんがきて、
仕事が楽になるぞって思ったな」
田所が笑うと、セイがやってきた。
「二人で何話してるんですか? 」
「ん? これ」
早紀はそういうと、
二人は同時に電子掲示板を指さした。
掲示板には番号だけで名前はない。
セイが赤ランプを見て、
納得したように笑顔になった。
「そうなんですよね~
今日二人冥界に来るので、
四人揃ったところで、
一ヶ月間の講義と訓練が始まります。
特例としてのお仕事は、
約一ヶ月半後になると思いますよ」
「どんな人が来るんだろう」
三人は赤ランプをじっと見つめた。
――――――――
三途の川から一旦サロンに運ばれたと思ったら、
そこから死神と呼ばれるものに連れられ、
向井は広い一室に連れていかれた。
自分が死んだときの記憶があいまいで、
痛みが消えた後、
気が付いたら死神に連れまわされて移動していた。
服も上下でカジュアルなスウェットに着替えさせられ、
ここに来た。
部屋に通されると、
中には二人の若者がいた。
会議テーブルに椅子が並べられ、
二人は微妙な距離で席についていた。
向井は部屋に入ると、
空いている椅子に腰かけ、二人をじっと見た。
一人は……どこかで見た顔なんだけど、
思い出せない。
もう一人は金髪の若者だ。
「お前は何で死んだの?
俺は抗争に巻き込まれちゃってさ」
これが牧野との初対面だった。
「ここにいるという事は……やはり死んでるんですよね」
「なに? あんた死んだこと分からないの? 」
牧野はあきれるように向井を見た。
「君は組関係の人ですか? 」
「違うよ。たまたま通りかかった公園で、
半グレの抗争に巻き込まれて殺されたんだよ」
「その風貌だから、仲間と間違えられたんだね」
それまで黙っていた青年が口を開いた。
「好き勝手に言ってんじゃねえよ。
芸能人のあんたはどうしてここにいるんだよ」
牧野のその言葉に向井は声を上げた。
「あっ!! 」
そうだ。新田涼だ。
向井は人気俳優の顔を思い出した。
「俺はファンに押し倒されて、
気が付いたらここにいた」
「ファンに殺されたってことか。人気者だな~」
「別に殺されたわけじゃないよ。
君も半グレに囲まれて死ぬなんて、
人気者だよね」
新田はそういうと、
小さな笑みを浮かべた。
牧野が言葉を失う姿に、
この俳優は面白いな~と向井も笑った。
三人がそんな話をしている所へ、
五十代くらいの筋肉質の男性が入ってきた。
「おっ、揃ってるね。
じゃあ、これからの君たちの仕事について説明するから」
「仕事!? 」
三人が同時に驚きの声を上げた。
「そうですよ。
君たちは寿命を全うしないで亡くなっているので、
ここで残りの人生分働いていただくことになります」
「えええええ~!! 」
三人の声は廊下まで響き渡った。
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