85 / 631
第三部
妖怪 クロと呉葉
しおりを挟む
「ほお~凄いの~
特別賞とやらを取るとは」
若侍のような姿の黒狐が言った。
「まぁな。おぬし等にも見せてやりたかったぞ。
人気投票で一位になったその副賞の菓子だ」
「うまいの~」
黒狐のクロは美味しそうに頬張った。
「当たり前じゃ。名店の菓子折りよ」
虎獅狼と千乃は得意げに話しながら、
妖怪たちと公園で菓子を食べていた。
「わらわも出たかった」
鬼の姿をした可愛らしい姫が、
菓子をもぐもぐ食べながら言う。
「呉葉、お前の魔の力は、
人間どもにはエグすぎてうけん。
もっと愛嬌のある………ほら、
そこらのわっぱどもが持っておる、
魔法のステッキか?
ああゆうもので変身でもすれば、
ウケるかもしれんがな」
「………」
呉葉は不機嫌そうに眉根を寄せた。
「で、優勝したのは誰だ? 」
「それが死神にやられた。
一人はへたくそなダンスなんだが、それが大うけでな。
もう一人はイイ男で、これも客に大うけよ」
「それは仕方がないの」
クロは笑うと菓子を口に放り込んだ。
――――――――
虎獅狼と千乃を探していた向井は、
アーケードを抜け公園に向かった。
ただの広い空き地の公園には、
ベンチとテーブル以外何もない。
木々は目隠しになり犯罪の温床と、
少しだけ植えられ、
昔の子供たちが遊んでいたものは危険遊具と言われ、
略取り外されているので、
休憩するための場所のようになっている。
子供の数も減り、
道具を使って遊ぶこともできないので、
いるのは年寄りか、
姿は見えないが妖怪のたまり場になっていた。
向井は公園に入ると、
この辺りにいつもいるからな………
と周りを見渡す。
すると奥のベンチに妖怪四人の、
何やら楽しそうな姿が視界に飛び込んできた。
「ここにいましたか」
向井が声をかけると、
「おお~今、発表会の話で盛り上がっていたところだ」
虎獅狼が言った。
「お二人はサロン客に人気でしたよ。
羽の生えた冥王に化けた姿は、
皆さん大喜びでしたから。
お菓子ももらえてよかったですね」
向井も笑顔で話した。
その姿をじっと見つめる可愛い姫に、
向井は気づいた。
「お友達ですか? 」
「そう。呉葉とクロよ」
千乃が紹介すると、
「次に発表会があるなら、俺も出たいぞ」
クロが向井を見た。
「虎獅狼達に聞いていると思いますが、
ブレスレットを装着されるのでしたら、
冥界に来られますよ」
「だったら次は俺も出る!! この菓子が欲しい!! 」
「美味しかったですか? 」
「うむ。美味だ」
「次に開催が決まったら、
この四人で出られたらどうですか? 」
「それはいいの~冥王に第二回をやってくれと、
お前からも頼んでくれ」
虎獅狼もやる気満々の様子だ。
呉葉がもじもじしながら千乃の後ろに隠れる。
見た所、三鬼やこんと変わらない年のようだ。
「こやつは人見知りでな。
人間は特に苦手なんだが、
お前には興味はあるようだな」
「呉葉も女の子だから、いい男には弱いのよ」
千乃が笑った。
「褒められて悪い気はしませんけどね」
向井は戸惑うように笑った。
「で、何か用か? 」
「あぁそうそう。これ」
そういって、向井は小さな袋を手渡した。
「この前、虎獅狼と千乃が作っていたプラ板です。
青田さんがアクセサリーにしてくれましたよ」
「それはわざわざ、すまんの」
虎獅狼と千乃が嬉しそうに受け取った。
「これなんじゃ? 」
呉葉とクロが袋の中身を覗く。
「可愛い………」
呉葉は千乃のヘアアクセサリーを見て、
笑顔になった。
「これはどうやって作るんだ?
俺も作りたいぞ」
クロも虎獅狼のブローチを見て、向井を見上げた。
「これはな、冥界の工房で教えてもらって作るんだ。
この他にも針を刺して人形も作れるしな」
向井の代わりに虎獅狼が説明していると、
「人形に針を刺すのか? そりゃ呪いの人形だろ」
クロが言う。
「違うわよ~本当に可愛いお人形が作れるの。
私は次にそのニードルに挑戦するのよ」
千乃が笑顔になった。
「わらわも作りたいぞ」
呉葉はアクセサリーをじっと見つめたまま言った。
「だったら許可をもらって、
ブレスレットを装着して、
工房で作られたらどうですか? 」
そんな話をしていると、突然大きな揺れが起こった。
「地震じゃ」
五人は大きく揺れる地面に座り込み、
おさまるのをじっと待った。
公園の周囲でも人々が立ち止まり、
揺れが緩やかになるまで動かずにいた。
「ん? おさまったか? 」
虎獅狼は立ち上がると、辺りを見回した。
「最近、特に多いですよね」
向井も周囲を見ながら、怪我人がいないか確認する。
「人間どもが自ら結界を崩しておるからの」
「結界? 」
虎獅狼の言葉に向井が怪訝な顔をした。
「ん? そうか。お前は知らんのか。
だったら俺からは言わんが、
気になるなら冥王に聞くがいい」
思い見る向井に虎獅狼はそれだけ言うと、
千乃たちとアクセサリーを見ながら、
楽し気に話し始めた。
特別賞とやらを取るとは」
若侍のような姿の黒狐が言った。
「まぁな。おぬし等にも見せてやりたかったぞ。
人気投票で一位になったその副賞の菓子だ」
「うまいの~」
黒狐のクロは美味しそうに頬張った。
「当たり前じゃ。名店の菓子折りよ」
虎獅狼と千乃は得意げに話しながら、
妖怪たちと公園で菓子を食べていた。
「わらわも出たかった」
鬼の姿をした可愛らしい姫が、
菓子をもぐもぐ食べながら言う。
「呉葉、お前の魔の力は、
人間どもにはエグすぎてうけん。
もっと愛嬌のある………ほら、
そこらのわっぱどもが持っておる、
魔法のステッキか?
ああゆうもので変身でもすれば、
ウケるかもしれんがな」
「………」
呉葉は不機嫌そうに眉根を寄せた。
「で、優勝したのは誰だ? 」
「それが死神にやられた。
一人はへたくそなダンスなんだが、それが大うけでな。
もう一人はイイ男で、これも客に大うけよ」
「それは仕方がないの」
クロは笑うと菓子を口に放り込んだ。
――――――――
虎獅狼と千乃を探していた向井は、
アーケードを抜け公園に向かった。
ただの広い空き地の公園には、
ベンチとテーブル以外何もない。
木々は目隠しになり犯罪の温床と、
少しだけ植えられ、
昔の子供たちが遊んでいたものは危険遊具と言われ、
略取り外されているので、
休憩するための場所のようになっている。
子供の数も減り、
道具を使って遊ぶこともできないので、
いるのは年寄りか、
姿は見えないが妖怪のたまり場になっていた。
向井は公園に入ると、
この辺りにいつもいるからな………
と周りを見渡す。
すると奥のベンチに妖怪四人の、
何やら楽しそうな姿が視界に飛び込んできた。
「ここにいましたか」
向井が声をかけると、
「おお~今、発表会の話で盛り上がっていたところだ」
虎獅狼が言った。
「お二人はサロン客に人気でしたよ。
羽の生えた冥王に化けた姿は、
皆さん大喜びでしたから。
お菓子ももらえてよかったですね」
向井も笑顔で話した。
その姿をじっと見つめる可愛い姫に、
向井は気づいた。
「お友達ですか? 」
「そう。呉葉とクロよ」
千乃が紹介すると、
「次に発表会があるなら、俺も出たいぞ」
クロが向井を見た。
「虎獅狼達に聞いていると思いますが、
ブレスレットを装着されるのでしたら、
冥界に来られますよ」
「だったら次は俺も出る!! この菓子が欲しい!! 」
「美味しかったですか? 」
「うむ。美味だ」
「次に開催が決まったら、
この四人で出られたらどうですか? 」
「それはいいの~冥王に第二回をやってくれと、
お前からも頼んでくれ」
虎獅狼もやる気満々の様子だ。
呉葉がもじもじしながら千乃の後ろに隠れる。
見た所、三鬼やこんと変わらない年のようだ。
「こやつは人見知りでな。
人間は特に苦手なんだが、
お前には興味はあるようだな」
「呉葉も女の子だから、いい男には弱いのよ」
千乃が笑った。
「褒められて悪い気はしませんけどね」
向井は戸惑うように笑った。
「で、何か用か? 」
「あぁそうそう。これ」
そういって、向井は小さな袋を手渡した。
「この前、虎獅狼と千乃が作っていたプラ板です。
青田さんがアクセサリーにしてくれましたよ」
「それはわざわざ、すまんの」
虎獅狼と千乃が嬉しそうに受け取った。
「これなんじゃ? 」
呉葉とクロが袋の中身を覗く。
「可愛い………」
呉葉は千乃のヘアアクセサリーを見て、
笑顔になった。
「これはどうやって作るんだ?
俺も作りたいぞ」
クロも虎獅狼のブローチを見て、向井を見上げた。
「これはな、冥界の工房で教えてもらって作るんだ。
この他にも針を刺して人形も作れるしな」
向井の代わりに虎獅狼が説明していると、
「人形に針を刺すのか? そりゃ呪いの人形だろ」
クロが言う。
「違うわよ~本当に可愛いお人形が作れるの。
私は次にそのニードルに挑戦するのよ」
千乃が笑顔になった。
「わらわも作りたいぞ」
呉葉はアクセサリーをじっと見つめたまま言った。
「だったら許可をもらって、
ブレスレットを装着して、
工房で作られたらどうですか? 」
そんな話をしていると、突然大きな揺れが起こった。
「地震じゃ」
五人は大きく揺れる地面に座り込み、
おさまるのをじっと待った。
公園の周囲でも人々が立ち止まり、
揺れが緩やかになるまで動かずにいた。
「ん? おさまったか? 」
虎獅狼は立ち上がると、辺りを見回した。
「最近、特に多いですよね」
向井も周囲を見ながら、怪我人がいないか確認する。
「人間どもが自ら結界を崩しておるからの」
「結界? 」
虎獅狼の言葉に向井が怪訝な顔をした。
「ん? そうか。お前は知らんのか。
だったら俺からは言わんが、
気になるなら冥王に聞くがいい」
思い見る向井に虎獅狼はそれだけ言うと、
千乃たちとアクセサリーを見ながら、
楽し気に話し始めた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
遥かなる物語
うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。
この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。
彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。
だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか?
ーーーーーーーー
序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。
※作者独自の世界観です。
※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる