『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第二部

お出掛けマルシェ

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金曜日――――

牧野は朝から悪霊騒ぎで、

隣町まで出かけて行った。

佐久間とエナトを引き連れて行ったので、

向井達は安心してイベントに出かけられた。

安達は初めての遠足のように、

朝から張り切っていたので、

早紀とティンが、

「何かあるの? 」と、

休憩室にやってきた。

「今日は安達君が楽しみにしている、

手作りのマルシェがあるので、

これから出かけるんです」

「マルシェ? 」

早紀とティンが同時に聞いた。

「手作り品とかキッチンカーとか、

まあイベントですね。

安達君は欲しいものがあるみたいなんで、

みんなで出かけることにしたんです」

「みんなって? 私も行きたい」

「トリアさんと弥生ちゃんも行くんですけど、

時間があるならお二人もどうですか? 

安達君も喜びますよ」

「だったら俺も行こう」

早紀とティンも増えて賑やかになり、

安達も嬉しそうに、

「お土産買ってくるから」

といじける冥王を置いて下界に下りて行った。


「いいお天気でよかったね」

ティンが公園の中を歩きながら、

店をゆっくり覗いた。

道の左右にテントが張られ、

色んなものが並べられているので、

安達じゃなくても目移りしてしまう。

ティンも楽しそうに見ていた。

「へえ~こんなものも手作りで売られてるんだね」

レザークラフトを見つけると、

「これ買っていこう」

ティンはレザーのコードブレスを購入した。

安達はお目当てのショップを見つけたようで、

弥生たちと作家さんのお話を聞いている。

「ああやっていると、

お姉さんに連れられてきた子供に見えるね」

ティンが笑った。

「安達君の体は、

殆ど魂に精気を吸い取られている状態なので、

成長できなかったんでしょうね。

同世代の子より一回り小柄ですから」

「そうだね。

特殊な魂の場合は、

器を選ばないと暴走してしまうので、

普通は生まれてこれないんですけど、

安達君の体は受け入れてしまったんだよね」

ティンも何故だろうと考えこむように言った。

恐らく、安達の魂が一つではなく、

融合されてしまったからなのだと思われるが、

そのことを知るのは冥王と、

恐らく一部の死神だけなのだろうから、

ティンには不思議なんだろう。

「これ見て~」

安達が箱をもって走ってきた。

その姿に作家が笑って見ていたので、

向井とティンも軽く会釈した。

「何買ったの? 」

ティンが聞くと、

「キャビネット」

「立派な家具だね。

ミニチュアでこんなのが作れるんだ。

十朱さんのにも驚いたけど、

安達君や冥王が夢中になるの分かるね」

ティンは箱の中を見て驚くように言った。

「安達君、作り方もちょっと教えてもらったのよね」

弥生が笑顔で言った。

「安達君には内緒だけど、

小学生だと思ったみたい」

早紀が向井の耳に口を寄せて話した。

「トリアが支払ったから、

優しいお姉さんですねって言われてた」

口元に両手を当ててくすくす笑った。

「まあ、安達君がご機嫌だからいいけどね」

トリアも笑いながら言う。

「あっちのキッチンカーでクレープ売ってるから、

食べようよ」

安達が言うと、

「いいけど、

私一つエプロンワンピ欲しいから、

そのあとでもいい? 」

「いいよ」

弥生と並んでお気に入りのお店に歩き出した。

「私も一つイヤーカフ買っちゃった」

早紀も久しぶりの買いものに楽しそうだ。

「たまにはこんな風に、

みんなで出かけるのもいいね。

知ったら牧野君、怒るだろうけど」

ティンはからからと声を出して笑った。

そのあとものんびり見て回りながら、

クレープ食べて、

タピオカ飲んで、

チキン南蛮食べてと、

向井達もはしゃぐ安達に振り回されながら、

それでも久しぶりにみんなで楽しい時間を過ごした。
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