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第二部
インペリアルトパーズ
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工房を出た後、
向井がサロンに向かうと、
冥王も一緒についてきた。
「お仕事に戻らなくていいんですか? 」
「今日はいいんです」
そういってサロンを見回す。
このところ消去・再生と、
スムーズに進んでいっているので、
以前のように霊気でムッとすることもない。
向井が周囲を見ていると、
奥のテーブルで弥生が、
何やらトリアと話している姿が見えた。
何だろう。
向井は気になって近づいた。
「二人で何やってるんですか? 」
「ん? 弥生ちゃんに、
指輪を作ってもらおうと思って。
私が作ってもらったものを見て、
松田先生が欲しいって言うんでお願いしてたの」
「ほお~」
三人で話をしている背後から、
冥王も顔をのぞかせた。
「冥王も欲しいの? 」
トリアが聞くと、
「作ってもらえるなら、
インペリアルトパーズで欲しいです」
「インペが好きなんですか? 」
椅子に座る弥生が冥王を見上げた。
「当然です。皇帝のトパーズですよ。
私にピッタリじゃないですか」
「何が皇帝ですか。意味わかってます? 」
「向井君はみんなに優しいのに、
私には冷たいですよね」
「そんなことないですよ」
向井が言うと弥生が笑った。
「でも、
インペは冥王に合ってると思いますよ。
だって、インペリアルトパーズって
神の知恵の守護石なんですから」
「ほら、私の為にあるような石じゃないですか。
私にも作ってください」
冥王が瞳をキラキラさせながら言った。
「いいですよ。ただ、
松田先生の後になりますけど」
「先生は四月生まれで、
ダイヤモンドなんだけど、
値段も高いじゃない。
なので、ほかの石でいいって。
私が付けているこのインカローズが、
可愛いって気に入ってたから、
ピンクが好きなのかな? 」
トリアは自分のつけている、
リングを見ながら言った。
「ダイヤモンドも、
ハーキマーのようなクォーツもあるから、
作ることは可能ですけど、
ピンクが好きなら、
モルガナイトで作ってみます? 」
「モルガナイト? 」
そこにいた三人が同時に聞き返した。
「四月の誕生石ですよ。
ピンクの可愛らしい石です。
ちょっと待っててください」
弥生はそういうと、
テーブルの横に設置されたケース棚から、
小袋に入った天然石を出してくれた。
このテーブルはまり子が使用していたもので、
再生された後は弥生が使用していた。
「自室で作っていたんだけど、
材料が増えてきちゃって、
こっちに移動してきたあと、
妖鬼さんにお願いして、
天然石用の引き出しも作ってもらったんですよ。
え~と、これがモルガナイト」
広げた布の上に、小袋から出した石を並べた。
「天然石屋さんまわって見つけたの。
可愛いでしょう。
こっちのカットされたルースと、
小さなコロンとしたタンブルがあるんだけど」
「可愛らしいピンクですね」
向井が言うと、
「そうなのよ。ルースも綺麗なんだけど、
この天然石の淡いピンクも何とも言えないでしょう? 」
弥生が手のひらに乗せた。
「これ、写真に撮って、
先生に決めてもらった方がいいかな」
トリアは石を撮影した。
「リングのデザインも、
私の自己流なんだけど……」
弥生がデザインのレシピノートを開き、
「いくつかあるの。
石が決まったらそれに合うデザインの方が、
ピッタリくると思う。
あとどの指に付けたいかで、
サイズが変わってくるから」
と説明した。
「職人さんですね~」
冥王も感心したように頷く。
「インペリアルトパーズも見たいです。
どんな石ですか? 」
「冥王はインペリアルトパーズを知らずに、
偉そうに言ってたんですか? 」
向井があきれ顔になった。
弥生はくすくす笑いながら、
袋を取り出すと布の上に並べた。
「これは宝石質だから、
色もピンク味の強いオレンジで、
凄くきれいなんですけど、
高い石だからちょっと小さめなんです」
「確かに。輝きは美しいのに小さいです」
「緑川さんにお願いすれば、
インペを分けてもらえるかもしれないので、
もう少し大きい石で作りたかったら、
頼んでみてください」
「ふむ。私に相応しい、
インペリアルトパーズでなければな。
緑川に貰おう」
「何を偉そうに言っているんですか」
「私は偉いんですよ」
冥王が胸を張った。
そんな話をしていると、
工房にいた安達が飛び込んできた。
向井がサロンに向かうと、
冥王も一緒についてきた。
「お仕事に戻らなくていいんですか? 」
「今日はいいんです」
そういってサロンを見回す。
このところ消去・再生と、
スムーズに進んでいっているので、
以前のように霊気でムッとすることもない。
向井が周囲を見ていると、
奥のテーブルで弥生が、
何やらトリアと話している姿が見えた。
何だろう。
向井は気になって近づいた。
「二人で何やってるんですか? 」
「ん? 弥生ちゃんに、
指輪を作ってもらおうと思って。
私が作ってもらったものを見て、
松田先生が欲しいって言うんでお願いしてたの」
「ほお~」
三人で話をしている背後から、
冥王も顔をのぞかせた。
「冥王も欲しいの? 」
トリアが聞くと、
「作ってもらえるなら、
インペリアルトパーズで欲しいです」
「インペが好きなんですか? 」
椅子に座る弥生が冥王を見上げた。
「当然です。皇帝のトパーズですよ。
私にピッタリじゃないですか」
「何が皇帝ですか。意味わかってます? 」
「向井君はみんなに優しいのに、
私には冷たいですよね」
「そんなことないですよ」
向井が言うと弥生が笑った。
「でも、
インペは冥王に合ってると思いますよ。
だって、インペリアルトパーズって
神の知恵の守護石なんですから」
「ほら、私の為にあるような石じゃないですか。
私にも作ってください」
冥王が瞳をキラキラさせながら言った。
「いいですよ。ただ、
松田先生の後になりますけど」
「先生は四月生まれで、
ダイヤモンドなんだけど、
値段も高いじゃない。
なので、ほかの石でいいって。
私が付けているこのインカローズが、
可愛いって気に入ってたから、
ピンクが好きなのかな? 」
トリアは自分のつけている、
リングを見ながら言った。
「ダイヤモンドも、
ハーキマーのようなクォーツもあるから、
作ることは可能ですけど、
ピンクが好きなら、
モルガナイトで作ってみます? 」
「モルガナイト? 」
そこにいた三人が同時に聞き返した。
「四月の誕生石ですよ。
ピンクの可愛らしい石です。
ちょっと待っててください」
弥生はそういうと、
テーブルの横に設置されたケース棚から、
小袋に入った天然石を出してくれた。
このテーブルはまり子が使用していたもので、
再生された後は弥生が使用していた。
「自室で作っていたんだけど、
材料が増えてきちゃって、
こっちに移動してきたあと、
妖鬼さんにお願いして、
天然石用の引き出しも作ってもらったんですよ。
え~と、これがモルガナイト」
広げた布の上に、小袋から出した石を並べた。
「天然石屋さんまわって見つけたの。
可愛いでしょう。
こっちのカットされたルースと、
小さなコロンとしたタンブルがあるんだけど」
「可愛らしいピンクですね」
向井が言うと、
「そうなのよ。ルースも綺麗なんだけど、
この天然石の淡いピンクも何とも言えないでしょう? 」
弥生が手のひらに乗せた。
「これ、写真に撮って、
先生に決めてもらった方がいいかな」
トリアは石を撮影した。
「リングのデザインも、
私の自己流なんだけど……」
弥生がデザインのレシピノートを開き、
「いくつかあるの。
石が決まったらそれに合うデザインの方が、
ピッタリくると思う。
あとどの指に付けたいかで、
サイズが変わってくるから」
と説明した。
「職人さんですね~」
冥王も感心したように頷く。
「インペリアルトパーズも見たいです。
どんな石ですか? 」
「冥王はインペリアルトパーズを知らずに、
偉そうに言ってたんですか? 」
向井があきれ顔になった。
弥生はくすくす笑いながら、
袋を取り出すと布の上に並べた。
「これは宝石質だから、
色もピンク味の強いオレンジで、
凄くきれいなんですけど、
高い石だからちょっと小さめなんです」
「確かに。輝きは美しいのに小さいです」
「緑川さんにお願いすれば、
インペを分けてもらえるかもしれないので、
もう少し大きい石で作りたかったら、
頼んでみてください」
「ふむ。私に相応しい、
インペリアルトパーズでなければな。
緑川に貰おう」
「何を偉そうに言っているんですか」
「私は偉いんですよ」
冥王が胸を張った。
そんな話をしていると、
工房にいた安達が飛び込んできた。
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