『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第二部

冥王の掛け軸

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食堂を一緒に出てきた冥王と向井を見つけて、

元秀が近づいてきた。

「冥王~さっきから探してたんですよ」

「ん? 私ですか? 」

足を止めた。

「冥王がデザインした掛け軸、

出来上がりましたよ」

「おお~仕上がりましたか。

見たいです!! 」

嬉しそうな冥王に元秀は笑顔になると、

「工房の方に来ていただけますか? 」

と言った。

「冥王はどんなデザインをお願いされたんですか? 」

向井が聞く。

「まあ、冥王らしい感じですね。

一緒にご覧になりますか? 」

元秀が笑いながら言うので、

向井も気になり、

冥王と並んで工房に向かった。


工房に入ると安達が十朱と一緒に、

ドールハウスを作っていた。

アートンもその隣で楽しそうに、

十朱の作る冥界の景色をみて質問している。

向井達が入ってきたのも気づかないくらいに、

夢中になっている姿に、

冥王は満足げに眺めていた。

周りを見ると、

チビたちをはじめ虎獅狼や千乃も、

笑顔で一生懸命ものつくりをしている。

好きなことを楽しんでいる姿は、

みんな変わらないな。

向井の口元が自然とほころんだ。


ステージの方もかなり進んでいるようで、

工房とギャラリーの空間が広くなっている。

冥王も新しくなる光景を嬉しそうに眺めながら、

元秀のブースへ入っていった。

元秀は矢筈やはずを手に、

掛け軸を壁にかけるとゆっくり開いていった。

見ると迫力のある龍虎の絵が出てきた。

凄い………

向井はその絵に目を奪われたのだが、

何故か邪魔なものが中央にある。

「一つ聞いてもいいですか? 

これは冥王がお願いしたデザインなんですよね」

「そうですよ。カッコいいでしょう」

「………どうしても入れなきゃダメだったんですか? 

俺には邪魔なものだと思うんですけど。ねえ? 」

向井はそういって元秀を見た。

元秀は笑いをこらえるように、

口元に拳を当てながら言った。

「龍虎は縁起物ですから、図柄としては人気です。

冥王はそれを従えたかったんですよね」

冥王は感慨無量といった様子で、

離れたり左右で眺めたりと体を移動させた。

「なにも中央に、

自分の姿を入れなくてもいいじゃないですか。

せっかくの素晴らしい絵が台無しです」

「まあ、冥界でしか見られない特注ですし、

俺は描かせてもらって楽しかったです」

元秀は腕を組み満足げに話した。

「ほら、分かってくれる人はいるんですよ。

これは私の部屋の床の間に飾るんです。

花村さんに作ってもらった龍の衝立。

あれと合わせてもカッコよすぎです」

「知ってます? 冥王の執務室は、

今やオタク部屋みたいになっているんですよ。

好きなものを飾って並べて、

一人満足してるんです」

向井が耳打ちした。

「そうなんですか。あはははは」

元秀は可笑しそうに声を上げて笑った。

「とりあえず、

次はずっと描きたかった襖絵を作ろうと思います」

「すいませんね。

冥王のわがままにつき合わせちゃって」

「再生する前にいいお仕事させてもらって、

楽しかったです」

元秀は満足そうに掛け軸を見て微笑んだ。
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