『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第二部

向井の記憶

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安達を冥王に任せ、

向井が休憩室に入ると、

メンバーたちが戻ってきたようで、

矢継ぎ早に質問してきた。

「安達君が倒れたって? 」

田所が聞く。

「俺達死人だから、病気で死ぬなんてあるのか? 」

「牧野、縁起でもないこと言わないでよ」

「原因はなんですか? 」

佐久間も珍しく慌てた様子で言った。

「ちょっ…ちょっと待って、待ってください」

向井が詰め寄る彼らを制止して、後ずさりした。

「ほら、向井君が困ってるでしょ。

皆お座りなさい」

「有難うございます。真紀子さん」

向井は天井を向くと一呼吸おいて、

話せる部分だけ伝えることにした。

「結論から言うと、

安達君は元々特殊な霊媒体質を持っているそうです。

なので霊対霊の対決が続くと、

コントロールが効かなくなってしまい、

体に負担がかかってしまうとのことです。

一応、今のところは問題ないので、

安心してください」

「ああ、よかった。何でもないんだ」

早紀がホッとしたように笑顔になった。

倒れた瞬間を見ていたので、

心配だったのだろう。

「今は冥王が見てますので大丈夫ですよ。

もうしばらく休ませますので、

皆さんもそのつもりでお願いします」

「でもそうなると、

あいつと組むのは危なくねぇか? 」

「そうですね。

当分の間、俺が安達君とバディを組みます」

「それじゃぁ、向井が危険じゃないか」

「危険な場所は牧野君の担当だから、安心でしょう? 」

「ちぇっ、そういう事かよ」

牧野は面白くなさそうに言うと、

「仕方ねえから、安達には楽な仕事をさせとけ」

ソファーにドスンと座り込んだ。

「牧野君はいい子ですね」

「い、いい子なんて言うな。子供じゃねえぞ!! 」

向井は牧野の背後に立つと、頭に手を乗せた。

「やめろよ」

牧野が手を払いのけるのを見て、

「本当に素直じゃないな~」

後から入ってきた新田が笑った。

「今、安達君の様子を見てきましたけど、

お腹が空いたって、

弥生ちゃんと一緒に食堂に行ったよ。

若いっていいよね」

新田がそういうと、

牧野と早紀が駆けだしていった。

「忙しないですね」

佐久間も笑うと、

「私も安達君の顔を見てきます」

「じゃあ、俺も」

と田所も一緒に部屋を出て行った。

愛情を知らずに育った安達も、

ここでは心配され、

大事に思ってくれるものがいる。

甘えられる場所を死んでから与えられる。

これを幸せというかは分からないが、

今の安達には必要なのだろう。

「安達君はちょっとひねくれ屋さんだけど、

私には可愛らしい子供ね。

みんなに愛されて幸せだと思うわよ」

考え込む向井を見て真紀子がほほ笑むと、

「お紅茶入れましょうかね。新田君も飲む? 」

「飲みます。手伝いますよ」

真紀子について行った。

向井は安達の様子を見ていて、

何故か自分の抜けている記憶を思い出していた。

あれは何なのだろう。

思い出せそうで、思い出せない……

多分、自分の死に、

関係していることなんだと思うのだが……

やはり、思い出せない……

向井はソファーに寄りかかると、

疲れたように目を閉じた。
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