56 / 631
第二部
向井の記憶
しおりを挟む
安達を冥王に任せ、
向井が休憩室に入ると、
メンバーたちが戻ってきたようで、
矢継ぎ早に質問してきた。
「安達君が倒れたって? 」
田所が聞く。
「俺達死人だから、病気で死ぬなんてあるのか? 」
「牧野、縁起でもないこと言わないでよ」
「原因はなんですか? 」
佐久間も珍しく慌てた様子で言った。
「ちょっ…ちょっと待って、待ってください」
向井が詰め寄る彼らを制止して、後ずさりした。
「ほら、向井君が困ってるでしょ。
皆お座りなさい」
「有難うございます。真紀子さん」
向井は天井を向くと一呼吸おいて、
話せる部分だけ伝えることにした。
「結論から言うと、
安達君は元々特殊な霊媒体質を持っているそうです。
なので霊対霊の対決が続くと、
コントロールが効かなくなってしまい、
体に負担がかかってしまうとのことです。
一応、今のところは問題ないので、
安心してください」
「ああ、よかった。何でもないんだ」
早紀がホッとしたように笑顔になった。
倒れた瞬間を見ていたので、
心配だったのだろう。
「今は冥王が見てますので大丈夫ですよ。
もうしばらく休ませますので、
皆さんもそのつもりでお願いします」
「でもそうなると、
あいつと組むのは危なくねぇか? 」
「そうですね。
当分の間、俺が安達君とバディを組みます」
「それじゃぁ、向井が危険じゃないか」
「危険な場所は牧野君の担当だから、安心でしょう? 」
「ちぇっ、そういう事かよ」
牧野は面白くなさそうに言うと、
「仕方ねえから、安達には楽な仕事をさせとけ」
ソファーにドスンと座り込んだ。
「牧野君はいい子ですね」
「い、いい子なんて言うな。子供じゃねえぞ!! 」
向井は牧野の背後に立つと、頭に手を乗せた。
「やめろよ」
牧野が手を払いのけるのを見て、
「本当に素直じゃないな~」
後から入ってきた新田が笑った。
「今、安達君の様子を見てきましたけど、
お腹が空いたって、
弥生ちゃんと一緒に食堂に行ったよ。
若いっていいよね」
新田がそういうと、
牧野と早紀が駆けだしていった。
「忙しないですね」
佐久間も笑うと、
「私も安達君の顔を見てきます」
「じゃあ、俺も」
と田所も一緒に部屋を出て行った。
愛情を知らずに育った安達も、
ここでは心配され、
大事に思ってくれるものがいる。
甘えられる場所を死んでから与えられる。
これを幸せというかは分からないが、
今の安達には必要なのだろう。
「安達君はちょっとひねくれ屋さんだけど、
私には可愛らしい子供ね。
みんなに愛されて幸せだと思うわよ」
考え込む向井を見て真紀子がほほ笑むと、
「お紅茶入れましょうかね。新田君も飲む? 」
「飲みます。手伝いますよ」
真紀子について行った。
向井は安達の様子を見ていて、
何故か自分の抜けている記憶を思い出していた。
あれは何なのだろう。
思い出せそうで、思い出せない……
多分、自分の死に、
関係していることなんだと思うのだが……
やはり、思い出せない……
向井はソファーに寄りかかると、
疲れたように目を閉じた。
向井が休憩室に入ると、
メンバーたちが戻ってきたようで、
矢継ぎ早に質問してきた。
「安達君が倒れたって? 」
田所が聞く。
「俺達死人だから、病気で死ぬなんてあるのか? 」
「牧野、縁起でもないこと言わないでよ」
「原因はなんですか? 」
佐久間も珍しく慌てた様子で言った。
「ちょっ…ちょっと待って、待ってください」
向井が詰め寄る彼らを制止して、後ずさりした。
「ほら、向井君が困ってるでしょ。
皆お座りなさい」
「有難うございます。真紀子さん」
向井は天井を向くと一呼吸おいて、
話せる部分だけ伝えることにした。
「結論から言うと、
安達君は元々特殊な霊媒体質を持っているそうです。
なので霊対霊の対決が続くと、
コントロールが効かなくなってしまい、
体に負担がかかってしまうとのことです。
一応、今のところは問題ないので、
安心してください」
「ああ、よかった。何でもないんだ」
早紀がホッとしたように笑顔になった。
倒れた瞬間を見ていたので、
心配だったのだろう。
「今は冥王が見てますので大丈夫ですよ。
もうしばらく休ませますので、
皆さんもそのつもりでお願いします」
「でもそうなると、
あいつと組むのは危なくねぇか? 」
「そうですね。
当分の間、俺が安達君とバディを組みます」
「それじゃぁ、向井が危険じゃないか」
「危険な場所は牧野君の担当だから、安心でしょう? 」
「ちぇっ、そういう事かよ」
牧野は面白くなさそうに言うと、
「仕方ねえから、安達には楽な仕事をさせとけ」
ソファーにドスンと座り込んだ。
「牧野君はいい子ですね」
「い、いい子なんて言うな。子供じゃねえぞ!! 」
向井は牧野の背後に立つと、頭に手を乗せた。
「やめろよ」
牧野が手を払いのけるのを見て、
「本当に素直じゃないな~」
後から入ってきた新田が笑った。
「今、安達君の様子を見てきましたけど、
お腹が空いたって、
弥生ちゃんと一緒に食堂に行ったよ。
若いっていいよね」
新田がそういうと、
牧野と早紀が駆けだしていった。
「忙しないですね」
佐久間も笑うと、
「私も安達君の顔を見てきます」
「じゃあ、俺も」
と田所も一緒に部屋を出て行った。
愛情を知らずに育った安達も、
ここでは心配され、
大事に思ってくれるものがいる。
甘えられる場所を死んでから与えられる。
これを幸せというかは分からないが、
今の安達には必要なのだろう。
「安達君はちょっとひねくれ屋さんだけど、
私には可愛らしい子供ね。
みんなに愛されて幸せだと思うわよ」
考え込む向井を見て真紀子がほほ笑むと、
「お紅茶入れましょうかね。新田君も飲む? 」
「飲みます。手伝いますよ」
真紀子について行った。
向井は安達の様子を見ていて、
何故か自分の抜けている記憶を思い出していた。
あれは何なのだろう。
思い出せそうで、思い出せない……
多分、自分の死に、
関係していることなんだと思うのだが……
やはり、思い出せない……
向井はソファーに寄りかかると、
疲れたように目を閉じた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる