『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第一部

高価な宝石

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「宝石って高いよね~

私が持ってたのだって、

結構したからなぁ~

そういえばあれ、どうなったんだろう」

「身寄りがいなければ、

残余財産の国庫への帰属になるね」

横のテーブルにいた美樹本が、

本から目を離さずに言った。

「なにそれ」

「身寄りがいない場合の財産は、

国に従いますという事かな。

まあ、財産があればの話だけど」


美樹本は弁護士で、

別に思い残しがあるわけではなく、

再生の順番待ちでサロンにいる。

現在死神ディッセが、

彼から法律関係の教えを受けていた。


「安月給で貯金もないから、

そんな問題は心配ないけど、

じゃあ私の遺骨ってどうなってんの?」

「ああ、それは死神課で確認できますよ。

以前聞いたら、

俺達のは無縁遺骨だから、

合葬で散骨されてるそうです」

向井が言った。

「確かにここ何十年で無縁仏が増えてるので、

合葬墓も満杯で、

散骨にされてるところもありますね。

地域によってはビニール袋に入れて、

ゴミと一緒に処分されてるみたいですよ」

「うそ………でしょ?」

驚く早紀に美樹本は意味ありげに笑うと、

「僕も独り身なので亡くなった後のことは、

既に決めてましたから」

と言った。

「美樹本君って幾つ? 

若いのにそんな先のことまで考えてたの? 」

早紀がビックリした表情になった。

「弁護士をしてると色々あるんですよ。

人間いつ何が起こるかわからないので。

ほら、こうやって、

死んじゃうこともあるじゃないですか。

でも僕もそろそろ、

消去課に進めるそうなんで、

決まれば皆さんともお別れになります」

「そうなの。寂しくなるなぁ。

来世では殺されない人生が送れるといいわね」

早紀の言葉に美樹本が片笑んだ。

「まあ、頑張ります」


美樹本はある事件の被疑者に刺され、

死亡している。

魂の治療後一年待って、

ようやっと消去課に回されるくらい、

死人の順番待ちもひっ迫していた。

冥王が消去課の人数も増やしたいと言っていたが、

今の状況では難しい。


「まり子さんも石が届いたし、

作品の完成も間近ですか? 」

向井が言うと、

「もうほとんどできてるんだけど、

あと少し欲しい石があるから、

それが手に入ったら完成させるわ。

そのあと、

次に進むつもりよ。

向井さんにも色々無理言っちゃって、

ご免なさいね」

まり子は微笑むと作りかけの作品を、

見せてくれた。

静かに布を取ると――――

「これって、宝石画ですか? 」

美樹本も椅子から立ち上がり、

まり子の横に立った。

「この世界にきて、

ジュエリーじゃない、

もう一つの宝石の可能性を残したくなっちゃったのね」

まり子がウフフと笑った。

「最初はデザイン画を描いてたんだけど、

考えたら職人さんがいないじゃない。

そんな時にふと思ったの。

これが作りたいなぁって……

死んだ世界も美しいでしょう? 」

高級な石をふんだんに使った冥界の世界。

砕かれた宝石の輝きの中に、

希少石が散りばめられていて、

何とも形容しがたい景色が表現されていた。

「あと、ここにどうしても必要な石を、

幾つか入れられたら仕上がるから、

ギャラリーが出来たあとに、

花村も連れて行くつもり。

あの人、私と一緒ならついてくるわよ。きっと」

「あはははは。凄い自信~」

早紀があきれ顔で笑った。

向井も笑いながら、

こうやって一人また一人と消えていくんだな。

そんな冥界の移り変わりも、

向井にとっては嬉しくもあり寂しくもある。

成仏はしてもらいたい気持ちとは裏腹に、

そんな思いもあり、

少ししんみりした面持ちで、

彼らの姿を眺めていた。
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