『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第一部

牧野のバイト代

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向井がアーケードに戻ると、

霊の数もかなり減っていた。

三人の姿も見当たらないところをみると、

冥界に戻っているようだ。

「俺もいったん戻るとしますか。

虎獅狼はいつもどうしているんですか? 」

「俺か? 俺にも同類の仲間はいるからな」

「そうですか。遊ぶのはかまわないが、

あまり悪さをしないでほしいな」

「ふん!! 」

虎獅狼は去り際、

尻尾で向井の足を、

軽くポンポンと叩くと歩いて行った。


――――――――


向井は近くの神社に入り、

カァカァと鳴くカラスに手をあげると、

鳥居をくぐり、

冥界へと帰っていった。


神社にはそれぞれ神を守る霊獣がいる。

だが、

神の通り道とされている鳥居は、

魔除けの朱色ではあるが、

完全に魔を避けることはなく、

冥界の番人であるカラスと鷹が、

神使としてそこにいる。

神使には白鹿、犬、狐など他にも存在するが、

冥王の眷属はその時々で変わる。

その理由こそ神のみぞ知るだ。

特例が下界での非常事態の時に、

死神より早くに行動を起こすのが、

この眷属になる。


向井が戻ると休憩室で特例メンバーが、

大画面の前でスポーツ観戦に興じていた。

下界も冥界も世界大会に沸いているようだ。

「あっ、お帰りなさい」

早紀がソファーから立ち上がり、

ワインの入ったグラスを持ってきた。

「はい。今日は牧野のおごり。

結構なバイト料が入ったらしいよ~」

「今日の主役は俺様だ~!! 

まあ、安達も頑張ったけどな」

牧野が楽しそうに親指を立てた。

休憩室の壁一面に大画面があり、

その前にはコーナーローソファー、

更にロングテーブルが置かれていた。

全面にマットが敷かれているので、

既に酔った状態で田所が寝転がっていた。

「おかげで当分、霊電持ちそうです」

佐久間が部屋に入ってきた。

「お疲れ様です。

今日はお守りを有難うございました」

「お守り………」

安達はむすっと不貞腐れるとピザにかぶりついた。

「ごめんごめん。安達君には感謝してますよ。

今日もずいぶんと働いてくれたみたいで、

助かったよ。だからこれ、お土産ね」

そういうと、

安達が欲しがっていたアニメグッズを手渡した。

「!! あ、有難う」

途端に安達の顔がきらきらと、

嬉しそうに輝いた。

「安達だけかよ。俺のは? 」

「ないですよ。

牧野君は安達君より先輩だからって、

前に言ってたじゃないですか。

お土産ぐらいで目くじら立てたりしないでしょ」

むくれる牧野を笑いながら見ると、

向井は佐久間と早紀に小声で言った。

「あのアニメグッズ。高くてびっくりですよ。

山川さんに聞いてお店に行ったんですけど、

驚きました」

「そうでしょうね。

今アニメ産業は、

肝いり案件の一つですから。

漫画法案も多くなって、

検閲も厳しいですけど、、

政府使用には著作権も曖昧になって、

使い放題の所もありますから」

「まあ、安達君がご機嫌なんでいいですけどね」

そんな話をしていると、

インフォメーションが流れてきた。

「賽の河原より舟が到着されます。

保護課、派遣課のスタッフ、

または手の空いているスタッフは、

玄関口までおいでください」

「幼い子供の霊は、

いつになっても慣れないですね」

向井はそういうと、

「安達君行きますよ」

ワインを飲んでグラスを早紀に手渡すと、

部屋を出て行った。
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