『アンダーワールド・続編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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続編 新年の呪い

捨て地の在り方

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牧野がドアを開けると、

昔ながらに鈴の音色が響き、

「いらっしゃいませ」

とカウンターから店主が声をかけた。

昔の軽食喫茶といったモダンなお店はレンガ造りで、

牧野は珍しそうに店内を見ていた。

「何名様ですか」

店主の娘と思われる女性がメニューを手にやってきた。

「六名なんですけど」

「では、奥の窓際はソファーなので、

そちらにどうぞ」

向井の言葉に女性はそう言うと席に案内した。

店内にはお客の姿もあり、

この辺は通常に会社も動いているようだ。

「最近はお正月休みが長い所が多いので、

お店が開いていて助かりました」

トリアがメニューを受け取り言った。

「この辺は個人企業の地域なので、

お正月休みも三が日だけの所が多いんですよ。

なのでうちのような軽食のお店は、

年中無休な感じでやってるんです」

「大変ですね」

アートンがメニューから顔をあげた。

「そうでもないですよ。

定食屋や喫茶店が多いので、

うちがお休みしても困ることないですし。

儲けは出てるので助かってます」

女性は笑いながら話した。

「お客さんはお仕事ですか? 」

「はい。

捨て地はフリーランスの方が多いですよね」

お客を見て向井が口を開いた。

「そうですね。この辺は地産地消エリアなんです。

中央の捨て地の中では田舎ですし、

ファミリー層より個人の方の方が多いですね」

「そうなんだ」

新田も頷きながらメニューを見ると、

「このモーニングセットは凄いなぁ~

パンの中はシチューだ」

と牧野と目を輝かせながら言った。

「うちの人気メニューです」

女性の言葉に、

「だったら俺はこれにしよ~」

牧野が言い、

「美味しそうだね。だったら俺達もこれにしましょうか」

向井もメニューを見て皆の顔を見た。

「そうだね」

オクトもいい、注文をした。

女性は頭を下げるとテーブルを離れていった。

「捨て地はマルシェが盛んだから、

地産地消エリアも増えてるよね。

生活様式が黒地とは全く違う」

アートンもゆったりと食事をする客の姿に、

安心したようにため息をついた。

「大手企業が少ない分、

個人企業が生き残れているのかもしれないな。

それぞれが相互関係でうまくやってるんだよ」

オクトも窓から景色を眺めながら言った。

「そういえばイベントは来週だっけ? 」

アートンが向井を見た。

「はい。黒谷君には申し訳ないんですけど、

行きと帰りで調査するので三、四日かかるんですよ」

「聞いてるよ。その間喫茶店はお休みになって、

出掛ける当日と翌日だけオープンするから、

セーズとゼス、

エハが喫茶店に行くことになってる」

オクトが説明した。

「行きはいいんだけど、帰りはチビがうるさいだろうな」

アートンがそう言ったところで食事が運ばれた。

「お待たせしました」

ワゴンに乗せて運んできたパンの香りに、

「美味しそう~」

牧野が笑顔になった。

嬉しそうな顔を見て、

「ごゆっくりどうぞ」

女性は笑顔で戻っていった。

「うちではバケットシチューだけど、

厚切り食パンならチビでも食べられそうね。

皆で付けて食べて」

トリアがシチューを食べながら言った。

「そうですね」

向井も笑顔で食べながら、

「チビには連絡を入れるので大丈夫だと思いますけど、

こんの様子だけ気になるので、

何かあれば知らせてください」

とアートンを見た。

「あ………そうだよね。

こんはこの所少し不安定だからね。

三鬼はハクとクロウのお陰か、

うなされることがなくなってるけど」

「そうだね。

ハクは龍神が静かなら問題ないし、

クロウが来てからは大分落ち着いてるよね」

オクトがパンをシチューに浸しながら言った。

その時何かを思い出したのか、

牧野が話し出した。

「そうだ。ハクがさ~育毛剤を使ってるんだよ」

その話にトリアとアートンが笑った。

「えっ? ハクは髪の毛を気にしてるんですか? 」

「気にしてるって子供が育毛剤なんて使わないだろ? 」

向井と新田が驚く顔で口を開いた。

それを聞いて、

「違うのよ。あれはね。虎獅狼が使ってるものなの」

「そうなの? 」

トリアの話に牧野が驚いた。

アートンが笑いながら、

「使い終わった空ボトルで水鉄砲をしてるんだよ」

「なんだよ~みんな知ってるならそういってよ。

俺さ~ハクは禿げを気にしてんのかと思ったじゃないか。

ほら、自分でブラシしながら首傾げてんじゃん」

牧野がシチューを食べながら言った。

「ハクとクロウはブラシで頭皮を叩いてるだけですけどね」

向井も髪を梳かすことのできない二人の姿を思い出し笑った。

「皆の真似をしてるだけで、

結局は私達がやってるからね」

トリアも食べながら笑った。

「来週は西の怨霊塚もあるから、

牧野にはしっかり働いてもらわないとね」

「………まぁ、向井も弥生もいるからいいけどさ」

トリアに言われ、渋々な感じに言う。

「そうやって弥生ちゃんにフォローしてもらっていたら、

いつまでたっても勇者になれませんよ」

「えっ? 俺、勇者だよね」

牧野は驚く顔をすると皆を見た。

呆れ顔の向井達に、

「今日だって綺麗に除去出来たじゃん。

あんだけ悪霊膨れてたのにさ。

俺、頑張ったぞ」

牧野は偉そうに言うとパンを頬張った。

「まぁ、

一人で片づけられる力があるのは間違いないですけどね」

向井は苦笑するとサラダを口に入れた。
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