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番外編 冥界の逆襲
特例の誕生秘話
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「多分、向井さん達は、
このまま冥界に残ることになると思うよ」
「えっ? 」
向井は手に持っていた霊玉を、
悪霊に向けて放ちながらアートンを見た。
「特例の数が少ないでしょう。
冥王は今の状態がベストだと思ってるから、
新しいスタッフを入れない。
まぁ、黒谷君のような特別な能力があれば別だけど、
そうじゃない限りは特例の赤ランプは消してるから」
アートンの話に向井も静かに笑った。
「大体特例が出来たのって、
今から百数十年前?
あの大戦の後らしいんだ。
トリアの時には寿命を待たずに亡くなった魂は、
鬼籍の記録に合わせて、
その時まで壺で眠ってたらしいから」
「という事は、今の冥王が特例を作ったという事ですか? 」
向井が驚いて足を止めるとアートンを見た。
「あ~そうだね。向井さんが知ってるあの大沢の祖父?
彼が戦後の復興に人柱を行ったのが始まり。
僕はその当時を知らないから詳しくは分からないけど、
あの時は縊鬼の数も多かったし、
トリアも他の死神と、
この国の機密書物を調査してたから、
色んなことが重なって、
儀式が抜け落ちていたらしい」
「………特別室が出来たのもその時ですか? 」
向井が考え込みながら聞くと、
「いや、それはもっと古い。
トリアの代にはあったから、
歴史の教科書でしか知らない人物もいたらしいよ」
「そうなんですね」
アートンの話に頷いた。
「特別室に大沢家が来るようになって、
当時使われていなかった御託宣室が動き出したんだ」
「それは儀式を行ったことで、
ジオードが動き出したってことですか? 」
「そうなるね。
冥界と下界のジオードがリンクしてたって言う証拠。
少し前まで御託宣室が動いてたのは、
ミデンが転送ミスで欠片を下界に残してたから。
今は御託宣室も閉ざされてるでしょう」
「あ………そうですね。
消えたわけじゃないんですよね」
向井もすっかり忘れていたので、
思い出すように上を向いた。
「昔から多くの国で人間を神にささげる儀式は、
行われてきたんだけど、
神はそんなものを必要としてないからね。
特にうちの冥界では忌み嫌うんだよ。
冥王見ればわかるでしょ」
アートンが言った。
「という事は俺は当分このままという事かな」
「そうなるね。
冥王もまだ二百年。
仕事はきつくても僕達死神も消えることはないから、
特例も魂の消滅まで働かされるかもね」
嫌な顔をする向井にアートンは笑った。
冥界に戻ると、
休憩室から賑やかな声が聞こえてきた。
「丁度夕食の時間だね」
アートンが言いながら霊銃を返却すると、
「下界はどうだった? 」
カトルセが言った。
「変わらないよ。
真っ黒の中で普通に生活してる」
アートンがサインしながら笑った。
「悪霊は毎日膨れ続けてるから、
気長に除去していきます」
向井も笑うとチェックを入れた。
「チビ達はもう夕食食べてるの? 」
「これからだよ。
多分ホットプレートで焼いてるんだと思うよ」
賑やかなチビ達の声にカトルセが言った。
「俺達が最後ですか」
「そうだね。俺も今日は真紀子さん達と、
コンテストの会議をしてたからさ」
「おっ、もう内容は決まってるんだ」
アートンが笑いながら振り返った。
「まぁね。今回は真紀子監督が、
色々考えてるみたいでさ」
カトルセも楽しそうに話した。
「二週間しか時間がないから大変だよ」
そこに妖鬼が三人を見かけて近づいてきた。
「そっちはどう? 」
アートンが聞くと、
「うちは田所さんが監督で坂下さんがいるから、
スポ根にするってさ。
俺もバレーボールの練習させられてる。
悪霊退治なのにさ」
妖鬼のため息に向井達は笑った。
このまま冥界に残ることになると思うよ」
「えっ? 」
向井は手に持っていた霊玉を、
悪霊に向けて放ちながらアートンを見た。
「特例の数が少ないでしょう。
冥王は今の状態がベストだと思ってるから、
新しいスタッフを入れない。
まぁ、黒谷君のような特別な能力があれば別だけど、
そうじゃない限りは特例の赤ランプは消してるから」
アートンの話に向井も静かに笑った。
「大体特例が出来たのって、
今から百数十年前?
あの大戦の後らしいんだ。
トリアの時には寿命を待たずに亡くなった魂は、
鬼籍の記録に合わせて、
その時まで壺で眠ってたらしいから」
「という事は、今の冥王が特例を作ったという事ですか? 」
向井が驚いて足を止めるとアートンを見た。
「あ~そうだね。向井さんが知ってるあの大沢の祖父?
彼が戦後の復興に人柱を行ったのが始まり。
僕はその当時を知らないから詳しくは分からないけど、
あの時は縊鬼の数も多かったし、
トリアも他の死神と、
この国の機密書物を調査してたから、
色んなことが重なって、
儀式が抜け落ちていたらしい」
「………特別室が出来たのもその時ですか? 」
向井が考え込みながら聞くと、
「いや、それはもっと古い。
トリアの代にはあったから、
歴史の教科書でしか知らない人物もいたらしいよ」
「そうなんですね」
アートンの話に頷いた。
「特別室に大沢家が来るようになって、
当時使われていなかった御託宣室が動き出したんだ」
「それは儀式を行ったことで、
ジオードが動き出したってことですか? 」
「そうなるね。
冥界と下界のジオードがリンクしてたって言う証拠。
少し前まで御託宣室が動いてたのは、
ミデンが転送ミスで欠片を下界に残してたから。
今は御託宣室も閉ざされてるでしょう」
「あ………そうですね。
消えたわけじゃないんですよね」
向井もすっかり忘れていたので、
思い出すように上を向いた。
「昔から多くの国で人間を神にささげる儀式は、
行われてきたんだけど、
神はそんなものを必要としてないからね。
特にうちの冥界では忌み嫌うんだよ。
冥王見ればわかるでしょ」
アートンが言った。
「という事は俺は当分このままという事かな」
「そうなるね。
冥王もまだ二百年。
仕事はきつくても僕達死神も消えることはないから、
特例も魂の消滅まで働かされるかもね」
嫌な顔をする向井にアートンは笑った。
冥界に戻ると、
休憩室から賑やかな声が聞こえてきた。
「丁度夕食の時間だね」
アートンが言いながら霊銃を返却すると、
「下界はどうだった? 」
カトルセが言った。
「変わらないよ。
真っ黒の中で普通に生活してる」
アートンがサインしながら笑った。
「悪霊は毎日膨れ続けてるから、
気長に除去していきます」
向井も笑うとチェックを入れた。
「チビ達はもう夕食食べてるの? 」
「これからだよ。
多分ホットプレートで焼いてるんだと思うよ」
賑やかなチビ達の声にカトルセが言った。
「俺達が最後ですか」
「そうだね。俺も今日は真紀子さん達と、
コンテストの会議をしてたからさ」
「おっ、もう内容は決まってるんだ」
アートンが笑いながら振り返った。
「まぁね。今回は真紀子監督が、
色々考えてるみたいでさ」
カトルセも楽しそうに話した。
「二週間しか時間がないから大変だよ」
そこに妖鬼が三人を見かけて近づいてきた。
「そっちはどう? 」
アートンが聞くと、
「うちは田所さんが監督で坂下さんがいるから、
スポ根にするってさ。
俺もバレーボールの練習させられてる。
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妖鬼のため息に向井達は笑った。
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