『アンダーワールド・番外編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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番外編 新たな動き

映像コンテスト再び

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「安達君は見に行かないの? 」

フェムトンがカウンターから声をかける。

「ん………」

「どこか調子悪い? 」

トリアが心配そうに言うのを見て、

「何か気になる事でもありますか? 」

と向井が聞いた。

「気になる………ん~………あのさ~」

安達はどういっていいのか分からない感じに、

ぽつりと話し始めた。

「俺ね………知らないうちに寝ちゃうことあるでしょう」

「そうですね。それはお薬のせいですから、

気にしなくても大丈夫ですよ」

「ん………そうなんだけど、

最近夢を見なくなったの。

寝てるときの記憶がないんだ」

その言葉に新田が不思議そうな顔をした。

「別に普通だよ。

俺なんか夢見たのいつかなぁ~

思い出せないよ」

「えっ? 」

驚く安達に、

「そうよ。夢を見なくても普通」

トリアも笑顔で話した。


安達君は寝ててもうなされることが多く、

医務室で休憩している時間も長い。

最近それがなくなったのは、

それだけ魂が洗浄できているからだろう。

寝ている間は魂も動かないで、

攻撃することもない。

きっと、生まれた時から、

ずっと攻め続けられていたので、

夢の中でも戦っていたのかもしれない。


向井は安心させるように微笑むと、

「ぐっすり眠れるようになったという事は、

それだけ体が丈夫になってる証拠なんですよ」

「ホント? 」

嬉しそうに笑顔を見せる安達に、

向井達も笑った。

「そうだよ。快眠は健康のバロメーターなんだからさ」

オクトが背中を叩くと、

「安達もコンテスト出るだろ? 」

牧野が廊下の角から顔をのぞかせて聞いた。

「行ってきたら? 」

向井が言うと、

「うん」

楽しそうに走って行った。

「安達君は寝てても苦しんでいたって事ね」

「それじゃ、食欲も出ないし、

成長もできなかったよね」

トリアとオクトが安達の後姿を見ながら言った。

「でも、今はあんなに成長して」

「そうそう。牧野君を追い越すかもしれないよね」

シェデムと新田が話しながら笑った。


夕食はコンテストの話で盛り上がり、

今回は五人一組で五~十分の映像で競うことになった。

「この前は凄く盛り上がったじゃないですか。

で、尺の問題でうまくストーリーが作れなかった、

という声もあったので、

思い切って時間を増やしました」

冥王がきんぴらを口に入れると、

皆を見た。

「既に西と北からはエントリーされたので、

人数の多い中央はヴィヴィが参加者リストから、

決めるそうです」

「ええ~またヴィヴィ~あいつ絶対、

俺に悪意を持ってるぞ。

今回はくじ引きがいい! 」

牧野がトンカツを食べながら文句を言う。

『私は人間と違い、不正は行いません』

突然ヴィヴィの声が聞こえてきた。

バーチャルアシストは冥界中を見ているので、

ある意味ヴィヴィが一番、

秘密を握っているのかもしれない。

「本当に公正かよ」

牧野が上を向いて言った。

『能力をきちんと振り分けないと、

出来上がりに偏りが出てしまいます。

実際に悪霊除去をしに行っているのですから、

危険回避の為にも、

能力値で組み合わせをします』

「………」

不満そうに箸を銜える牧野に、

『もし、また牧野がディッセとチームでも………』

「えっ? またディッセ? 」

牧野が少し離れた場所に座るディッセの顔を、

テーブル越しに乗り出してみた。

「牧野君はそんなに俺が嫌いなんだ………」

ディッセがわざとらしくしょんぼりご飯を食べる。

「別に嫌いじゃねぇよ。俺は勝ちたいの! 」

牧野の話に皆が笑っていると、

ヴィヴィが話し出した。

『少し考えてみてください。

この組み合わせはディッセに比べ、

牧野の能力値が高いという証明でもありますよ』

「!! 」

牧野の目が見開き、箸を銜えたままニヤリとなった。

「まぁ、俺様は勇者だからな」

『ではそういう事で。フッフッフ』

ヴィヴィはそれだけ言って消えた。

牧野はこれで一人はディッセだと決まったのだが、

そんな事も忘れご機嫌でご飯を食べ始めた。

「あの子の耳は都合がいい耳よね」

トリアも笑うと西京焼きを小皿に乗せた。
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