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番外編 騒ぐ下界

大震災後の闇黒

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「そう。それです」

向井も笑顔で頷いた。

「まぁ、そのあとはあの大震災があって、

国が戦前に戻りつつあったので、

暮らしも悪化しましたけど」

「そうよね。向井君が中学生くらいだもんね。

牧野は二、三歳か?」

トリアが思い出すように話した。

「俺は怖かったことは少し記憶にあるけど、

あんまり覚えてない」

「無理に思い出さなくてもいいんですよ。

あの大災害は地獄でしたから。

それを生き抜いた牧野君も俺も、

そして源じいも運がいいんです。

だから、今すべきことをする。

俺達がここにいる理由はそこにあるのですから」

「そっか」

牧野が笑顔で向井を見た。

そんな二人の姿に冥王がぽつりと話し出した。

「大沢帝国の二十年は、

この国の素案の時代です。

大沢が生きていれば手中に収めるための策を、

国民を生かさず殺さず行っていたでしょう。

まさか自分がこんなに早く亡くなるとは、

思ってもいなかったでしょうからね。

今の田口率いる政権は、

その素案も知らぬまま、

我が田に水を引くようなことを進めているので、

綻びが出ているんです。

このまま膿を出し切るまで、

捨て置くことが神の総意です。

ただ冥界は巻き込まれていますから、

可能な範囲で補佐をしましょうと、

許諾頂いたという訳です」

向井達はその話を黙って聞いていた。

「とりあえずは今の状態を維持しつつ、

様子見かな? 

ただ、少し胡散臭い動きはあるんだけどね」

アートンはそういうと皆の顔を見た。

その時、

「おぉ~向井は戻っておったか? 」

赤姫が真紀子、早紀、安達と工房から戻ってきた。

「チビはまだ寝てるの? 」

早紀は笑うと寝顔をのぞいた。

「おやつ? みんなは何を飲んでるのかしら」

真紀子がそういいながらキッチンにいった。

向井は立ちあがると、

「アップルティーです。

真紀子さん達もそれにしますか? 」

と近づいた。

「飲む~」

安達と早紀が手をあげ、

テーブルに並ぶブラウニーに顔を輝かせた。

「これ、あのお店のだ。

行ってきたの? 」

「美味しそうだの~」

興奮する安達に赤姫も微笑みながらおやつを見た。

「で、カードデコは作れたの? 」

アンがブラウニーを食べながら話した。

「あれは難しいの~

みな、簡単に作っていたが、

ホイップが作れん」

赤姫もフルーツのブラウニーを手に取ると、

嬉しそうに口に入れた。

「でも、あの色合いは素敵ですよ。

やはりお着物を着ているからかしら。

重ね色が美しいの」

真紀子が向井と一緒に、

アップルティーを運んでくると言った。

「そうそう。今、固めてるから、

出来上がったら見てみるといいわよ。

凄く可愛い」

早紀も褒めると、赤姫は嬉しそうに照れた。

そんな姿を冥王達も微笑ましく見ていた。

「そうだ。シーリングスタンプが少なくなったから、

また作って」

安達がキャラメルブラウニーを食べながら、

向井を見た。

「牧野が使い過ぎなのよ。

デコに幾つも乗せちゃってさ」

早紀が文句を言う横で、

「そうよね。私も使おうと思ったら、

欲しいのがみんな無くなってた」

フェムトンも牧野をじっと見た。

「いいじゃん。飛行機とか~土星とか~

デコしてたら止まんなくなった」

牧野が楽しそうに笑った。

「そんなに喜んでいただけるなら、

また作りましょう」

向井も笑顔になるとブラウニーを口に入れた。
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