『アンダーワールド・番外編』冥王VS人間～魑魅魍魎の戦が今始まる～

八雲翔

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番外編　騒ぐ下界

イベント前日

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この日も中央で田口率いる議員たちが、

国民処罰法を可決した。

それに伴い何人もの記者が逮捕され、

メディアも政策に逆らうものは、

スパイとして国に引き渡すことに同意。

それを朝から速報として流していた。

大臣が各メディアに対し、

国の方針に沿った報道以外は、

放映を禁止するとの通達をし、

業界でも右往左往と大騒ぎしていた。

メディアの間でも、

一部の記者が中途半端に正義をちらつかせ、

要らぬ怒りをかったせいだと、

不満の声が上がっていた。

道徳の在り方も変わり、

２０２０年から六十年近くで、

自国民の数は全体の半分。

更に人口が減少しているので、

ここはどこの国なのかという状態だ。

各省庁は、

自分達の子会社に裏金を確保させる目的で、

法案を通し続けた。

結果、年金情報、国民証明証はあらゆる市場で、

売り買いされる事件にもつながっていった。

外国人たちの中にはそれを使い、

スパイとして入り込み、

住み続けるものもいる。

また多くの犯罪も横行していた。

唯一人食いビルの周辺は、

黒地でありながら白地になっており、

負の人間は入り込めない。

中央では安全確保がされた黒地の一つだ。

道の一部分は捨て地につながり、

そこで暮らす者の生活を確保させた。

牧野がお世話になったじいちゃん先生のお寺も、

そこにある。

向井達は下界に下り、

立ちつくしていた。

「これじゃ、一向に良くなんねえよ」

牧野が口を尖らせた。

「牧野君の死神が逆効果になってしまいましたね」

向井が困った顔で笑った。

「笑い事じゃすまないよ～」

ヴァンも黒地の様子を見ながら嘆いた。

「そうですよね。でもここは国の中枢ですから。

悪霊だらけで冥界にとってはいい餌場ですね」

向井の言葉に牧野達の顔が引きつった。

「冥王に相談してみますか。

今トリアさんとアートンさんが、

拘束されている人達の様子を、

確認しに行ってるんですよ。

取り残された人が亡くならないように、

魂を選別してもらって、

捨て地で暮らせるよう基盤を作ってもらわないと」

向井は黒地民の動向を見つめながら腕組みした。

なんとか捨て地に逃げられた記者や国民はよかったが、

逃げられずに捕まったものもおり、

政府に逆らうものは関係なく拘束される事態になっていた。

大沢の時代に出来た政権迷惑法。

政権に対する不満、迷惑行為などは、

偵察ドローン・監視カメラにより見張られ、

何かあれば拘束されることもあった。

「俺が生きてるときもバイト先の大将が、

法案に逆らって三日間拘束されたことあったんだよね。

出るのに三十万くらい払ったって、

おかみさんが泣いてた。

あの時より酷いよな」

牧野が向井を見た。

「そうですね。特別室がなくなって、

国のトップを狙う者達にとって、

自分を阻むものはなくなったわけですからね。

そう考えると、

悪であった特別室も抑止力になっていたんですね」

「俺、明日のイベント行きたいんだよね」

牧野の声に、

「私だって行きたい！」

「俺も～」

エハとヴァン、ティンも言いながら向井を振り返った。

「中央の黒地は負が強いので、

ある程度綺麗にしておけば、

明日は眷属が見てくれるそうですから、

牧野君に張り切ってやっつけてもらいましょうか」

向井は牧野に向き直ると笑顔で肩を叩いた。

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