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番外編 龍神向井
龍神現る
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「おぉ………凄ぇ~カッコいい………」
牧野がゲームキャラクターのような向井の変身姿に、
口を大きく開けて見つめていた。
期待はできないが、
災害も増えているので、
捨て地への抑止力になれば………
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「牧野君、除去を開始してください」
向井は龍神の姿のまま話すと、
空中に浮かび上がった。
数日前―――――――――
悪霊調査を終えた向井とディッセは、
究鬼に呼ばれ研究室に来ていた。
二人が入室すると、
「君達が調べてくれた地域には、
災害を出来るだけ抑えられるよう、
霊玉を埋めるから安心していいよ。
プレートは自然のものだからどうにもならないけど、
悪霊は抑え込める。
ご苦労様でした」
究鬼の言葉に二人はホッとした。
「冥王とも話したんだけど、
国交問題を抱えている国は、
紛争を防ぐための交渉がこじれることも多い。
この国もそういう意味では外交下手でしょ。
でも、捨て地の存在があるから、
簡単には攻め込めない」
「そうですよね」
小さく頷く向井を見て、
「各国にとってバリアの存在は、
最も恐れるものの一つだろうからね。
ここでもスパイが何人も、
結界に弾かれて消滅しているんだよ。
表向きは自然発生と発表されているが、
他国では独自に研究された兵器と、
問題視されてる。
まぁ、それぞれスパイが消されても、
表沙汰にもできない理由もあるからね」
究鬼が苦笑いした。
「あぁ、証明証のなりすましね。
行方不明者の国民も多すぎて、
下界では把握できていないから。
冥界では分かってるけど」
ディッセも笑った。
「平和主義国家とされていますが、
今は新たに防衛隊も作られて、
風向きがいつ変わったとしても、
おかしくはない状況ですからね。
近づくこともできないし、
捨て地を研究対象にしたくても、
神の結界ですし、
動けないので不満が鬱積してるんだと思います」
ため息をつく向井に、
「神秘の呪われた国か………」
ディッセも顔を顰めた。
「そういう事だね」
究鬼も肩をすくめると、
「それでね、向井君にはこれを使って、
ちょっとだけお灸をすえて欲しいんだ」
といって霊玉を手渡した。
掌に乗せられた玉を見ると、
中に河伯の印が込められていた。
「これは? 」
向井が究鬼を見る。
「中にあるのは九頭竜です。
九というのは縁起の良い数字なんだよ。
0から始まり九で終わる。
冥界では魂のリサイクルと言ってるね。
だから九頭竜は天界の神でもあるんだ。
この霊玉は神からの制裁。
向井君は西でも龍を使って捨て地を守ったでしょ」
「あれはハクの力で俺ではないです」
向井は否定しながら、ハッとなった。
その表情に究鬼がニコニコと笑う。
「あ………灸を据える。そういう事ですか」
「なに? どういう事? 」
ディッセが意味が分からず二人の顔を交互に見つめた。
「あ、つまり、ここにある龍を使って、
脅かしてみたら? という事ですよね」
「そう。山口大臣も辞任しないまでも、
少しの間は大人しかったでしょ。
恐怖で捨て地にも近づかなかったし」
究鬼もあきれ顔で笑った。
「ここにきて少しずつ国際社会でも、
捨て地迫害が話題に上がるようになったし、
人権問題にもなってる。
この国は変わらないかもしれないが、
それでも慈愛の芽が一つ二つ芽生えれば、
長い年月で変化するんじゃないの?
なんといっても、
何千年と続く歴史があるんだからね」
「そうですね」
向井も小さく笑った。
牧野がゲームキャラクターのような向井の変身姿に、
口を大きく開けて見つめていた。
期待はできないが、
災害も増えているので、
捨て地への抑止力になれば………
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「牧野君、除去を開始してください」
向井は龍神の姿のまま話すと、
空中に浮かび上がった。
数日前―――――――――
悪霊調査を終えた向井とディッセは、
究鬼に呼ばれ研究室に来ていた。
二人が入室すると、
「君達が調べてくれた地域には、
災害を出来るだけ抑えられるよう、
霊玉を埋めるから安心していいよ。
プレートは自然のものだからどうにもならないけど、
悪霊は抑え込める。
ご苦労様でした」
究鬼の言葉に二人はホッとした。
「冥王とも話したんだけど、
国交問題を抱えている国は、
紛争を防ぐための交渉がこじれることも多い。
この国もそういう意味では外交下手でしょ。
でも、捨て地の存在があるから、
簡単には攻め込めない」
「そうですよね」
小さく頷く向井を見て、
「各国にとってバリアの存在は、
最も恐れるものの一つだろうからね。
ここでもスパイが何人も、
結界に弾かれて消滅しているんだよ。
表向きは自然発生と発表されているが、
他国では独自に研究された兵器と、
問題視されてる。
まぁ、それぞれスパイが消されても、
表沙汰にもできない理由もあるからね」
究鬼が苦笑いした。
「あぁ、証明証のなりすましね。
行方不明者の国民も多すぎて、
下界では把握できていないから。
冥界では分かってるけど」
ディッセも笑った。
「平和主義国家とされていますが、
今は新たに防衛隊も作られて、
風向きがいつ変わったとしても、
おかしくはない状況ですからね。
近づくこともできないし、
捨て地を研究対象にしたくても、
神の結界ですし、
動けないので不満が鬱積してるんだと思います」
ため息をつく向井に、
「神秘の呪われた国か………」
ディッセも顔を顰めた。
「そういう事だね」
究鬼も肩をすくめると、
「それでね、向井君にはこれを使って、
ちょっとだけお灸をすえて欲しいんだ」
といって霊玉を手渡した。
掌に乗せられた玉を見ると、
中に河伯の印が込められていた。
「これは? 」
向井が究鬼を見る。
「中にあるのは九頭竜です。
九というのは縁起の良い数字なんだよ。
0から始まり九で終わる。
冥界では魂のリサイクルと言ってるね。
だから九頭竜は天界の神でもあるんだ。
この霊玉は神からの制裁。
向井君は西でも龍を使って捨て地を守ったでしょ」
「あれはハクの力で俺ではないです」
向井は否定しながら、ハッとなった。
その表情に究鬼がニコニコと笑う。
「あ………灸を据える。そういう事ですか」
「なに? どういう事? 」
ディッセが意味が分からず二人の顔を交互に見つめた。
「あ、つまり、ここにある龍を使って、
脅かしてみたら? という事ですよね」
「そう。山口大臣も辞任しないまでも、
少しの間は大人しかったでしょ。
恐怖で捨て地にも近づかなかったし」
究鬼もあきれ顔で笑った。
「ここにきて少しずつ国際社会でも、
捨て地迫害が話題に上がるようになったし、
人権問題にもなってる。
この国は変わらないかもしれないが、
それでも慈愛の芽が一つ二つ芽生えれば、
長い年月で変化するんじゃないの?
なんといっても、
何千年と続く歴史があるんだからね」
「そうですね」
向井も小さく笑った。
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