『アンダーワールド・番外編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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番外編 龍神向井

下界の騒ぎ

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翌日、下界中央では、

上区の役所の前では人が溢れる大騒動が起こっていた。

人が騒げば悪霊も広がり、

西の都、北の都でも小さな騒ぎになっていた。

悪霊が動き出すことで災害も増え、

捨て地だけ守られる風景に、

SNSも荒れ狂っていた。

ただ、AIの逆襲も恐怖となり、

誹謗中傷は極端に少なくなったが、

その分の不満が黒地の中で、

犯罪となって広がっていった。


向井達は朝早くから下界に下りると、

上区のお騒がせ国民を眺めていた。

「あれは何を騒いでるんだ? 」

牧野が腕組みしながら首を傾げた。

集団で建物を囲んで騒いでいるが、

いるのは多くが外国人。

国の違う他国のものがそれぞれ土地を占拠し、

土地取り合戦をしているようだ。

「移民が増えて、

更に難民迄受け入れてるわけですからね。

この狭い土地にこれだけの外国人ですよ。

自分達の領土を増やすために、

争いが起こっても不思議ではないです。

今まで暴動が起こらなかったのが不思議なくらいですよ」

佐久間も暗い表情で見ていた。

「もう六、七十年以上前から、

この問題は片付いていないですからね。

医療費と介護問題でも揉めてるんでしょうね」

「そうなの? 」

牧野が向井を見た。

「捨て地は流刑地扱いなので、

保険料を払っていても点数が貰えないから、

受けられる医療は限られています。

だから、医者とボランティアに助けられて、

最期を迎えてるでしょう。

寿命も多くの人が七十まで生きられないし。

だけど黒地は階級制度が強く残ってるので、

一応生活は充実してます」

「………」

牧野が口をすぼめる。

「まぁ、それも今まではですけど」

向井が牧野の顔を見て笑った。

「捨て地に回すお金をかすめて、

黒地民の為に使われてきたのに、

外国人が増え過ぎて、

黒地に住む国民が恩恵を受けられなくなったんですよ」

「だから暴動が起こってんのか」

牧野はムスッとした顔で集団を見ていた。

「今まで受けていた恩恵が外国人にいくわけだから、

国民が不満を言い出したの。

黒地も三分の一は他国に取られてるから、

既に日本じゃないし。

でも外国人からしたら、

数が増えてるし支援金が足りないんでしょう。

生活費も支払われてるし、

医療費も介護施設も無料なんだから、

それで我慢してもらいたいんだけどね。

動画アーティストもメディアも、

捨て地に入れなくなって、

姥捨て山団地の荒らし動画も撮影できないでしょ。

金儲けできなくて気持ちもくさってるのよ」

トリアも膨れ上がる悪霊を見ながら話した。

「今のトップはこの状況を上から眺めて、

ほくそ笑んでるんだろうな」

「どうして? 」

ティンがトリアを振り返って聞いた。

「自分達政府に不満が行かないように、

うまい事捨て地を使って分断させてるからよ。

黒地国民の不満を捨て地に仕向けてるの」

「そういう事か」

新田も顔を顰めた。

「国は邪魔な高齢者を減らし、

子育ては完全無償化。

現役世代が未来を生きられるよう、

表面上の法整備をしてきたから、

黒地民は小躍りしてたでしょ。

だけど蓋を開けたら議員の裏金だけじゃなく、

官僚、大企業だけが儲けられるシステムになって、

年金も医療費も他に流れてるんだから不満爆発よ。

今騒動を起こしてるのは、

その時の子は宝だ~って騒いでいた第三世代。

自分達が年を取ったんで問題化してるの。

横を見れば憎き捨て地には青空が広がり、

通常に暮らせてるんだから悔しいと思うわよ」

「だったら、捨て地に来ればいいのに」

「そういう人間は入ったとたんに消されちゃうわよ。

それに入れたとしても、

SNSもスマートゴーグルも電波障害が起こるし、

百年前の暮らしに近い場所で暮らせるとは思えない」

シェデムも笑うと、牧野の背中を軽く叩いた。

「でもさすがにトップも焦りはあると思うわよ。

外国人犯罪の多くは逮捕できないのに、

抗議活動は階級区の付近で行われてるんだから。

まずはあの集団を少し散らさないと、

悪霊が膨れっぱなしで除去してもキリがないわよね」

「そうですね………」

向井も空を見上げながら少し考え込んだ。

「ん~………あの場所は少し放っておきましょうか」

「えっ? 」

向井の言葉に全員が驚いて振り向いた。
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