『アンダーワールド・番外編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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番外編 冥界

成長する安達

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安達が診察している間、

向井は二人の神に挟まれ、

楽しそうな雑談を聞いていた。

神の噂話も冥界暮らしが長くなれば面白い。

人間界で教わる話しは、

ここでは全く役に立たない。

向井はお茶を飲みながらクスリと笑った。

「なんですか。一人で思い出し笑いなど。

どれ、ここにいる父上達に話して見なさい」

冥王が言った。

「何がお父さんですか。

変なことを吹き込んだおかげで、

皆さんおかしなことになってますよ」

向井が怒る素振りで文句を言った。

「いいじゃないですか。

みんな向井君が来るのを楽しみにしてるんですよ。

あのアマテラスも顔を見せたというではないか。

滅多に奥の間から出てこない神ですら、

向井君に興味を持ったってことですよ」

「そうなんですか? 」

毘沙門天の話に冥王も吃驚して向井を見た。

「はい。たおやかでお綺麗な方でしたので、

俺も少し緊張してしまいました」

「ほぉ~向井君ですら緊張しましたか」

冥王が言い、毘沙門天と笑った。

そんな話をしていると、

診察を終えた安達が炎帝と一緒に戻ってきた。

「どうでしたか? 」

冥王が聞く。

「大分よくなっていますよ。

薬が効いているのでしょう。

なので少しお薬の量を減らしましょう」

「えっ? 」

嬉しそうな顔で炎帝を見る安達に、

その場にいるものが笑った。

「さぁ、ご飯にしましょう。

鰻ですよ。鰻~」

ご機嫌な冥王に皆はあきれ顔になった。


食後、孔雀に言われて、

安達はキッチンに連れて行かれた。

その時の安達の様子に、

炎帝が向井を見た。

「安達君にとって、

向井君の存在は大きいみたいですね」

「そうなんでしょうか」

「安達君の状態がいいのは、

向井君という安心できる存在があるからです。

今処方している薬は、

かなり体がだるくて重いと思うのだがね」

「そう………ですね。よく休憩してますし、

お薬を飲んだ後は、

俺も気を付けて見るようにしてます。

お昼寝もさせてますし」

向井の話に冥王と毘沙門天も眉をあげた。

「それでいいです。

最近はチビちゃんたちと遊んで、

いつの間にか寝ちゃうと話して笑っておった。

向井君がそのように仕向けているのでしょう」

「チビと遊ぶのは体力もいりますから、

自然と体も休めてると思います」

「冥王はよくできたものをそばに置かれて、

贅沢もんじゃ」

炎帝が言った。

「そうでしょう。でも、いずれはここで、

暮らすことになるんですよ」

「ほぉ、それはいい」

睨む冥王を無視して、

毘沙門天と炎帝は楽しそうに話した。

向井はそんな冥王を見ながら笑った。

「では向井君の体も、

少し診ましょうかね」

炎帝はそう言って向井に向き直ると、

手を握り、

それからその手を胸と額に当てた。

目を閉じて向井の状態を診た後、

「向井君の魂はご両親が守ってきたんですね」

と言いながら冥王を見た。

驚く向井に、

「向井君が与えられた魂は短命なんですよ。

冥界では魂の歴史も見えてますからね。

それでも今生ではご両親の願いが、

魂を強くしてくれた。

運悪く予定より早く、

冥界に来てしまいましたがね」

冥王が寂しそうに微笑んだ。
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