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番外編 冥界

けんけんぱ?

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少し前にチョークで廊下に書いて遊んで、

怒られていた。

冥王は『少しくらいいいじゃないですか? 』

と笑っていたが、

「これを掃除するのは誰だかご存じで? 」

と言われ、

チビと一緒に、

すごすごと部屋に戻ってきた経緯がある。

向井も頷くと、

「ハクは片足飛び出来るようになりましたか? 」

と聞いた。

「まだ、ちょっとふらふらしてるけど、

出来てるよ」

「それは進歩ですね」

妖鬼の話に向井も驚き笑顔になった。

テーブルに行くと、

既にみんなおやつに買ってきた、

サブレの缶を開けて食べていた。

「見た目も可愛いよね。お花? 小鳥? 恐竜、

車、帽子? 」

早紀も缶から取り出し、手に取って眺めた。

「これ無くなったらくれる? 」

こんが向井を見た。

「いいですよ。皆でひと缶ずつですよ」

「わらわはガチャを入れるんじゃ」

楽しそうなチビの姿に、

「なるほど。それで四つの缶なんですね」

冥王がテーブルに並べられたサブレ缶に、

笑顔になった。

「これ缶も可愛いでしょう。

お店でも人気があるんですよ」

「俺も持ってるの。へへへ」

安達が笑う。

「なんでだよ」

牧野が聞くと向井をじっと見た。

「俺じゃないですよ」

笑う向井に、

「松田先生にもらった~」

と自慢げに話した。

その名前に冥王と牧野が振り返って、

向井を見た。

「なんで俺を見るんですか。関係ないでしょ」

「………」

じ~~~っとみる姿に向井はふき出すと、

「この前、仕事の更新で、

トリアさんと仕事場にお邪魔したんです。

その時に安達君も一緒にいたんで、

付いてきたという訳です」

「先生の所でお茶して、このサブレ食べたの」

「で、安達君がこの缶が可愛いって言ったら、

持って帰る? ってね」

トリアも笑いながら説明した。

「その時にこのお店を紹介してもらって、

だから今日寄ってきたんですよ」

「大久保出版の大先輩の漫画家さんに、

大河内薫子先生がいるんだけど、

その先生のおすすめのお店なんだって」

「なんと! このお菓子は、

あの大河内先生が好きなものなのですね。

これはいい情報を聞きましたよ」

冥王が驚きの顔でトリアを見た。

「大河内先生の連載中の長編漫画は、

私の大好きな作品の一つなんですよ」

サブレを食べながら頷く冥王を見て、

「大河内先生は冥界のお話を描かれてますからね」

向井が笑いながら言った。

「えっ? そうなの? うちの図書室にもある? 」

牧野が興味を持ったのか身を乗り出した。

「ありますよ。まだ完結してませんからね~

既刊八十六巻までですけど」

「八十六!? 」

牧野が声をあげた。

「そんなにあるのにまだ続いてんの? 」

「百巻越えても未刊の漫画は沢山ありますよ。

それを考えたら八十六なんてまだまだですよ」

冥王はそういうと珈琲を飲んだ。

「河原の小説なんて未完のままだから、

下界の奴らは読めないんだぞ。

俺達は死んでるおかけで読めるけどさ。

自分が死ぬ前に完成してくれなきゃ、

ファンは可哀想だな」

牧野は笑った。

「死んでここに来れば読めるんですから、

いいんですよ」

冥王の言葉に向井達はあきれた様子で笑った。
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