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番外編 冥界

悪霊退治

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「この景色を見るだけでうんざりする………」

牧野がため息をついた。

それも致し方ない。

特別室が消滅してからこの国は、

現トップとその大臣達に、

多くのものを搾取されている。

国民はそれを分かっていても、

恐怖政治の中では声を上げにくく、

捨て地弾圧でストレスを発散させている者もいた。

その一つがマスコミとインフルエンサーの存在だ。

TVは捨て地排除と政権称賛ニュース、

芸能人のような発信力のあるものは、

政府CM『捨て地を我々の手に』と叫んでいた。

そこにAIも情報を流すので、

中央のモラルある数少ない国民ですら、

満身創痍で自殺者も増えている。

外を歩けば街頭ビジョンが、

家に帰ればTVやネットが、

休みなく画像を流す。

デジタル依存者は、

簡単にマインドコントロールされ、

無関心で歩いていた。


「なんだか生気がない奴が増えたよね」

エナトがため息まじりに言った。

中央人を見てるとほぼ洗脳状態だ。

嬉々として現政権を支持する者、

うんざりとした顔で道を歩く者、

SNSにしか興味のない者、

分かりやすい構造が見て取れた。

「そういえばAIが海外ニュースを流しててさ。

現政権は合法的殺人って揶揄されてて、

このままいくと二千百年までに、

軍事国家になるんじゃないかって言われてた。

まあそれまで、この国が持てばの話だけどね」

田所がげんなりとした表情で話した。

「これじゃ再生したくなくなる」

「冥王が今いるサロン霊は、

捨て地に再生させているんですよ」

「えっ? そうなの? 」

向井の言葉に田所が驚き、

他の者も振り返った。

「隔離サロンはそのまま中央に再生させて、

問題のない霊は捨て地にと、

生まれ変わりを仕分けされてるんです」

「そんなことしてるから、

中央がどんどん黒くなるんじゃないの」

トリアが文句を言った。

「でもね、うちの派遣霊見てみなよ。

青田さん達が中央に再生されても、

すぐに冥界に逆戻りだよ」

オクトがトリアを見た。

「………あ~そうよね………」

「冥王が皆さんが言ったように、

中央は餌場にして霊電を増やしましょうって、

話になったんです。

それとこの前の冥界会議でも、

海外の霊魂も問題霊はこっちで処理してくれって、

言われたらしくて」

向井も苦笑した。

「移民も増えて、犯罪者も流れて入って来てるから、

むこうの冥界も面倒なんでしょう」

「この国が魔境なんで他国の冥界にも、

都合のいい霊の処理場になってるんですね」

佐久間も深く息をついた。

「そういう事です。

なので牧野君には頑張ってもらわないと」

向井は不貞腐れる牧野の肩に手を置くと、

にっこり微笑んだ。

「今日は式神課で坂下さんやヴァン君達もいないし、

この人数で魔境とその近辺を片付けるからね」

新田が霊銃を装着すると言った。

「私も今日は魔境デビューだからね」

弥生も笑うと、

「ほら、牧野君行くよ」

と手を引いて歩いて行った。

「ええ~」

悲鳴を上げる牧野と弥生の姿に、

向井達は呆気にとられると、

ケラケラと笑い出した。
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