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番外編 冥界

湧き水氷で

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そんな話をしていると、

チビと冥王が騒ぎながら食堂にやってきた。

後ろからトリアとオクトが大きな箱を持って、

入ってきた。

かなり重そうだ。

「出来てますか~」

冥王が楽しそうに歩いてくると、

キッチンのセーズとドセに声をかけた。

「出来てるよ」

セーズがあきれたように笑うと、

奥からドセがボールに入った氷を持ってきた。

「なに? 」

向井達が怪訝そうに氷を見てると、

「けずりひ作るんじゃ」

呉葉が笑顔で言った。

「保管室から出してきたわよ。重いのなんの」

トリアとオクトは箱をテーブルに置くと、

中からかき氷機を取り出した。

しっかりした業務用機械だ。

「これね。以前冥王が作らせたのよ」

トリアが言うと、

「一応手動と電動と両方使えるから。

点検もすんでるからすぐ作れるよ」

オクトがハンドルを触りながら説明した。

「随分と立派ですね」

向井がじっと眺めていると、

「そりゃそうよ。

有名な伝統工芸士の打刃物職人に、

作らせたんだもん」

トリアが言って冥王を見た。

「いつものようにわがまま言って、

三途の川の奥に工房作って、

お願いしたの」

「ちょうど職人が二人上がって来てね。

冥王がサロンで話してて、

作ってくれるってことになったんだよ」

オクトもあきれ顔で笑った。

「美味しいけずりひが食べたかったんですよ。

ふんわり氷は刃が命ですからね~

でも大河原さんと藤原さんも、

出来上がった刃物で作ったけずりひ食べて、

喜んで再生されて行ったでしょう」

冥王はふんと鼻を鳴らして上を向いた。

「ねえ、じゃあ私も食べられるって事? 

幽霊の職人も美味しかったって言ったんでしょう? 

だったら食べたい~」

「おや、河原は又、

こんなところでサボってるんですね」

河原の声に冥王が振り返った。

「サボってないよ。休憩中なの」

「湧き水の氷だから河原さんにも美味しいよ」

ドセは笑うと、

「氷溶けちゃうから作るよ」

と機械にセットした。

チビ達もワクワクした表情で、

テーブルに手をかけて上を見上げた。

その姿に向井達は笑うと椅子に座らせた。

スイッチを入れると、

シャリシャリシャリと音をたてながら、

ガラスの入れ物に落ちていく。

セーズが入れ物を回しながら、

ぎりぎりまで積み上げると、

次々作っていった。

ドセがシロップを持ってくるとテーブルに置いた。

「チビ達はお腹壊しちゃうから、

小さい入れ物だよ。

かけてあげるから、好きなシロップ選んで」

「わらわはイチゴ~」

「僕レモン」

「こんは………メロンがいい」

三人はそれぞれ決めてかけてもらっている。

ハクだけがじっくり悩んで、

「白いのは? 」

と向井を見た。

「これは練乳です。甘いですよ」

「僕はそれ~」

ハクはニコニコ笑った。

「河原さんと優香ちゃんには特別に………

天上界で作った蜜実のシロップね」

「えっ? いいの? 嬉しい~」

二人はドセがかけてくれた氷の入れ物を、

嬉しそうに受け取った。

「黒蜜…抹茶………あんこもあるんだ」

安達達も真剣に悩んでいる。
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