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番外編 西支部

牧野もデコデコ

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「そういえば、冥王と安達君の姿が見えませんね」

「あぁ、あの二人ね。工房にいる。

デコパーツ買ってきたから、

トレカチームはみんな村本さんに教わって、

夢中になってる」

アンが笑いながらお茶を飲んだ。

「山川さんと河原さんも、

自分達の本のトレカを作って、

それをカードケースに入れてデコってるのよ」

「俺も食べたら作るんだ~」

牧野はエビチリをつまみながら言った。

「牧野君は本当によく食べるよね」

新田が笑いながら袋からおこわを取り出した。

「ねぇ、それ何個目? 」

アンがあきれ顔で見た。

「今日はそんなに食べてないよ。

八個………か? 」

「八個!? 」

そこにいた者が同時に声をあげた。

「はぁ~それじゃ、セーズが作っても作っても足りないわけだ」

ディッセが笑った。

「だろう? 」

セーズも苦笑すると、

「おやつにケーキ食べるから、

この辺でご馳走様でした」

牧野は両手を合わせて言うと、お茶を飲んで立ち上がった。

「俺もデコデコしてこよう~」

「こら、食べたものくらい片付けなさい」

「やっといて~」

アンの注意も無視して、

牧野はさっさと部屋を出て行った。

「全く。大人のしつけの方が難しいわ」

アンは文句を言いながら、お皿をキッチンに運んだ。

「うちの大人で躾が必要なのは、

冥王と牧野君ですね」

向井もため息まじりに笑うと、おこわを口に入れた。


食事を終えると、

向井は研究室に向かった。

入室するといつものメンバーが仕事をしており、

「あれ? 向井さん何か用ですか? 」

夢鬼が振り向いた。

「室長にちょっと相談があったんだけど、

今いる? 」

「部屋で将棋してますよ」

「有難う」

向井はそういうと室長室をノックした。

中から究鬼の声が聞こえ、

「失礼します」

と頭を下げて入った。

顔をあげると源じいがいた。

「あっ、対戦中ですか? 

でしたらあとでも………」

「いや、もう終わったからいいですよ」

源じいが笑った。

「では私はこれで」

と源じいがソファーから立ち上がろうとした。

「あ………」

向井が声を出したので、二人が振り返った。

「なに? 」

究鬼の問いに、

「いえ、源じいの意見も伺おうかなと思って。

いいですか? 」

向井が源じいを見た。

「こんなじじいの意見でよかったら、

お話聞きますよ」

源じいは微笑むとソファーに座りなおした。

究鬼は将棋盤を片付けると聞いた。

「で、話って? 」

向井はソファーに腰かけると、

西で起こった事件と捨て地の状況を話した。

二人は黙って聞きながら、

「要するに西は元からあった結界を崩し過ぎたことで、

ここと北と負の状態が違うわけだ」

究鬼も腕組み、考え込むように天井を見た。

「人間の持つ負にはそんなに違いはないと思うんですけど、

黒地に灯が見られないのが気になって。

何か人と負に違いがあるんでしょうか」

向井の言葉を頷きながら聞いていた源じいが、

静かに口を開いた。
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