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番外編 西支部

冥王登場

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その時、

「パパ~」

「えっ? 」

その場にいたもの全員が振り返った。

「ハク!? どうやってきたの? 」

「わかんない」

向井は驚いてハクを抱き上げた。

「あぁ~そうか。ハクはここで保護されてるから、

何か感じるものがあるのかもしれないな」

岸本が言い、みんなの顔を見回した。

「そうですね。今回もお留守番と言ったのに、

どうしても来たかったみたいなので、

お泊りになったんですけど」

向井もハクを見ながら困った表情をした。

もしかしたらこれから起こる事にも

何か感じているのかもしれない。

「そうだ。ハクがいなくなって大騒ぎしてるよね」

サンクが慌てて冥界に連絡を入れた。

「ハクも分からないうちに飛ばされたようですから、

龍神の力が動いているのかな」

「上でもハクが消えて慌ててた。

突然消えたらしい。

ここにいるって説明しておいたから」

サンクが通信を切って歩いてきた。

「あのね、じいじがね」

ハクが話し始めたところで、

大きなざわめきが起こった。


「お、鬼や」

「違う………光り輝いとー…神やろか? 」

隊員たちもその異様な光景に、

身体が硬直したように動かなくなった。

腰を抜かす者もおり、

パニックこそ起きなかったものの、

その場から逃げ出す黒地住民もいた。

「神じゃ、神がお怒りなんじゃ。

祠を壊しおったから」

一人の老婆が両手で拝むように呟いた。

「神は大沢先生じゃ! 

そげなこと言うな! 」

「う、うったち、昨日、お山に龍を見たったい」

「今、山口先生が確かめに行っとる」

「こ、こげなもん。フェイクやろ。

先生も言いよった」

「捨て地の祟りや」


「へえ~面白れ~オヤジが浮いてんじゃん」

牧野が笑いながら眺めていた。

捨て地側でも浮かぶ冥王に、

「森を…祠を壊いたき。神がお怒りなんや」

一人の老人が口を開いた。

「うちの親父も言いよった。

大災害のあとに全て破壊いたのが原因やと。

大沢が神なわけない」

「黒地は呪われちゅー」

向井達は両方の住民の声を聞きながら、

冥王の動きを見ていた。

浮かぶ冥王は突然両手をあげたかと思うと、

黒地にいる隊員の前に、

バリバリバリ――――――――ッ!!

稲妻を落とした。

「えっ? どうやってるの? 凄い」

サンクも驚く。


無数の弾丸のように光の刃が降り注ぎ、

さすがの隊員たちも後ずさりした。

ここ三年余り異常続きだったこともあり、

驚くこともなくなっていた住民も、

この状況には恐怖を感じたようだ。

その場面を目の当たりにした者達は一様に、

顔をひきつらせた。

「おんしら何をやりゆー!! 

攻撃しぃや!! 」

「で、ですが」

尻込みする隊員達に、

あとから合流した山口が声を荒げた。

「ありゃ人間やない。鬼や。

神でもなんちゃあない!! 」

数人の隊員が捨て地に向けて、

銃を放った。

ダダダダダ――――――――ッ!!

冥王はマントを翻し、

弾を交わすように動くと、

弾丸は真実の壁に跳ね返り、

住民を含む数名に当たった。

「うぎゃぁぁぁ~~~~~!! 」

「いやぁぁぁぁ~~~~~~~~!!」

その場は阿鼻叫喚に包まれた。
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