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番外編 西支部

黒地の神

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向井は結界を見つめながら、

「この八角形の地域には、

今、人は住んでいないんでしょうか」

と岸本を見た。

「守り人が追い出されてるから、

住民はいないと思う」

「そうですか………

だったらこの場所に結界を張ってしまいましょうか」

「えっ? 」

その場にいたものがビックリした様子で向井を見た。

「龍神の水のカーテンで白地にしてしまえば、

綺麗な状態で神を守ることができると思うんです。

黒地の人間は近づけなくなるでしょう? 」

「なるほど、

中央の人食いビルと同じ状態にするわけだ」

トリアがハッとしたように頷きながら言った。

「そういうことです。

あとは俺達が定期的に見に行けばいいわけで、

西の都はとりあえず守られるのでは? 」

向井が皆を見回した。

「そうですね」

「だったらその場所だけ、

すぐに結界を張っちゃいましょう」

「えっ? 今から? 」

「善は急げって言うでしょ。

結界張られたあと、西の人間がどうするのかも、

ちょっと気になりますし」

驚く岸本に向井は言うと立ち上がった。

「問題の場所は中心地から少し離れているので、

大臣は気にしないでしょうけど、

それでも中央で起こった出来事は知ってるでしょう。

黒地に突如結界が出来たら、

さすがに慌てると思うんです」

「確かにね」

サンクも頷き、

「ヴァンとエハがいるから式神使えるね。

あとは牧野君に除去を………」

と室内を見回すと、

「ははは、寝ちゃったか」

大の字で寝ている姿に笑った。

「道理で静かだと思った」

シェデムが一緒に寝ているチビと安達に笑顔になった。

「ホットチョコ飲んだ後、

皆で塗り絵してたんだけどね」

早紀も笑うと、

「そういえば安達君の薬はキャラメル味なんだって? 」

と向井に聞いた。

「炎帝様がお薬をさぼらないようにと、

考えてくださったみたいで」

「えっ? お薬さぼったの? 」

岸本達西の者が驚いて寝ている安達を見た。

「死んだあと成長して、

人間に近づく幽霊に変身中なんですよ」

向井の言葉に大人達は笑った。

「なら俺が手伝おうか? 」

ティンが立ち上がった。

「そうね」

サランダも頷くと、

「結界組は頑張ってきてください。

居残り組は夕飯の支度でもしますか」

と笑った。



下界に降りると、

「毒が強いね」

ティンが顔を顰めた。

その毒の話で向井は思い出したように、

ワンショルダーバッグから小さな巾着を取り出した。

「皆さんにこれをお渡ししようと思って、

忘れてました」

そういうと一人一人に手渡した。

「残りは休憩室に置いておくので、

除去の時には特に身につけておくのをおススメします」

「これ何? 」

サンクが不思議そうに、

手のひらの巾着を見つめた。

「これは天上界で作られたポプリです。

悪霊をこれが吸い込んで除去してくれるので、

体に毒が溜まるのを防いでくれます」

「そうなの? 」

岸本は驚くと香りを嗅いだ。

「いい匂い………

いつも貰うポプリとはまた違ったフルーティーな香り」

「でしょう」

向井も微笑むと、それぞれ首に下げた。

天上界の特別なチェーンなので、

からだ全体がベールを纏うような膜がかかる。
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