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番外編 北支部

天上界へ

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向井達は手を振り返すと、

「赤ってなんでしょう。聞けなかったですね」

冥王も不思議そうな顔で首を傾げた。

「何か赤い食べ物を買って帰らないといけないかな? 」

向井達は訳が分からないまま、天上界へと向かった。



いつもながら美しい景色が広がる天上界に、

向井と安達はため息をついた。

「なんですか。二人して。

冥界だって室内は美しいですよ。

3Dを駆使して綺麗な景色になってるでしょう」

冥王が唇を尖らせた。

「分かっているんですけど、

俺が子供の頃に想像していた天国が、

まさにこんな感じなんですよ」

向井がため息まじりに笑った。

「冥界も綺麗だけど、

木もお花も育たないよ」

「きっとそれが、

生と死の違いなんでしょうね。

でも俺は冥界の方が楽です」

向井が笑うと、俺も~と安達も笑顔になった。

冥王はそんな二人に苦笑いすると、

「毘沙の悪趣味なお城に行きましょうかね」

と歩き出した。

城に向かいながら、

安達は見たことのない鳥や花を、

顔を輝かせて見ていた。

城の前では毘沙門天と宝が待っていた。

「よく来たね~」

毘沙門天は嬉しそうに言うと、

「まずは炎帝が待ってるから、

診察済ませてから食事にしよう。

安達君が好きなケーキとサンドイッチがあるんですよ~」

「ホント? 」

笑顔になる安達に向井達も笑った。

「安達君は少し大きくなりましたね」

宝が冥王と向井の近くに来ると、

笑顔で話した。

「それもあって今は、

心と気持ちが少しちぐはぐなんです」

向井が安達を見ながら説明した。

「成長しているわけですか」

宝も笑った。


安達が診察を受けている間、

向井は宝に案内され果樹園に来ていた。

「これは新種の種が出来たので植えたら、

こんな真っ赤な果実が生って。

今日はこれを使ったケーキも作ったので、

安達君も喜ぶと思いますよ」

宝はそういってスモモのような大きさの果実をもぎ取ると、

向井に手渡した。

「蜜実とは違った何とも言えない、

じわ~と口に広がる甘さで美味しいですよ。

種もないのでそのまま食べてみてください」

宝はそういって自分も齧った。

向井も口に入れると驚きに変わった。

「ねっ? 美味しいでしょう? 

今日はお土産にこの果実とケーキを、

持って帰ってください」

「有難うございます」

向井はそこまで言って、

『赤いのが食べたい』と言ったハクの言葉を思い出した。

そうか。

ハクにはこの映像が見えていたのか。

向井は食べながら笑顔になった。

「安達君がサンドイッチが好きだと聞いて、

私達もパン作りを始めたんですよ」

「えっ? 」

向井がビックリして宝を見た。

「うちの主も最近はパンが食べたいと、

そちらで頂いた焼き立てパンを持って帰るので」

「それは悪い影響を受けてますね。

すいません」

「いいんですよ。

私達もパンがあんなに美味しいとは知らなかったので、

みんな夢中になってます。

お陰でジャム作りも上手くなりましたよ。

そうだ。それも持って帰ってもらおう。

美味しく出来てるんですよ」

宝は楽しそうに話すと、

「向こうにはフラワーガーデンもあるのでどうですか? 」

と二人はその植物園の方へ向かった。
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