13 / 100
番外編
消える人食いビル
しおりを挟む
「ご苦労様でした」
向井はそういって立ち上がれない牧野の肩に触れると、
その隣で真言を唱え始めた。
牧野にはり付けられた悪霊は身動きできずに、
耳をつんざくような悲鳴を上げ、
結界にヒビを入れる。
牧野がその音に顔をあげる。
向井は気にせず真言を唱え続けると、
悪霊全体が繭ごと薄れてきた。
向井の体から現れた白い龍は虹色に変化し、
悪霊を侵食し徐々に飲み込んでいった。
牧野はその様子を息をのんで見つめていた。
す、凄ぇ………
次の瞬間、ビルごと悪霊が消滅した。
えっ?
牧野が驚いていると、シェデム達が近づいてきた。
「四天王の結界が始まったのよ」
逃げまどっていた人々の足が止まった。
揺れが治まり、
近くにいた人間も次から次へと消滅していく。
どこからともなく悲鳴が上がり、
アーケード近辺の住民は、
半数以上が一瞬にしていなくなった。
「あれだけの人間全てが、
何かしらの陰に取り込まれていたってこと? 」
エハもさすがに驚きを隠せなかった。
向井は街の様子を見つめると、
霊玉を取り出し地面に埋めた。
再び真言を唱え始めると、
四天王のはった結界の上から、
水のカーテンをかぶせていった。
オーロラが空間を覆う様子を、
残った人々は言葉もなく見つめていた。
シェデムは向井の姿に驚嘆していた。
彼にはまだはかり知れない力がある。
向井さんといることで、
牧野君も坂下君も力を発揮できる。
この先悪霊の質はもっと悪くなることを考えても、
冥王がそばに置きたがる理由に納得が出来た。
向井さんには申し訳ないが、
今まで多くの特例を見てきたが、
これほどの能力を秘めている者はいなかった。
ため息まじりに笑うと、
シェデムは向井と牧野に近づいた。
「ご苦労様でした」
今起こった出来事を呆然と見ていたエハとエナトも、
慌てて駆け寄ると向井と牧野を見た。
「す、凄かったんだけど、
ここって捨て地と同じになったの? 」
エナトが皆の顔を見回した。
「ここは黒地の真ん中です。
その中でも消えなかった人はこんな状況でも、
光の灯を心に秘めていた人たちです。
負が入れないようにはしましたが、
依然ここは黒地なので、
光のある人は黒地からここへの出入りは、
自由になっているだけです」
「どういうこと? 」
牧野が聞く。
「ビルが消えたことで大臣は大喜びでしょうけど、
黒地の真ん中にある、
この白地に入ることができる者は限られています。
これこそ冥王が言った、
国にその理由を問うてもらいたいという事でしょうね。
中央のど真ん中が使えないんですから、
邪魔でしょうね」
向井は笑いながら皆を見た。
「向井さん………楽しんでるでしょう? 」
エハの言葉に、
「まさか」
とニヤリと笑った。
「さて、おやつでも買って帰りますか。
牧野君は体の方は大丈夫ですか」
「ん~………夢中だったからよく覚えてない。
俺、頑張ったよね? 」
と向井を見た。
「えっ? 」
シェデムたちはあきれ顔で笑うと、
「牧野君の勇姿をセイ君に撮影してもらいたかったです。
あの姿を皆さんに見てもらえないとは、
惜しいことをしました」
「えっ? 俺、そんなに凄かったの? 」
向井は笑うと、
「勇者牧野そのものでしたよ」
「ええ~~~~」
声をあげる牧野を見た。
「向井さんは牧野君をからかって、
冥王のストレスを発散してるのかもね」
シェデムも苦笑するとエハとエナトと歩き出した。
向井はそういって立ち上がれない牧野の肩に触れると、
その隣で真言を唱え始めた。
牧野にはり付けられた悪霊は身動きできずに、
耳をつんざくような悲鳴を上げ、
結界にヒビを入れる。
牧野がその音に顔をあげる。
向井は気にせず真言を唱え続けると、
悪霊全体が繭ごと薄れてきた。
向井の体から現れた白い龍は虹色に変化し、
悪霊を侵食し徐々に飲み込んでいった。
牧野はその様子を息をのんで見つめていた。
す、凄ぇ………
次の瞬間、ビルごと悪霊が消滅した。
えっ?
牧野が驚いていると、シェデム達が近づいてきた。
「四天王の結界が始まったのよ」
逃げまどっていた人々の足が止まった。
揺れが治まり、
近くにいた人間も次から次へと消滅していく。
どこからともなく悲鳴が上がり、
アーケード近辺の住民は、
半数以上が一瞬にしていなくなった。
「あれだけの人間全てが、
何かしらの陰に取り込まれていたってこと? 」
エハもさすがに驚きを隠せなかった。
向井は街の様子を見つめると、
霊玉を取り出し地面に埋めた。
再び真言を唱え始めると、
四天王のはった結界の上から、
水のカーテンをかぶせていった。
オーロラが空間を覆う様子を、
残った人々は言葉もなく見つめていた。
シェデムは向井の姿に驚嘆していた。
彼にはまだはかり知れない力がある。
向井さんといることで、
牧野君も坂下君も力を発揮できる。
この先悪霊の質はもっと悪くなることを考えても、
冥王がそばに置きたがる理由に納得が出来た。
向井さんには申し訳ないが、
今まで多くの特例を見てきたが、
これほどの能力を秘めている者はいなかった。
ため息まじりに笑うと、
シェデムは向井と牧野に近づいた。
「ご苦労様でした」
今起こった出来事を呆然と見ていたエハとエナトも、
慌てて駆け寄ると向井と牧野を見た。
「す、凄かったんだけど、
ここって捨て地と同じになったの? 」
エナトが皆の顔を見回した。
「ここは黒地の真ん中です。
その中でも消えなかった人はこんな状況でも、
光の灯を心に秘めていた人たちです。
負が入れないようにはしましたが、
依然ここは黒地なので、
光のある人は黒地からここへの出入りは、
自由になっているだけです」
「どういうこと? 」
牧野が聞く。
「ビルが消えたことで大臣は大喜びでしょうけど、
黒地の真ん中にある、
この白地に入ることができる者は限られています。
これこそ冥王が言った、
国にその理由を問うてもらいたいという事でしょうね。
中央のど真ん中が使えないんですから、
邪魔でしょうね」
向井は笑いながら皆を見た。
「向井さん………楽しんでるでしょう? 」
エハの言葉に、
「まさか」
とニヤリと笑った。
「さて、おやつでも買って帰りますか。
牧野君は体の方は大丈夫ですか」
「ん~………夢中だったからよく覚えてない。
俺、頑張ったよね? 」
と向井を見た。
「えっ? 」
シェデムたちはあきれ顔で笑うと、
「牧野君の勇姿をセイ君に撮影してもらいたかったです。
あの姿を皆さんに見てもらえないとは、
惜しいことをしました」
「えっ? 俺、そんなに凄かったの? 」
向井は笑うと、
「勇者牧野そのものでしたよ」
「ええ~~~~」
声をあげる牧野を見た。
「向井さんは牧野君をからかって、
冥王のストレスを発散してるのかもね」
シェデムも苦笑するとエハとエナトと歩き出した。
1
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる