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番外編
消える人食いビル
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「ご苦労様でした」
向井はそういって立ち上がれない牧野の肩に触れると、
その隣で真言を唱え始めた。
牧野にはり付けられた悪霊は身動きできずに、
耳をつんざくような悲鳴を上げ、
結界にヒビを入れる。
牧野がその音に顔をあげる。
向井は気にせず真言を唱え続けると、
悪霊全体が繭ごと薄れてきた。
向井の体から現れた白い龍は虹色に変化し、
悪霊を侵食し徐々に飲み込んでいった。
牧野はその様子を息をのんで見つめていた。
す、凄ぇ………
次の瞬間、ビルごと悪霊が消滅した。
えっ?
牧野が驚いていると、シェデム達が近づいてきた。
「四天王の結界が始まったのよ」
逃げまどっていた人々の足が止まった。
揺れが治まり、
近くにいた人間も次から次へと消滅していく。
どこからともなく悲鳴が上がり、
アーケード近辺の住民は、
半数以上が一瞬にしていなくなった。
「あれだけの人間全てが、
何かしらの陰に取り込まれていたってこと? 」
エハもさすがに驚きを隠せなかった。
向井は街の様子を見つめると、
霊玉を取り出し地面に埋めた。
再び真言を唱え始めると、
四天王のはった結界の上から、
水のカーテンをかぶせていった。
オーロラが空間を覆う様子を、
残った人々は言葉もなく見つめていた。
シェデムは向井の姿に驚嘆していた。
彼にはまだはかり知れない力がある。
向井さんといることで、
牧野君も坂下君も力を発揮できる。
この先悪霊の質はもっと悪くなることを考えても、
冥王がそばに置きたがる理由に納得が出来た。
向井さんには申し訳ないが、
今まで多くの特例を見てきたが、
これほどの能力を秘めている者はいなかった。
ため息まじりに笑うと、
シェデムは向井と牧野に近づいた。
「ご苦労様でした」
今起こった出来事を呆然と見ていたエハとエナトも、
慌てて駆け寄ると向井と牧野を見た。
「す、凄かったんだけど、
ここって捨て地と同じになったの? 」
エナトが皆の顔を見回した。
「ここは黒地の真ん中です。
その中でも消えなかった人はこんな状況でも、
光の灯を心に秘めていた人たちです。
負が入れないようにはしましたが、
依然ここは黒地なので、
光のある人は黒地からここへの出入りは、
自由になっているだけです」
「どういうこと? 」
牧野が聞く。
「ビルが消えたことで大臣は大喜びでしょうけど、
黒地の真ん中にある、
この白地に入ることができる者は限られています。
これこそ冥王が言った、
国にその理由を問うてもらいたいという事でしょうね。
中央のど真ん中が使えないんですから、
邪魔でしょうね」
向井は笑いながら皆を見た。
「向井さん………楽しんでるでしょう? 」
エハの言葉に、
「まさか」
とニヤリと笑った。
「さて、おやつでも買って帰りますか。
牧野君は体の方は大丈夫ですか」
「ん~………夢中だったからよく覚えてない。
俺、頑張ったよね? 」
と向井を見た。
「えっ? 」
シェデムたちはあきれ顔で笑うと、
「牧野君の勇姿をセイ君に撮影してもらいたかったです。
あの姿を皆さんに見てもらえないとは、
惜しいことをしました」
「えっ? 俺、そんなに凄かったの? 」
向井は笑うと、
「勇者牧野そのものでしたよ」
「ええ~~~~」
声をあげる牧野を見た。
「向井さんは牧野君をからかって、
冥王のストレスを発散してるのかもね」
シェデムも苦笑するとエハとエナトと歩き出した。
向井はそういって立ち上がれない牧野の肩に触れると、
その隣で真言を唱え始めた。
牧野にはり付けられた悪霊は身動きできずに、
耳をつんざくような悲鳴を上げ、
結界にヒビを入れる。
牧野がその音に顔をあげる。
向井は気にせず真言を唱え続けると、
悪霊全体が繭ごと薄れてきた。
向井の体から現れた白い龍は虹色に変化し、
悪霊を侵食し徐々に飲み込んでいった。
牧野はその様子を息をのんで見つめていた。
す、凄ぇ………
次の瞬間、ビルごと悪霊が消滅した。
えっ?
牧野が驚いていると、シェデム達が近づいてきた。
「四天王の結界が始まったのよ」
逃げまどっていた人々の足が止まった。
揺れが治まり、
近くにいた人間も次から次へと消滅していく。
どこからともなく悲鳴が上がり、
アーケード近辺の住民は、
半数以上が一瞬にしていなくなった。
「あれだけの人間全てが、
何かしらの陰に取り込まれていたってこと? 」
エハもさすがに驚きを隠せなかった。
向井は街の様子を見つめると、
霊玉を取り出し地面に埋めた。
再び真言を唱え始めると、
四天王のはった結界の上から、
水のカーテンをかぶせていった。
オーロラが空間を覆う様子を、
残った人々は言葉もなく見つめていた。
シェデムは向井の姿に驚嘆していた。
彼にはまだはかり知れない力がある。
向井さんといることで、
牧野君も坂下君も力を発揮できる。
この先悪霊の質はもっと悪くなることを考えても、
冥王がそばに置きたがる理由に納得が出来た。
向井さんには申し訳ないが、
今まで多くの特例を見てきたが、
これほどの能力を秘めている者はいなかった。
ため息まじりに笑うと、
シェデムは向井と牧野に近づいた。
「ご苦労様でした」
今起こった出来事を呆然と見ていたエハとエナトも、
慌てて駆け寄ると向井と牧野を見た。
「す、凄かったんだけど、
ここって捨て地と同じになったの? 」
エナトが皆の顔を見回した。
「ここは黒地の真ん中です。
その中でも消えなかった人はこんな状況でも、
光の灯を心に秘めていた人たちです。
負が入れないようにはしましたが、
依然ここは黒地なので、
光のある人は黒地からここへの出入りは、
自由になっているだけです」
「どういうこと? 」
牧野が聞く。
「ビルが消えたことで大臣は大喜びでしょうけど、
黒地の真ん中にある、
この白地に入ることができる者は限られています。
これこそ冥王が言った、
国にその理由を問うてもらいたいという事でしょうね。
中央のど真ん中が使えないんですから、
邪魔でしょうね」
向井は笑いながら皆を見た。
「向井さん………楽しんでるでしょう? 」
エハの言葉に、
「まさか」
とニヤリと笑った。
「さて、おやつでも買って帰りますか。
牧野君は体の方は大丈夫ですか」
「ん~………夢中だったからよく覚えてない。
俺、頑張ったよね? 」
と向井を見た。
「えっ? 」
シェデムたちはあきれ顔で笑うと、
「牧野君の勇姿をセイ君に撮影してもらいたかったです。
あの姿を皆さんに見てもらえないとは、
惜しいことをしました」
「えっ? 俺、そんなに凄かったの? 」
向井は笑うと、
「勇者牧野そのものでしたよ」
「ええ~~~~」
声をあげる牧野を見た。
「向井さんは牧野君をからかって、
冥王のストレスを発散してるのかもね」
シェデムも苦笑するとエハとエナトと歩き出した。
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