『アンダーワールド・番外編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
上 下
9 / 335
番外編

変わりゆく捨て地

しおりを挟む
喫茶店に向かう途中に、

新たなお店の看板があった。

牧野が近づくと、

「黒谷知ってた? お煎餅屋さんだって」

と振り返って聞いた。

「知ってるよ。挨拶に来たから。

来週開くって言ってたよ」

「あれ? このお店………」

向井が店名に立ち止まった。

「彩り屋………ってアーケードにあったお店かな? 

ほら、牧野君の好きなお煎餅屋さん」

向井が牧野を見た。

「………あっ、あのザラメ煎餅! 」

牧野が頷くと、

「あのお店、ここに越してきたんだ」

と黒谷を見た。

「そう。鰻屋さんも越してきたでしょ。

それでね、アーケードのお店も、

何店舗か捨て地に移住を決めたんだって。

あれから幸福庁とAI推進庁の大臣が、

新たに個人営業のお店への法案を決めたんで、

もうやっていけないってこっちに逃げてきたらしいよ」

「まぁここなら、通常に営業できるからね」

トリアもため息まじりに笑った。

「おせんべいってなに? 」

三鬼が大人達を見て聞いた。

「あれ? お前ら食べたことなかったっけ? 」

牧野がチビを見ると、

「しらない~」

と首を振った。

「悪霊退治の時に、

牧野君はよく焼き立てを食べてましたからね」

向井が笑った。

「俺もお煎餅って食べたことない」

安達も向井を見た。

「そうか。おやつに買ってきたことなかったか………」

向井が考え込むように上を向いた。

「だったら来週おいでよ」

「いく~おとまりする~」

黒谷の言葉にチビ達がニコニコ笑いながら言った。

「そうね。久しぶりにお泊りするか」

トリアが言い、

「弥生ちゃんも今度は参加しない? 」

と振り返った。

「仕事がないなら泊まろうかな。

早紀ちゃん達も楽しかった~って言ってたから」

弥生の笑顔に黒谷が嬉しそうな表情になった。

「不毛ですけど、よかったですね」

向井は苦笑いすると、黒谷の肩に手を乗せた。


お昼はテーマパーク内で食べてきたので、

黒谷の店に着くと部屋で遊んで、

暫くするとチビと大チビは大の字で寝ていた。

「静かだと思ったら寝ちゃったか」

トリアがミルクティーを飲みながら笑った。

「朝からはしゃいでたから疲れたんだと思う」

弥生も寝姿を見ながら微笑んだ。

「安達君は顔つきがしっかりしてきた?

運動会の時に見てびっくりしたんだ」

黒谷が言った。

「そうでしょう。私達もビックリしてるの。

子供の成長って羨ましいよね」

トリアも寝ている安達を見ながら話した。

「でもね、早紀ちゃんと新田君は、

可愛いままでいて~って、

いつも言ってますよ」

「まぁ気持ちは分からないでもないかな。

安達君が可愛くなくなったら、

私も寂しいもん」

向井の言葉に弥生が言い、

皆で笑った。

「牧野君は今日はお仕事平気だったの? 

時々ここにきて寝てても、

エナトさんに連れて行かれてるからさ。

この前も悪霊うじゃうじゃ、毒だらけ~

もうヤダ~って言って、佐久間さんに頭叩かれてた」

黒谷が話した。

「ちょっと毒素が抜けてないから、

今日は一日にお休みもらってるのよ。

夜中にもアラート鳴って悪霊退治してるから、

眠れてないんだと思う」

トリアの言葉に、

「やっぱり黒地のせい? 」

と黒谷が聞いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...