ダンジョンライフ

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第21話

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「そろそろか.......」

時計は午前7時前を示している。
今日は5階層まで行く予定だ。

「龍一さん。おはようございます!」

約束の時間通りに涼子が起床してきた。
朝食を手早く済ませ、協会で昨日と同じ手続きをし、準備が出来たらゲートへと向かう。
涼子と地上から3階層へと転移した。

「よし、今日は5階層を目指すぞ!」
「はい!」

一応、複数のゴブリンと戦闘になりそうな時は俺が始末するが、涼子の様子を見ていると多対一でも問題なさそうだった。
前日にスキルレベルが上がったことに起因しているのだろう。
涼子にもその事を伝えてこれ以降はよっぽど危ない時以外は静観することにした。

そろそろお昼ご飯という時間になった時、4階層への階段へとたどり着いた。
涼子のレベルも5に上昇し、順調そのものだ。

「4階層に降りるけど、ここからは殆どの場合ゴブリンの群れと戦闘になる。少なくとも三体以上は常にいる事を忘れないでくれ」
「わかりました」
「よし、昼飯も食べたし行くぞ」

昼飯に作り置きのサンドイッチを平らげて、4階層を進む。
ここではさっきも言った通りゴブリンが常に複数体で襲ってくる。
まぁ涼子にとっては良い狩場だろうが。

そしてまさにその通りと言うべきか、涼子はゴブリンを次々と殲滅していった。
俺も雷魔法で殲滅しながら進んだものだがあの時よりも圧倒的に効率が良い。
涼子のレベルも6、そして7とぐんぐん上昇していく。

「ふぅ.......」
「お疲れ様。ほれ」
「ありがとうございます。んぐ」

俺は涼子にポーションを飲ませる。
これは〝魔力回復ポーション〟で、文字通り魔力が回復するものだ。
味は激マズとしか言いようがないレベルだが。

「相変わらず不味いですよね。これ」
「我慢するしかないな」

涼子は身体能力強化魔法を常に発動させているため魔力の消費が激しい。
これはスキルレベルアップのために俺が指示したものだ。
ちなみに、俺も似たようなことはやっていた。

そんなこんなで順調に進み続け、夕方には目的の5階層への入口にたどり着いた。

「やった!目標達成ですよ」
「普通は2日でここまで来るのは無理だろうけどな」
「龍一さんのおかげですね!」
「まぁそうだな」
「謙遜しない龍一さんも素敵です」モジモジ
「お、おう」

とりあえずこれで今回の目的は達成したことになる。
あとはゲートに触れて帰るだけだ。

「さて、帰るとするか」
「はい!」

俺達はゲートに触れて地上へと帰るのだった。



~~~~~



「ただいまー」
「わんわん!」
「お、しば太。良い子にしてたか?」
「わふぅ」
「あら、龍一おかえりなさい」
「お袋、ただいま」
「どうだった?」
「特に問題なかったよ。涼子もよくやってる」
「それなら良かったわ。涼子ちゃんとも上手くやってるみたいだし」
「上手くやってるって何だよ.......」

しば太を存分にモフりながら、お袋の冷やかしに答える。
そういえばしば太も1度ダンジョンに連れて行ってみたいんだよ。
ホーンラビット程度なら余裕で倒せそうだし、ゴブリンもぶっちゃけなんとかなりそう。
既に人間以外でもステータスを得られることが確認されている。
ただ、日本だと規定でペット連れは無理だからな.......。

「あ、畑は私たちがしっかり面倒見といたわ」
「お、サンキュー」

俺が家を空けている間は親父とお袋に世話を頼んでおいた。
魔野菜は害虫や病気の類にかなり強く、世話と言っても雑草を抜いたり水やりする程度だが。

「そういえば、正さんから何か連絡があった?」
「そういえば、あのSAKAIと契約を結んだって言ってたわ」
「おお~。正さんやるじゃん」

SAKAIは俺でも知ってる都内の有名なレストランだ。
そこと契約できたのはかなりデカい。
今後の展開次第では星を持ってるレストランなんかが続々とやってくるかもな。
それに俺の作った物が認められたという事実も感無量だ。

「店頭ではまだまだみたいよ」
「まぁそれはしょうがない」

普通は1個数十円、数百円のものを10倍以上の値段で売ってるからな。
確かあの苺に至っては1パック1万円とかそういうレベルだ。
この件も1度また正さんと唯さんに直接会って話さないと。



~~~~~




「ただいまー!」
「涼子、おかえり」
「おかえりなさい」

龍一が自宅に戻る数時間前、神谷 涼子も自宅へと戻って来ていた。

「ダンジョンはどうだった?」
「んー、特に何か話すことはないのかな?」
「龍一さんとは何か進展したかしら?」
「え」
「若い男女が洞窟に一緒に入ればそういうこともあるんじゃないのかな?」
「ええ?!」

涼子としては龍一と何かあっても構わないし、むしろ何かあった方が嬉しいくらいに思っている。
しかし、母親である唯はともかく、父親の正の態度は一人娘としてなんとなく腑に落ちない。

「(普通の父親って娘が嫁に出るのに反対じゃないの?!)なんもないよ!」
「あらあら」
「頑張ってね」

涼子も涼子でまだ龍一の恋人ですらないのだが、この場にツッコミ役は不在だった。
正は今の状況がまだどうにかなっている訳でもないのに龍一に恩義を感じており、涼子が嫁に行くのは反対どころか喜ぶべきことだと思っていた。
この早合点している感じはまさに似たもの親子である。

「そ、そういえばお父さん達はどうだったの?」
「僕は1件だけど契約をとってきたよ。あのSAKAIから」
「え!お父さんすごーい!」
「はは。まぁ店頭では常連の方が何点か買っていってくれただけだね」
「それでもここから口コミで広がっていくかもしれないよ?実際あれを食べたら他のなんて食べられないよ」
「そうかもしれないけど値段が値段だからね。まだまだわからないさ」
「私はなんとなくいけそうな気がするけどなー」

この涼子の予感は実は間違っていなかった。
店頭で馬鹿みたいに高い商品を買っていった人の中に、近くの小学校でPTA会長をしている女性がいた。
彼女は夕食に家族と魔野菜を食べたのだが、あまりの美味しさに衝撃を受ける。
彼女の家庭はそれなりに裕福だったので無理しない程度に魔野菜を食べ続けた結果、明らかに肌ツヤが良くなり体調がすこぶる良好になった。
この情報はママ友というネットワークで拡散されることとなる。

これが神谷青果店の快進撃のきっかけになるとは、まだ誰も知らない。



~~~~~



次回更新は明後日です。


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