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第15話
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「ーーというわけだ」
「.......」
涼子は一切言葉を出すことなく、俺の話を最後まで聞いていた。
暫く互いに無言の時間が続き、涼子がようやく口を開いた。
「龍一さん、これから末永くお願いします」
「末永くって.......とりあえずこういうことだ。涼子が俺のことを強いって言ったのも間違いではない」
「私が想像していたはるか上でしたけどね」
「ははは、ともかく今後どうして行くか決めたい」
「わかりました」
「ダンジョンは涼子が当初言っていた通り、上級に行こう。本当は最上級といきたいが、国内のは封鎖されているし、海外に行く訳にはいかないからな」
「(コクコク)」
「それで、ダンジョンに実際に行く前にやるべき事がある」
「と言いますと?」
「涼子の強化だ」
「え?」
俺はそう言って収納からある物を取り出したーー
「これは?」
「スキルオーブだ」
「スキルオーブですか.......って、えええええ?!」
「今更驚くなよ。最上級ダンジョンに30年もいたんだぞ。スキルオーブの一つや二つ持ってるに決まってるだろ」
実際は一つや二つ所ではないがそれは良い。
今から涼子に必要なスキルを与えるつもりだ。
「そ、そうですよね。もう驚きません!」
「そうか。じゃ、使ってくれ」
「え?」
「聞こえなかったか?使ってーー」
「うわぁぁぁぁん。龍一さんがいじめるぅぅぅぅ」
「えぇ.......」
このくだり多過ぎない?
今度は泣き出してしまったので適当に宥める。
「グスッ.......私なんかがよろしいのでしょうか。それに.......」
「なんだ。家のことを気にしてるのか?それなら俺が立て替えてやってもいいぞ。これを何個か売れば2億なんて直ぐに手に入る。そうすれば少なくとも今すぐ両親の店や土地がどうこうなることはない。それで涼子が納得するならだけど」
「うぅ.......でもでも.......」
「でももくそもあるか。涼子は俺のものなんじゃないのか?ならどうしようが俺の勝手だろ」
若干の面倒くささを感じたので割と無茶苦茶言ってしまった。
これはちょっと申し訳ないことを言ったと思ったのだがーー
「!!!」
「え」
「そうですよね!私は龍一さんのものですもんね!」
「あ、ああ」
「ならば仕方ありません。それに、ここまでしていただいたのなら私が頑張らないとダメですよね!」
急に元気になる涼子。
とにかく話を進めよう。
「わかったなら良い。とりあえずまずはこれ〝薙刀術〟スキルだ」
「おお~」
「涼子はダンジョンで他の武器を使う予定でもあったか?」
「薙刀でいくつもりだったので嬉しいです!」
「そうかっと.......使う前に教えておくことがあるから、それを聞いてから最終的に決めてくれ」
俺はスキルを使った時の効果を説明する。
涼子は元々薙刀の熟練者なので俺のように知識や経験が流れ込んできても大きな旨みはない。
そういう意味だと他の武器を使いつつ薙刀も、という選択肢もあるからな。
「なるほど。でも暫くは薙刀一本でやってみようと思います。それに、魔物に与えるダメージもあがるのですよね?」
「そうらしいな。いまいち実感がわかないが」
「それでは、使ってみますね」
涼子はオーブを握りしめた。
「わっ.......上手くいきました!ステータスに【薙刀術】Lv1って出てます」
「おめでとう。これで涼子もスキルホルダーだな」
「あはは.......私の力でもなんでもないですけど。ありがとうございます」
世間ではスキルを持つ者のことを〝スキルホルダー〟と呼んでいる。
探索者全体で見るとスキルを獲得しているのはそう多くなく、このように特別視されるわけだ。
ランキングボードの上位陣は大体がスキルホルダーであり、俺を除いたトップ10は魔法スキルも所持している。
「さて、次のスキルだが.......」
「次ぃ?!あっ.......ごめんなさい」
「今後もその調子で頼むよ。あと何個かスキルを取って貰うからな」
「はい!」
「気を取り直して、次は魔法だ」
「魔法!」
「ああ。俺も魔法にはだいぶ助けられた」
「この雷魔法ですか?」
「そうだ。これのおかげで攻略がかなり楽になったと言っていい」
「そうなんですね。それで、私はどうすれば?」
魔法と聞いて涼子の目がキラキラしている。
気持ちはわかるぞ。
俺は涼子の前に1個ずつオーブを取り出し置いていく。
「俺が持っている魔法関係のスキルオーブはこれぐらいだ」
「わ~迷っちゃいますね」
「スキル枠が10個しかないからな。どうせなら全部使ってみたいけどさ」
「おすすめとかありますか?」
「俺だって使える魔法は雷魔法と身体能力強化魔法だけだしな。オススメは身体能力強化魔法だ。文字通りの魔法だけどシンプルに強い。他は魔物が使ってるのを見たぐらいで俺達が使うとどうなるかまでは正直わからん」
「うーん」
人間の魔法スキルと魔物が使う魔法が同じとは限らないし、同じ人間でも違いがあるかもしれない。
「ちなみに雷魔法が良い所は苦手属性がないところだ」
「?」
「ゲームなんかだとありがちだけど、属性によって得意不得意がある。例えば火は水に弱いとかな。その点、雷魔法は苦手属性がない。得意属性もないのがデメリットだが、同属性相手以外には安定したダメージを出せるからかなり使い勝手が良い」
「ふむふむ」
「個人的に気になっているのがこの辺のスキルだ」
「それは?」
「〝空間魔法〟と〝時魔法〟だな。どっちもSランクのスキルだ」
「Sランク!」
「ファンタジーだとお馴染みのスキルかな?これも使ってみんことには効果が不明だ」
「名称から想像すると時魔法なら時間を止めたり.......とか?」
「かもしれない。そうだとして今の涼子には厳しいかもしれん」
「??」
「魔力量が足りない可能性がある。魔法を使うには例外なく魔力が必要だ。必要な魔力が足りなければ魔法は発動しない。時を止めるなんて魔法がどれぐらい魔力を使うか想像できん。俺の使う雷魔法の中で弱いものでもそこそこは魔力を持っていかれる。まぁ、威力が消費以上に見合っていたけど」
「つまり、今の私だと.......」
「一瞬で魔力が空っぽになりかねない。それがどれほど恐ろしいか知っているだろ?」
魔力が空っぽになると全身に物凄い倦怠感や頭痛が襲って来るのだ。
下手をすればその場で気を失う可能性もある。
それがダンジョンだとどれほど命取りとなるのかは言うまでもない。
「とりあえず身体能力強化魔法は取りたいとおもいます」
「.......これだな。ほれ」
涼子はスキルオーブを使用する。
これで取れるスキルは残り8個。
この後も暫く2人で悩みながらスキルを選ぶのだった。
「.......」
涼子は一切言葉を出すことなく、俺の話を最後まで聞いていた。
暫く互いに無言の時間が続き、涼子がようやく口を開いた。
「龍一さん、これから末永くお願いします」
「末永くって.......とりあえずこういうことだ。涼子が俺のことを強いって言ったのも間違いではない」
「私が想像していたはるか上でしたけどね」
「ははは、ともかく今後どうして行くか決めたい」
「わかりました」
「ダンジョンは涼子が当初言っていた通り、上級に行こう。本当は最上級といきたいが、国内のは封鎖されているし、海外に行く訳にはいかないからな」
「(コクコク)」
「それで、ダンジョンに実際に行く前にやるべき事がある」
「と言いますと?」
「涼子の強化だ」
「え?」
俺はそう言って収納からある物を取り出したーー
「これは?」
「スキルオーブだ」
「スキルオーブですか.......って、えええええ?!」
「今更驚くなよ。最上級ダンジョンに30年もいたんだぞ。スキルオーブの一つや二つ持ってるに決まってるだろ」
実際は一つや二つ所ではないがそれは良い。
今から涼子に必要なスキルを与えるつもりだ。
「そ、そうですよね。もう驚きません!」
「そうか。じゃ、使ってくれ」
「え?」
「聞こえなかったか?使ってーー」
「うわぁぁぁぁん。龍一さんがいじめるぅぅぅぅ」
「えぇ.......」
このくだり多過ぎない?
今度は泣き出してしまったので適当に宥める。
「グスッ.......私なんかがよろしいのでしょうか。それに.......」
「なんだ。家のことを気にしてるのか?それなら俺が立て替えてやってもいいぞ。これを何個か売れば2億なんて直ぐに手に入る。そうすれば少なくとも今すぐ両親の店や土地がどうこうなることはない。それで涼子が納得するならだけど」
「うぅ.......でもでも.......」
「でももくそもあるか。涼子は俺のものなんじゃないのか?ならどうしようが俺の勝手だろ」
若干の面倒くささを感じたので割と無茶苦茶言ってしまった。
これはちょっと申し訳ないことを言ったと思ったのだがーー
「!!!」
「え」
「そうですよね!私は龍一さんのものですもんね!」
「あ、ああ」
「ならば仕方ありません。それに、ここまでしていただいたのなら私が頑張らないとダメですよね!」
急に元気になる涼子。
とにかく話を進めよう。
「わかったなら良い。とりあえずまずはこれ〝薙刀術〟スキルだ」
「おお~」
「涼子はダンジョンで他の武器を使う予定でもあったか?」
「薙刀でいくつもりだったので嬉しいです!」
「そうかっと.......使う前に教えておくことがあるから、それを聞いてから最終的に決めてくれ」
俺はスキルを使った時の効果を説明する。
涼子は元々薙刀の熟練者なので俺のように知識や経験が流れ込んできても大きな旨みはない。
そういう意味だと他の武器を使いつつ薙刀も、という選択肢もあるからな。
「なるほど。でも暫くは薙刀一本でやってみようと思います。それに、魔物に与えるダメージもあがるのですよね?」
「そうらしいな。いまいち実感がわかないが」
「それでは、使ってみますね」
涼子はオーブを握りしめた。
「わっ.......上手くいきました!ステータスに【薙刀術】Lv1って出てます」
「おめでとう。これで涼子もスキルホルダーだな」
「あはは.......私の力でもなんでもないですけど。ありがとうございます」
世間ではスキルを持つ者のことを〝スキルホルダー〟と呼んでいる。
探索者全体で見るとスキルを獲得しているのはそう多くなく、このように特別視されるわけだ。
ランキングボードの上位陣は大体がスキルホルダーであり、俺を除いたトップ10は魔法スキルも所持している。
「さて、次のスキルだが.......」
「次ぃ?!あっ.......ごめんなさい」
「今後もその調子で頼むよ。あと何個かスキルを取って貰うからな」
「はい!」
「気を取り直して、次は魔法だ」
「魔法!」
「ああ。俺も魔法にはだいぶ助けられた」
「この雷魔法ですか?」
「そうだ。これのおかげで攻略がかなり楽になったと言っていい」
「そうなんですね。それで、私はどうすれば?」
魔法と聞いて涼子の目がキラキラしている。
気持ちはわかるぞ。
俺は涼子の前に1個ずつオーブを取り出し置いていく。
「俺が持っている魔法関係のスキルオーブはこれぐらいだ」
「わ~迷っちゃいますね」
「スキル枠が10個しかないからな。どうせなら全部使ってみたいけどさ」
「おすすめとかありますか?」
「俺だって使える魔法は雷魔法と身体能力強化魔法だけだしな。オススメは身体能力強化魔法だ。文字通りの魔法だけどシンプルに強い。他は魔物が使ってるのを見たぐらいで俺達が使うとどうなるかまでは正直わからん」
「うーん」
人間の魔法スキルと魔物が使う魔法が同じとは限らないし、同じ人間でも違いがあるかもしれない。
「ちなみに雷魔法が良い所は苦手属性がないところだ」
「?」
「ゲームなんかだとありがちだけど、属性によって得意不得意がある。例えば火は水に弱いとかな。その点、雷魔法は苦手属性がない。得意属性もないのがデメリットだが、同属性相手以外には安定したダメージを出せるからかなり使い勝手が良い」
「ふむふむ」
「個人的に気になっているのがこの辺のスキルだ」
「それは?」
「〝空間魔法〟と〝時魔法〟だな。どっちもSランクのスキルだ」
「Sランク!」
「ファンタジーだとお馴染みのスキルかな?これも使ってみんことには効果が不明だ」
「名称から想像すると時魔法なら時間を止めたり.......とか?」
「かもしれない。そうだとして今の涼子には厳しいかもしれん」
「??」
「魔力量が足りない可能性がある。魔法を使うには例外なく魔力が必要だ。必要な魔力が足りなければ魔法は発動しない。時を止めるなんて魔法がどれぐらい魔力を使うか想像できん。俺の使う雷魔法の中で弱いものでもそこそこは魔力を持っていかれる。まぁ、威力が消費以上に見合っていたけど」
「つまり、今の私だと.......」
「一瞬で魔力が空っぽになりかねない。それがどれほど恐ろしいか知っているだろ?」
魔力が空っぽになると全身に物凄い倦怠感や頭痛が襲って来るのだ。
下手をすればその場で気を失う可能性もある。
それがダンジョンだとどれほど命取りとなるのかは言うまでもない。
「とりあえず身体能力強化魔法は取りたいとおもいます」
「.......これだな。ほれ」
涼子はスキルオーブを使用する。
これで取れるスキルは残り8個。
この後も暫く2人で悩みながらスキルを選ぶのだった。
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