ヴェスパラスト大陸記

揚惇命

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一章 動乱期

アダマント王国の陥落

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 レインクラウズクリア王国・リーフフラワー王国・デザート王国・エンペラード王国、4つの国の陥落に、慌てふためいているアダマント王国の王カルメルは、女将軍である妻のルビー。宰相のダイヤ。近衛騎士団を率いるトパーズを呼び寄せ、反乱を扇動しているウルツァイトとその妻でオズモンドの娘スピネルを討ち取るべく迎え撃つ姿勢を整えていた。
「よもや。こんなにもあっさり4つの王国が滅びるなど。これも5年前、オズモンドの娘をこの国に迎えてしまったことが原因か。このように娘を道具として使い。一気呵成に攻め寄せるとはな。外と内で攻められては如何に堅牢な城といえど陥落するものよな」
「アンタ、そんな悲観するんじゃないよ。まだ、滅んだわけじゃない。最後まで戦おうじゃないか」
「あぁ、そうだな」
「カルメル王よ。先ずは、ウルツァイトを討ち。スピネルを捕らえましょう。娘が捕らわれたとなれば、オズモンドの進軍も鈍るやも知れませぬ」
「じゃあ、俺はちょっくらウルツァイトの野郎に説教かましてくらぁ」
「頼んだぞ」
 ウルツァイトは、アダマイト王国の壁と称された。防御にかけて右に出るものはいない将軍であった。防御を知っているからこそどこを攻めれば、良いかも熟知している。オズモンド王の娘であるスピネルは、アダマイト王国を取るにあたり、王族ではなく。防衛隊長であったウルツァイトに目を付け、籠絡したのである。女経験に疎かったウルツァイトは、すぐにスピネルにメロメロとなり、この反乱を指揮している。防衛隊長にこれだけ多くの者が従っているのは、人望であった。
「カルメルは、我が妻がこの国を滅ぼす賊だから差し出せと言ってきた。そんなこと飲めるわけがない。こんな俺の身勝手におまえたち守備兵を巻き込み申し訳ないと思っている」
「みずくせぇですぜ隊長。俺たちは、アンタに付くって決めたんだ。気にする必要はねぇよ」
「ウルツァイト、私のせいでごめんね」
「何を言う。妻のために身を張るのが男の仕事だ。そう泣くでない」
「うん。必ず勝ってねウル」
「あぁ、任せておけスピネル」
 そこに近衛隊長であるトパーズが打って出てきた。
「おい、賊の諫言に騙されて国を裏切るとは、堕ちたなウルツァイト」
「煩い、証拠もなく妻を賊と決めつけ、差し出せと言うなど認められるわけなかろう。口で語ることなどない。かかってこい」
 ウルツァイトとトパーズが激しくぶつかり合う。
「この恩知らずが」
「妻を守るためなら鬼にもなろう」
 トパーズの大振りを交わして、その脇をスパッと斬った。
「ガハッ。見事」
「お前と、こうして戦いたくなど無かった」
「ウル、大丈夫?」
「あぁ、こんなにも優しいお前を賊などと許せぬ」
「えぇ(ごめんねウル。貴方のことは愛してるけどお父様を裏切ることはできないの。こんな形じゃ無ければ良かったのに)」
 城内ではトパーズの討ち死にが伝えられる。
「まさかトパーズが討たれたというのか」
「こうなったらアタイが」
「やめよ。お前まで失えばこの国は終わりだ」
「致し方ありません。ここは、このダイヤが迎え撃ちましょう」
「すまぬ」
「いえ、その間にルビー様は、カルメル様を城外へ連れお逃げください」
「何を言ってるのよ」
「こうなっては、致し方ありません。他の国のように王を失い王妃を奴隷のように扱われるなど耐えられません」
「大丈夫よ。そうなったら舌を噛んで死ぬわ。幸い私達には子供が居ないからね。カルメルを失えば、私もその場で死ぬわ」
「そのようにならずお2人が無事にどこかで生きられることを願います」
「ダイヤよ。すまぬ」
 間も無く場内へと雪崩れ込む反乱軍。
「ダイヤ、カルメルはどこだ?」
「反乱軍に教えると思いますか?」
「ならば、お前を拷問にかけてでも口を割らせるまで」
「やってみなさい」
 ダイヤは、内政官だ。ウルツァイトに敵うはずもない。すぐに捕まり、何度も殴られるが決して王の居場所を言わない。
「この良い加減に吐け」
「決して言わぬ。ゴフッ」
「そうか、なら死ぬがいい」
「カルメル様、どうかご無事で。ギィヤァ」
「ウル、私のことを信じでくれてありがとう」
「当然だろ。妻を信じるのは当たり前だ。何だかすごく眠たく、グーグーグー」
「ごめんねウル。私、貴方のこと殺せないから。でもお父様のことも裏切れないの。だから、ここで死ぬね。私が死ぬところ貴方に見せたくないから。少し寝ててもらうね。大好きだよウル」
 そう呟くとスピネルは、崖下に身を投げ出した。ザパァーンと音が鳴る。その音を聞き駆けつけたウルツァイトの兵により、ウルツァイトは、外へと運び出されるがそこをオズマリア王国の兵により捕縛され、奴隷として連れていかれる。一方その頃、外へとでたカルメルの前にあの男が立ち塞がっていた。
「久しぶりじゃのうカルメル王」
「貴様はオズモンド王。やはり此度の6カ国同時反乱は、お前が裏で糸を引いてあったのじゃな」
「流石、知将と名高きカルメル王。だが、今更気付いても遅いがな」
「煩い、アタイが相手になってやる。カルメルには、一歩も手出しさせない」
「勝気な女も良いものだなぁカルメルよ」
「クズめ」
 ルビーによる連続攻撃をまるでタップダンスでも踊るかのように軽やかに交わすオズモンド。
「どうしたどうした。その程度か?」
 首筋に顔を近付けてペロリと舐めるオズモンド。
「ヒャア。貴様、何しやがる」
「ちょっと薄味じゃ」
「この舐めやがって」
 今度の連続攻撃に合わせて、オズモンドは、ルビーの服の結び目を斬っていく。すると下着姿となった。
「ヒャア。この正々堂々戦え」
「ワシは、お前をワシのものにすると決めておる。戦って傷が付くなどもってのほかじゃ」
「私はカルメルだけだ。貴様のような下衆の妾になぞならん」
「そうか、では」
 オズモンドは、ルビーを横切るとカルメルを捕らえ、首元に刀を押し当てる。
「では、こうしよう。お前がワシのものになるなら。カルメルのことは生かしてやる。どうだ良い取引だろう?」
「ワシのことは良い。ルビーよ。オズモンドを討つのだ」
「アタイには、カルメルを失うことなんてできない。わかった。お前に従うから。だからカルメルのことは、見逃してください。お願いします」
「従順な女は嫌いではないぞ。ではルビーよ。こっちにきて、カルメルのアレを蹴り上げろ。そして、ワシのモノに忠誠を誓え」
「そんな、いえやります。カルメル、ごめんね」
「ふぐぅ」
 カルメルの粗末なモノがルビーにより蹴り上げられた。そして、オズモンドに跪き、忠誠を誓った。
「チュパ。私は、オズモンド様に忠誠を誓います。だから、どうか、我が国民を導いてください(カルメルの5倍ぐらい大きい。こんなの全部入らない。それに凄く男臭い)」
「まだ居たのかカルメル。ワシは、お前から妻を奪った。もう満足だ。とっとと立ち去れ」
「ヒィーーーーーーーーーーー」
 駆け足で逃げるが逃げた先には、オズマリア王国の兵が勿論いる。そして秘密裏に処理する。
「(王族は誰も生かすつもりはない。コイツが心から堕ちた時、死んでることを伝え絶望する姿を見るのが楽しみじゃ)では、最後の国ツリー王国へと向かうとするか」
 オズモンド王による人間国家の統一まで、ツリー王国を残すのみとなった。
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