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2章 ゴブリン共の脅威から防衛せよ!

ミミッキュの話

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 ミミッキュは、トモカズが頷くのを見て、話を続ける。

「ダーリン。ここまでの話は、わかっただっちゃ?」

「あっあぁ。だがそれがどうして、お前が別の世界線で起こったことを覚えてる理由になる?」

「ダーリン。今までの話でわからなかっただっちゃ?即ち、起こった事象は変わらないだっちゃ。そこの野蛮なリザードマンが王家の墓地に来て、アイテムを取っただっちゃ。そして、王家の墓地に光り輝く不思議な玉ももうないだっちゃ」

 えっ?

 変幻自在の玉が消えただって!?

「そんな馬鹿な!?じゃあ、いったい変幻自在の玉は、何処に?」

「あの不思議な玉は、そんな名前だっちゃ?知ってるとしたら盗んだそこのリザードマンだっちゃ!」

 突然話を振られたナイアは困り果てていた。

「いや、でもあの時は私も。その。あの。巻き戻りだと認識してましたので」

 確かに女神様も言ってた。

 俺と親父に与えたのはあくまで勇者としての死んでも生き返る力と僅かなスキル付与だと。

「ナイア、思い出せないなら無理する必要はないよ」

「御主人様、申し訳ありません。頑張って思い出します」

 しゅんと申し訳なさそうに首を垂れるとナイアは、必死に記憶を呼び戻そうとしていた。

「成程な。巻き戻ったと感じるようになってるのは、期間が決められたウェーブ戦闘だからか」

 ウェーブ戦闘とは、次々と迫り来る敵を倒せというミッション形式の戦闘で、タワーディフェンスに多く見られる。

「あの、どういうことなのか。いまいちわかりませんわ」

 リーシアがこう思うのも無理はない。

 要は、期間内に準備を整えて、迫り来る敵を倒すまでがウェーブ戦闘として、ワンセットになってるのだ。

 その場合勇者の力で戻るのは、戦いの準備期間から。

 あまりの期間の長さに、俺ですら生き返る力のことを死に戻りだと認識していた。

 だとすると1つまた矛盾が産まれる。

 何回か繰り返した時に、ナイアやペコラが記憶を保持していたことだ。

「ミミッキュに答えられないかもしれないが1つ聞いても構わないか?」

「ダーリン。勿論だっちゃ。何でも聞くだっちゃね」

「俺は、恐らく勇者の力を女神様から渡されている。そのことを前提で話すが。ここにいるナイアとペコラは、仲間にした後、巻き戻る。いやこの場合は俺が死んで、戻ったと言えば良いのか。よくわからないがその度に記憶を持っていなかったがいつからか記憶を持つようになった。その事について、何かわかることがあるか?」

「そうだっちゃね。一つ言えることは、行われたことは忘れてないはずだっちゃ」

 その言葉には思い至ることがある。

 ナイアをもう一回堕とした時に、こう言ってたのだ。

『思い出しましたぁ。私は御主人様の女でしたぁ』的なことを。

 頷く俺を見て、ミミッキュは、本題に戻す。

「だからうちらは文字通り今も命懸けで宝箱のフリをして、開けないで~って祈ってるだっちゃ」

「いや、急に話を戻したな!まぁ良いけど。っていうか!宝箱を見たら誰だって開けるだろ!」

「どういう事だっちゃ?」

「いや、中身が気になるから冒険者は開けるって話な」

 ここまで俺たちの話を興味深く聞いていたエイン砦の砦長であるポールさんが口を開く。

「冒険者だけでなく俺も開けるな。特にダンジョンでは、良い武器が手に入ったりするのでな。こう見えて、兵士は安月給なのだ。色々な魔物との経験を積めて、装備も手に入るダンジョンは色々と有用なのでな」

 そうか兵士も大変だな。

 でも、そうだよな国を守るためには色んな魔物の対処法を知るべきだもんな。

 そのためにダンジョンが適してるのは、わかる。

「でもうちは、魔王様にここで宝箱のフリをしていれば大丈夫だからと言われたっちゃ」

「騙されてんだよ!襲われたくないなら宝箱じゃなくて、樽とか壺は、ダメだな。本棚とか。いやダメだな」

 そもそも擬態して安全なものってあったか?

 プレイヤーによっては、ただの骨ですら調べる。

 一度は見たことあるだろう『ただの屍のようだ』の文字を。

「じゃあ、うちらに安全な場所はないだっちゃ?」

「そこに居たらいつかは殺されるだろうな。一つ皆んなが助かる方法があるって言ったらどうする?」

「知りたいだっちゃ!ダーリン、教えて欲しいだっちゃ」

「俺の住んでいる村に来い。村人のために働いてもらうが安全は補償してやる」

「行くだっちゃ!もう仲間が殺されるのを見るのは嫌だっちゃ」

 というか配置されていたミミックたちにこんな悲しいエピソードがあったなんてな。

 でも確かにな。

 ボス戦で全滅して再会した時でも、倒したミミックが復活してることは無かった。

 文字通り一回限りの命を燃やしていたんだな。

 だがミミックに殺されたプレイヤーが多いことも俺は知っている。

 だって、ミミックの別名は、キラーボックス!

 即死魔法であるデスと高い会心率から繰り出される痛恨の一撃で、仲間を倒されながらようやく倒したプレイヤーも多いだろう。

 彼らが村の防衛に付いてくれたら並の魔物は、その防御力から繰り出される痛恨の餌食となるだろう。

 タワーディフェンスなら遠くからデスを打たせ続けるのもありだ。

 ボス以外で即死魔法に耐性があるのなんて、幽霊系や死神系ぐらいだからな。

 それになんたってマネコの魔法で、相手に化けて撹乱なんて事も出来るしな。

「あっミミッキュ。早速協力を頼めるか?」

「ダーリンの頼みなら何だって聞くだっちゃ。仲間への連絡も終わったから皆、ダーリンの元に来てくれるだっちゃ」

「おっおぅ」

 この世界で、戦えるミミックの総数は、確か魔王城に2箱、王家の墓地に3箱、ピラミッドに5箱の合計10箱だ。

 まさか全員が来るなんて事はないだろうが防衛において、即死魔法が使えるミミックの参戦は、願ったり叶ったりだ。

「じゃあ、俺の姿をゴブリンに変えられるか?」

「あの醜い小鬼だっちゃ?変な事頼むだっちゃね。お安い御用だっちゃ。マネコだっちゃ!」

 トモカズの姿がゴブリンに変わったのを見て、驚く面々だがその状態で指示を飛ばし、エイン砦に向かうのだった。

「完璧だな。でかしたぞミミッキュ」

「エヘヘ、ダーリンにもっと頭撫でて欲しいだっちゃ」

「ナイア、この場にて、ポール殿と指揮を取れ、ペコラとミミッキュは援護。リーシア、非戦闘員を連れ、王都エインヘリヤルに向かい、城下町で待機だ。メイメイとキラリは俺の援護」

「御主人様の命とあれば、ゴブリンの1匹も通しはしません」

「僕ちゃん、任せといて」

「ダーリンのために頑張るだっちゃ」

「トモカズ様、どうかご無事で、彼女たちは、必ず安全に王都までお連れいたしますわ」

「クゥーン」

「コーン」

 未だに、あの説明では何故、ミミッキュに支配の淫紋が刻まれたかわからないが、恐らくナイアがお漏らししたのを接種したって事なんだろうが、いやそう何日も中に残るものか。

 まぁ、気にしていても仕方ない。

 ご都合主義に感謝して、ステラを助けるとしますか!
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